第2回 システムには、その企業の物語があります

そのお持ち帰り弁当を製造販売するお客様は、直営、フランチャイズと、数年間で、あっという間に拡大され、システムも1年半単位で刷新するような勢いがありました。しかし、僕自身がその社長とお会いした時は、事業展開がスタートして間もない時でした。

「もう、5店舗を超えて店が増えたし、売上管理もしっかりしないと大変だから、コンピュータを導入して管理していかないとあかんかなあ・・・」と、ごはんをポリエチレン容器に詰めながら声をかけていただいた時が、始まりでした。

厨房に立っていた社長の自慢は、ごはんの量を誤差なく詰められることで、目の前で、「ほら!150グラム、160グラム、170グラム」と手際よく容器に入れていきます。実際、5グラムの誤差もない。「いやあ、丁寧にやったら、1グラムも誤差ないよ」と日焼けした顔で、嬉(うれ)しそうにおっしゃいます。

そんなお客様も、店舗数の拡大と共に、購買管理、副資材の在庫管理、店舗POS導入、スーパーバイザー用マネッジメントシステム等、システム範囲も広範囲に広がっていきます。そして、ついに原価管理システムの導入で、より詳細なデータ管理から、週間波動、売上予測・・・上場準備まで!と行きつくところまでシステム化の話になりました。

そして、その提案をまとめさせていただいている時に、社長から、久しぶりに電話がかかってきました。「○○店にいるから来てよ!」と。事務所から近いそのお店は、お客様の本社の近くでもありました。

お伺いすると、社長が、なんと厨房にいます。時間は、14:00過ぎで、ピークは過ぎていました。

「どう!提案は?まとまってるかあ?」と社長。「いやあ、要求がきついので、社長!」とお答えしていると、学生3人が、お店に・・・「のり弁当!3つ」と言います。すぐ厨房にオーダーが入ってごはんの上に昆布、その上に海苔(のり)を乗せて、揚げ竹輪が上にドンと乗って、たまごとキンピラが端っこに乗せられます。

「社長、手際イイですね」と僕。「おうよ!」と社長。そしたら、今度は、老夫婦が一緒にカウンターに来られて「幕の内2つ」と、小さな声でオーダー。社長は、「いつもありがとうございます!」と笑顔での対応。顔なじみなのか?老夫婦も、うなずいて笑顔を返す。「うちの店ができた時からのお客さんや・・・」と、言いながら、見ると2つの弁当の盛りつけが微妙に違う。一つにはかまぼこがあって、一つにはかまぼこがないけど、小さいけどエビがのっていました。

僕が、何か言おうとすると「おばあちゃんは、エビが好きやねん。けど、かまぼこが嫌いやしな」とポツリ。合点がいく説明に納得。「毎度おおきに!また、お待ちしてます~」と大声で社長。2人は、何度もお辞儀しながらお店をあとにしました。

「なあ、大塚さんの今回の提案魅力的や!原価2パーセント下げるって、この弁当業界の1%の意味をよう分かってくれてる。2%原価下がったら、ホンマ経営も楽になる。さすがやなあ!」と社長。嬉(うれ)しそうに反応する僕。「でもなあ、もう、今日みたいなことできへんなあ?学生にはごはんを余分に入れて、おばあちゃんとおじいちゃんのメニュー変えたりとか・・・俺(おれ)、それでよかったんかなあ!何か考えさせられるんやわ~!」と、両手をテーブルに押しつけ、下を向いて僕に聞かせるでも無く、自問自答するように話されました。

ITの果たす役割は、いくつもありますが、お客様の求めるものを一緒に実現していく、そのプロセスにはいくつものドラマがあります。今、市場はITに何を求め、何を必要としているのか?次から、具体的に書かせていただきます。楽しみにしてください!

次回は4月9日に更新予定です。

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