ITとビジネスの専門家によるコラム。経営、業種・業界、さまざまな切り口で、現場に生きる情報をお届けします。
第24回 お客様と話すときは、お客様の言葉を使おう(2)
話をI社に戻します。お客様は、【原価管理】を求めていました。
収益管理をすることで、「どこをどう削減すれば、原価率を下げることができるのか?」=「情報の見える化」を求めていました。
当社では、【原価管理】というテーマをお客様が考えていらっしゃる時に、三つの側面からパッケージシステムを提案しています。
「製造業向け生産管理パッケージシステム」、「会計管理パッケージ+原価管理オプション」、「販売管理パッケージ+原価管理オプション」。
見積もり、受注から、発注、仕入、売上、引当在庫、中間在庫、工程在庫等々、全体業務をシステム化するなら、「生産管理パッケージ」。仕訳データから原価を積み上げて管理するなら「会計管理パッケージ+原価管理オプション」、もう少し、ざくっと原価をとらえるなら「販売管理パッケージ+原価管理オプション」。
実運用を考えても、この三つの武器は、「お客様の経営状況とシンクロ」していました。
経営者は、細かくしっかりと管理したいので「生産管理パッケージ」を、経理と生産現場は、製造原価そのものを把握したいので「会計管理パッケージ+原価管理オプション」を、営業系は、いくら原価を把握しても入口の80%は、親会社からの受注だけで、「納期厳守」、「価格厳守」で子会社の意見なんて通らないから原価を管理するのはできるだけ曖昧(あいまい)にしたい・・・そんな多様な意見の対立が、初期分析からも見て取れました。
うむー、他社は方向を決めた提案をする模様。当社はどうするか?
そこで、こう考えることにしました。
「他社は、決め打ちした提案のようだけれど、当社は三つの現物パッケージシステムを提案できる。すべてお客様に見てもらえる。デモンストレーションをしながら、さらにその場でお客様に議論していただき、方向性を決めていくのはどうだろうか?」
確かに、三つのデモは当社の優位性をPRできます。
しかし、一方で「何でもできる提案」は、「見定まらない提案」として弱く映る可能性もあります。
でも、そこに他社事例に基づいたより実践的なデモをしながら、その場でシステムをまとめていくとさらに強い訴求力になるのでは?と。
どうせ3位で逆転チャンスを狙うなら、大きなリスクを背負ってでもチャレンジする価値ありと判断しました。
私は翌日から、その最終選考のデモンストレーションまで毎日お客様の現場に通いました。
分析をすればするほど、システムの違った面が浮かび上がってきました。一人二役、三役で仕事をしている現場担当の方々。
「これは、操作性を高めないと非効率になるぞ」と考えました。指図書の統一性の無さと、管理不在。「書類作成の統一ルールの作成」がマストです。
出張が多く、承認申請が遅れること等々、基幹システムの導入以前に【問題点】が数多く浮かび上がってきました。
それら一つ一つを丹念に拾いだし、重要な課題、そうでないことに分類し、当社内のSEチームとも議論を重ねました。
また、業務部門にお伺いすると、コピー用紙や事務文房具が過剰在庫となっており、その理由も単に昔からの取引慣行を継続しているだけで意味のあるものには感じられませんでした。
勤怠管理も、上場関連企業が、これはまずいのでは?といった点など、お客様の様々な問題点を洗い出し、分析し、その場でも提案を繰り返しました。
~ つづく ~
次回は11月1日(木)更新予定です。
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