第10回 ソリューション営業として成長を実感できたのかな?

お伺いすると、応接室に通されました。「今日は、社長が、お会いしたいと申しておりますので・・・」と、いつもの担当者から、さらっと、話を振られます。「エッ?社長ですか?」と戸惑う僕に対して、「今回の、大塚ナビィさんの提案を、是非、聞きたいと申しておりまして・・・」と、そしてニコッと笑いながら「チャンスですよ!」と。

確かに、社長にお会いすることは、営業としては最大のチャンスですが、一歩間違うと、大失敗にもつながる訳で・・・少しは、「営業として成長したのでは?」、などと、心ひそかに思っていましたが、言葉で出てくるのは「いや、そのう、直接社長様とですか?」と、しどろもどろで、手と額に、汗がどっと噴き出してきて、情けない状況を見透かされているようで・・・「ありがとうございます」と、頭を下げるのがやっとでした。

世の中で一番嫌いな注射の順番を待つように、緊張感で一杯のまま、イスに座ると、その瞬間、応接室のドアが開いて、「どうもお世話になります。社長の○○です。お忙しい中、お会いいただいて申し訳ございません」と、社長が入ってこられました。

そして、前に座られるや、付箋のついた当社の提案書に目を落としながら「あのー、いくつか質問がございまして・・・」と。そして、気がついたのか?「いやだ、私ったら・・・名刺交換も忘れてる!すいません!」と、一方、僕の方も、口の中が乾くほど緊張していて、立ち上がるや「いや、すいません、大塚ナビィ、アッ、大塚商会の大塚ナビィです」と、名刺入れどこだっけ?ってスーツのポケットを探っていると、「テーブルの上にありますよ」と担当者からの指摘。あわてて、すぐに手に取って、名刺交換です。

でも社長の笑顔に救われて、着席した時は、リラックスできていました。そして、社長からの質問にお答えしていきます。ソフトウェアの内容、ネットワーク環境、ハードウェアの構成根拠・・・一つ一つの質問は、的を射たものでした。そして、話も一段落して「価格は、もう少し安くならないの?」と、いよいよ価格交渉です・・・

「そうだ、ウチの近くの八百屋さんに、商売人は、『いくら、安くなるの?』と言われるより、『強気に、この価格にしてほしい』と言われる方が、弱くなる・・・」って教えてもらったんだ。「すぐ忘れちゃうわね。そうそう、○○○○万円にしてほしいんですが・・・どう?」と切り出されます。信じられないようなローコストでの指し値です。

思考回路が働かないまま、少し沈黙が続くと、「私は、半年前まで、主婦だったのよ。主人が事故で亡くなって、会社を、突然引き継ぐことになって・・・って、当然、心の準備なんかできてないし、ホント、この半年間いろいろあって、でも、取引先様や、社員に支えられて、そして、この会社の信頼を徒手空拳で創った主人のことも、今になって深く知ることができて、ますます、頑張らなきゃって思ってるんですよ・・・毎日が、勉強であり、いまだヨチヨチ歩きだとは思うのですが・・・」って深いため息をついて、「ですから、大塚商会さんもこれから成長する企業に投資するつもりで・・・何とか?」と迫られます。何だか、頃合いと思われたのか?逆クローズの勢いです。

「投資対効果で考えると、今回のご提案は、短期的な成果を上げられるものではありません。今まで、バラバラであったシステムを、全体を一元的に管理する仕組みと言う意味では、現場の負荷が大きく軽減化されるとは思えないからです。

しかし、システムと、マスタの一元化で、今後、社内には2重管理が無くなり、事務的ミス等は大きく減少します。統合化に伴う業務分析の中で、現場ローカルなアウトプットの廃止や、業務整理なども進むことで、かなり改善される要素はあります。

ただし、そういった部分での導入効果は、半年程度のタイムラグが発生します。新しいルールや運用の定着に時間が掛かるからです。ですが、『情報の見える化』と言う点ではどうでしょうか?以前は、営業は営業、業務は業務、購買は購買、物流は物流・・・といった具合にその部署単位の中で、業務が完結していて、情報を共有できることはありませんでした。

しかし、これからは、各部署間で、問題点の洗い出しや、連携強化が進むのじゃないでしょうか?この応接の壁には、聖徳太子の有名な『和をもって尊しとなす』が掲げられています・・・見た感じ、古くから飾られていると思いますが、紙が、少し日に焼けた感じです。おそらく社長が、会社に対して、望んでおられることの大きなテーマでは無かったでしょうか?

今回のシステム化では、予算の関係で、情報共有の仕組みと、決済承認の電子化が見送られました。しかし、この2つがあれば、社内コミュニケーションはさらに進むはずです。その2つのサブシステムも、導入していただいて、見積予算内ということではどうでしょうか?」

「今まで主婦だった人が突然社長になった。その苦労を考えれば・・・僕なんか。」社長の話に少し勇気づけられたのか?ようやく落ち着きを取り戻し、しっかりと対峙することができました。

その後、終始、和やかに話が進み、最終的に契約合意に至りました。

そうすると、社長が最後に「この間、銀行の人に聞いたら、営業マンの資質って、1番は商品知識が豊富、2番が信頼できる、3番が役立つ情報を提供してくれる、4番は専門的知識がある、5番が良い提案をしてくれるって教えていただきました。大塚ナビィさんは1と、4と、5は、大丈夫かな?でも、2と、3は、これから証明してくださいね・・・期待してます」って言いながら、捺印をしていただきました。僕もあらためて、ちょっと成長したかな?と、思えた日でした。

次回は6月11日(月)の更新予定です。

この記事の著者

株式会社大塚商会

大塚ナビィ

入社して以降、ソリューションビジネス一筋。数々のお客様に、ITシステム導入をサポートし、大きな効果を上げ、その評価も高いベテラン営業。今までの数多くの経験と知識を、コラムとしてスタートです。趣味は、食べ歩きとテニス。あだ名は「歩くhanako」

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