第3回 番組制作会社のためのスキルマップ事例

第2回のコラムで「スキルマップとは仕事に必要なスキルの一覧表である」と説明しました。今回はラジオ番組制作&音楽プロデュース会社「株式会社ヤング・スタッフ(以下「YS社」と呼びます。)」におけるスキルマップの導入事例を同社の御厚意により紹介します。

■スキルマップ導入の目的と背景
今回YS社がスキルマップを導入した目的と背景は二つあります。一つはYS社固有の問題ですが、5年前に創業者であった前社長が急逝し、それまでの「個人商店」から脱皮するために会社全体として“スキルの向上、蓄積、継承”への取り組みが急務となったこと。もう一つは、業界全体の傾向として“音楽”や“番組”に対する思い入れや執着が少なくなり、“音楽を心で伝える”ことをあまり理解していない若者が増えてきたことです。(図表1)

図表1 スキルマップ導入の目的と背景

■スキルマップ導入前の課題認識
YS社の現状を分析すると、問題点が二つほど見つかりました。一つは仕事に必要なスキルが定義されていないことでした。番組制作のスキルは属人性が強い上に、先輩から口頭伝承される経験則が多いため、体系的に整理されていませんでした。もう一つは、ベテラン層から若手に対してスキルが継承されていないことでした。これはスキルを奪われることへの恐れから、ベテラン層が積極的にスキル継承を行ってこなかったことも一因となっています。(図表2)

図表2 スキルマップ導入前の課題認識

■スキル要素の洗い出し
YS社ではスキルマップを作成する際に「番組制作業務遂行力」「基礎知識」「プロジェクト管理力」「ヒューマンスキル」「汎用ツール操作」という五つの領域に分けてスキル要素を洗い出しました。この中で「番組制作業務遂行力」がYS社にとってのコアスキル(中核となるスキル領域)であり競争力の源泉となります。しかし同時にコアスキルは属人性が強く、過去にスキル継承がスムーズに行われてこなかった部分でもあります。そこでYS社では制作業務遂行力のスキルを定義するためにスタッフ全員参加型で「制作業務フロー」の洗い出し作業を行いました。一人ひとりの参加意識を高めながら、属人化した業務内容をオープンな場で「見える化」することで、短期間でスキルマップを作成することができました。基本構成とスキル要素の洗い出しが終わったら、あとはスキル要素ごとにレベル別のスキル基準を記述し、全体のバランスを整えればスキルマップの完成です。(図表3)

図表3 スキルマップの基本構成

■スキルマップの導入効果に関する経営幹部のコメント
 □どんなスキルを持った人材が、どこに何人いるのかが明確になった。特に今後、
  音楽と教材のコラボレーション事業を会社のもう一つの中核事業に育てて行く
  ために、どのようなスキルを備えた人材が必要になるのかが明らかになった。
 □一人ひとりのスタッフがどのような志向を持ち、どのようなことを考え、何を自主的に
  勉強しているのか、これまで把握しているようで、実は把握できていなかった。
 □何よりも若いスタッフの意識が変わったことが大きい。以前は上位者によって
  仕事のやり方や伝え方が違ったため、それによって若手が翻弄されることが
  あった。スキルマップを作ったことで目的や課題が明確になり「自分は何を
  やればいいのか」ということを自ら考えて、理解した上で行動するようになった。
  社員が自ら成長しようとする意欲的な姿が見えるようになったのが一番嬉しい。

■クリエイティブな業種におけるスキルマップの意義
世の中で見かけるスキルマップの多くは、製造業やIT系などの、いわゆる「技術系・モノづくり」のスキルマップです。一方、番組制作や音楽プロデュースなど、いわゆる「クリエイティブ系」のスキルマップはまだまだ珍しい存在です。しかし、この業界では「人」が唯一の経営資源であり、このような業界こそ「人材の質」への取り組みが重要なのではないでしょうか。放送・音楽業界におけるスキルマップへの取り組みは始まったばかりですが、今後益々重要になるはずです。

■次回予告
次回は、スキルマップ作成の中で最も難しく手間の掛かるプロセスである「スキル基準」の作り方についてご説明します。クリエイティブ系のビジネスでは“番組”や“音楽”など「形の無いもの」を作っているので、特にこのスキル基準の記述が難しいのです。貴重な事例紹介となりますので、どうぞご期待下さい。

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次回は10月7日(火)更新予定です。

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