第4回 運用で解決できることは多い

4月に入ったばかりなのにやけに暑い日でした。車の窓を閉めてエアコンを入れる。カーナビはここからあと20分だと言いますが、もう既に、じゅうぶん山の中のはずなのに。でも、ようやくお客様の工場とおぼしき遠景が見えたと思ったら、駐車場に車を入れるまでにそう時間はかかりませんでした。

古い校舎のような外観のモルタル張りの高い建物。一階は倉庫で、広い開口があるものの、支える鉄骨が無骨に赤茶けて見え、パレットに3層に積まれた木枠梱包の箱や、10列に並ぶ棚には青いプラスチック製の籠があって、中にはさまざまな部品が入っています。それらを横目に、外に露出した鉄でできた階段を、コツコツ音を立てて登りました。

3階の入り口の扉を開くと、目の前にはスリッパが入った本箱が、靴入れの代わりとして。そして、受付の電話を鳴らしてお客様を待ちます。ペタペタペタっと奥の方からスリッパの音が2人分聞こえてくると、中扉が開き、「どうぞ大塚商会さん」と作業服を着た40歳前後の担当課長とその部下が一緒に。そして、窓際近くにある4人掛けの、やけに低い高さのテーブルと、それに比して座位の高いイスのある応接に通されました。

「いやあ、前任者が、安いからって、イスの高さも見ないで買っちゃって・・・」と苦笑いしながら切り出したかと思うと、即本題に入ります。

「当社は、自動車関連大手さんと長年うまくやってきたのですが、やっぱり最近は厳しくて。ここ数年、新しい部品の見積りを提出すると『円じゃなくて、ウォンの間違いじゃないの』って言われたりして、なかなか厳しい状況で・・・。それで、こんなことが続くと厳しいからと、社長が、創立当初から取り組んでいた計測器の分野にもっと注力しようと、実はここ2年で少しずつシフトを変えたら手応えがあって、今はそちらが大きく伸びてる。それで、従来の自動車部品製造用(MRP対応システム:見込み生産)と、計測器製造対応用(製番管理システム:受注生産)のシステムが2つ必要になったってことなんですが、まだまだ、経営環境もキビしいので、何とかその2つを一つのシステムで統合して管理できないかと・・・」

分かり易く言えば、受注スタイル、生産工程管理など、大きく違うものをハイブリッドで管理したいって話でした。欲張りなリクエストですが、期待に応えられるように頑張りたい。なぜなら、それぞれに合った二つのパッケージを導入したとすると、勘定系(請求支払業務)はまとめないといけないので、統合するとかなりなコスト負担になるし、さらに、将来的にカスタマイズを余儀なくされた時に、その費用は、システムの巨大さゆえ、小さなカスタマイズでも高額になる可能性があります。

やはり、2つの業務システムを、一つのシステムで運用することが必要です。そこでお客様の業務を実務レベルで見直してみました。

自動車業界の繰り返し見込み生産と計測器の受注生産は、入り口では大きく違うようですが、工場全体の稼働率を100%にしていたい前提で考えると、受注生産だからと言っても空き時間を発生させることなく、稼働率の向上で考えると、受注前の内示の段階で生産をスタートしていたりします。

場合によっては、昨年実績をベースに、又は、お客様との事前交渉によって、受注に至る手前で生産をスタートさせたりと、繰り返し生産でも発生するような工程管理や部品の発注管理をやっていたりすることは、実務レベルではかなり進んでいることがわかりました。

そういった業務上のバッファは、もちろん基幹システムで入力せずにエクセルで管理していて、既に現場での管理工数を肥大化させていることが、ヒアリングと分析のプロセスの中で分かってきました。

MRPで必要なのは、その品番での部品調達コスト低減と在庫圧縮ですが、そのコントロールは、受注生産でもある程度同じじゃないか?という視点で見ると、一つのシステムで、パッケージのカスタマイズを少なくする為の運用面での工夫に論点をフォーカスしていくことで、いくつもの実務回避策が生まれてきて、カスタマイズ範囲を大きく縮小することができ、安価、且つ短納期でシステム稼働に結び付けることが可能なことも判明しました。そこから先は、簡単にシステム化に成功しました。

製造業のお客様では、「ウチは特殊・・・」、「他社と違って、こんな管理が・・・」って言葉をよく耳にします。もちろん、特殊な要因は、さまざまなケースがあります・・・が、以前、海外事業展開を成功されているお客様の社長にお聞きしたことがあります。

「『ウチは特殊』とは、『ウチは変な企業』と言っているのと同じ。だから『特殊』って話があれば、どんどん『スゴイ』って言葉に変わるまで、中身を叩いていく。そうするとシンプルで良いものができるんですよ」って話されていました。

当社の生産系ERPシステムは、ハイブリッドを謳っています。もちろん、システムが、ハイブリッド対応であるのは間違いないのですが、製造現場経験を数多く踏んでいるSEが、実際に「システムをどう運用すると、簡単にハイブリッド運用ができるのか?」を追求しています。

良パッケージには、良い運用を・・・良い自動車が、良いドライバーによってその能力が引き出されるように。このお客様では、最終的にIT導入コストを、従来の既存システム経費の2/3以下で実現することができました。

本稼働後お伺いすると、応接のテーブルも程よい高さのテーブルに。担当者曰く「やっぱり、システムも同じですが、全てはバランスですよね・・・バランス」と笑顔で応えてくれました。

次回は4月23日(月)の更新予定です。

この記事の著者

株式会社大塚商会

大塚ナビィ

入社して以降、ソリューションビジネス一筋。数々のお客様に、ITシステム導入をサポートし、大きな効果を上げ、その評価も高いベテラン営業。今までの数多くの経験と知識を、コラムとしてスタートです。趣味は、食べ歩きとテニス。あだ名は「歩くhanako」

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