第5回 逞しくも、中堅中小企業の生きる道

ある出版物流会社のシステムは、かつては、先進的システムとして、業界紙にも取り上げられたほどでしたが、オープン化時代に合わせた世代交代のシステム化に失敗。請求、支払業務以外は、簡易開発ツール、エクセル等で別管理のシステムとして運用していました。

業務的には、普通の物流倉庫業務によくある簡単な加工(袋詰め、タグ付け)だけではなく、さまざまな出版業特有の付帯業務がありました。ですから、倉庫内の作業指図書、在庫管理、書籍の再生加工、処分、出荷業務等には、膨大な人的な手間がかかっており、業務効率化という点では大きな課題点を抱えていました。

社長は、前回の失敗もあって、システム導入には慎重でした。しかし、新規の中堅出版社との取引を境に、業容拡大を狙うには「今のままでは、売り上げが伸びても、経費も同じがそれ以上にかかってしまいダメだ。何とか、ITを活用して効率化出来ないか?」が当社への依頼でした。

早速、前回の失敗を分析すると、「オープン化=何でもやろう」という大きなシステムを前提にしていました。その為、すべての業務をシステムで管理することを前提に、開発をスタートさせましたが、得意先である出版社の数だけ、管理する内容が微妙に違っていて、その分システムボリュームは膨れ上がり、コスト増が効率化で吸収できないし、実運用にも適していない為、未稼働になったのでした。

確かに、出版社のニーズは「タイムリーに出荷したい」、「正確な在庫情報が欲しい」の二つが80%。それ以外の部分は、それぞれの出版社単位で「独自」の管理形式になっていました。しかし、それらを各出版社単位に合わせて構築するような前回の失敗はしたくありません。

そこで、社長にお願いして、「いくつかの出版社に一緒にお伺いして、『新倉庫管理システムを導入したいのですが、どういう管理をしてほしい等のご要望がありますか?』といった内容での打合せの機会を持てないでしょうか?」と相談しました。「それもそうだな!新システムに入れ替えるなら、お客様にとっても魅力あるものにしたいしね」と社長。早速、数社の出版社に訪問。

そうすると、二つの要望が上がってきました。一つは、書店への営業力強化。小さな出版社では、書店への営業がなかなかできていない現実があります。そして、もう一つは、書店からのオーダーを、リアルタイムの在庫情報を見ながら、出版社内のどのセクションからも、さらには、外販営業からもオーダーを受けれるようにして欲しい・・・との話を頂きました。

よくよく考えると、これらを実現すると、同じ出版物流倉庫の中で「他社と差別化出来る」と社長は判断されました。そこからの対応はすばやく、即、出版社に成り代わっての営業のアウトバウンドコールセンターを別会社として設立。当社は、WEB上で、セキュア―な環境で、出版社、大手出版販売会社、そしてお客様である出版物流会社を連携できるシステムの構築に取りかかりました。

そして、次に社長は、上記の二つのシステムを実現することを条件に、契約先である出版各社にお願いして、「独自管理部分を無くしていただく」ように粘り強く交渉をされました。

結果、全ては満足に行く結果にはなりませんでしたが、システムが、管理部分でシンプルになったことでのコスト削減と同時に、同業他社との差別化で営業攻勢をかけて新規取引先を増やし、売り上げ増と、収益アップに繋げることができました。

日本の中堅中小企業のIT化を阻む要因は、大きな得意先から言われる「独自の管理、仕様、条件」を押しつけられることにあるように思います。しかし、それらが、その得意先にとってもプラス要因であることは実際少なく、「以前からの慣習や、流れで」、「今さら、他の管理スタイルに変えたくない」といった、その得意先にとっても「全体最適で無く、部分最適」であるケースが多いように思います。

そして、そういった背景があるにもかかわらず、取引先から「当社では独特の・・・」と言って、イレギュラーな管理条件を押しつけられる現実。そして、システムのカスタマイズが増え、一つのシステムでありながら複数の仕組みを動かしていらっしゃる企業は、数多くあります。

そういったしわ寄せ回避する為に、このお客様は、得意先に、しっかりとITと連携したプラス面をPRして、イレギュラー条件の排除に努められ、交渉に成功したのです。逞しくも熱い中小企業の魂を感じずにはいられない・・・ガッツと情熱のお客様でした。

次回は4月30日(月)の更新予定です。

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