第1回 タレントマネジメントをご存知ですか?

4月は多くの若者が新社会人として働き始める季節です。人は働きやすさや報酬を求めて仕事を選びますが、同時に仕事を通じて成長していくことを望んでいます。街にあふれる真新しいスーツ姿を見ていると、自分自身のこれまでの道筋が思い出されて感慨深いものがあります。

■タレントマネジメントとは?
タレントマネジメントとは「人材の獲得、評価、育成、維持と改善」などの要素から成り立ち、その人が持っている才能(タレント)を見える化し、活用していくための管理手法です。(図表1)

図表1 タレントマネジメントの主な要素

日本ではここ3年ほどの間にようやく知られるようになりましたが、欧米では以前からよく知られた用語であり、最近の調査では世界の大企業のCEOが経営の最重要課題として取り上げています。しかしタレントマネジメントの概念自体は決して新しいものではなく、昔から類似の考え方は常に存在しており、以下のような変遷を遂げています。(図表2)

図表2 用語の変遷(人材の果たす役割やイメージ)

■資源・資本は減るが、才能は伸びる
人的資源管理(Human Resource Management)や人的資本管理(Human Capital Management)という表現は現在でも使用されています。しかし資源や資本は使えば確実に減ってしまいます。一方才能は無限の可能性を秘めており、正しく磨けば驚くほど伸びて行きます。そのため最近では人材=才能(タレント)と捉え、才能を伸ばす手法としてタレントマネジメントが重視されている訳です。

■まず何から取り組むべきか
初めてタレントマネジメントに取り組む場合、何から始めれば良いのでしょうか。これにはさまざまな手法や考え方がありますが、筆者は「組織が目的を達成するために必要な人材像を明確化する」ことを第一歩としてお奨めしています。会社が現状保有する人材像をAs Is(あるがままの姿)として把握すると共に、組織がその目的を達成するために必要な人材像をTo Be(本来あるべき姿)として定義します。最初は不十分なものでいいので、まずは目に見える形に書き出してみることが大切です。このようにして組織目的を達成するために現状不足している人材像を洗い出すことができます。

■スキルの「タテ糸とヨコ糸」
一方個人は、組織が求める人材像に近づくために、自らのスキルの幅を広げ、深く掘り下げる必要があります。筆者の場合は新入社員時代に経理部長から以下のように言われたことが思い出されます。「これからの経理マンは財務会計の知識・経験だけではダメだ。仕事のスキルにはタテ糸とヨコ糸が必要。例えば経理と英語を学べば英文会計が分かる。経理とITを学べば財務会計システムが分かる。経理、人事、営業など単品メニューだけではこれからは一つの会社の中でしか通用しなくなる。スキルのタテ糸とヨコ糸を組み合わせることによって人材の価値は一段と高くなる。」
30年前のコメントですが、今でも通用する考え方だと思います。

■タレントマネジメントのゴール
タレントマネジメントのゴールは「高い目線で自律的に成長していく人材を育成し、確保すること」です。このような人材こそが会社が求めるプロフェッショナルです。そして本当のプロフェッショナルとは、自分で壁にぶつかって、傷ついて、怪我をして、学んで来た人だけが到達できるものではないでしょうか。
本コラムの題名は江戸時代の蘭学医である杉田玄白の著書、蘭学事始(らんがくことはじめ)に由来します。玄白は当時唯一のオランダ語医学書であるターヘル・アナトミアの翻訳に取り組むに当たり、「誠に艫舵(ろかじ)なき船の大海に乗り出せしが如く、茫洋(ぼうよう)として寄るべきかたなく」との不安を書き記しています。偉大な先人とは比較になりませんが、私も玄白にあやかって、このコラムを通じてタレントマネジメントの全体像、ひいては人事管理のあるべき姿に迫りたいと考えています。来月からタレントマネジメントを取り巻くさまざまな課題を取り上げながら、これからの会社における「人材」の問題をみなさまと共に考えて行きたいと思います。しばらくお付き合いいただければ幸いです。

■次回予告
次回は「組織が求める人材像」と「自分がなりたい人材像」をマッチさせるための手法である「スキルマップの作り方」について解説したいと思います。今から約400年前の兵法書である宮本武蔵の「五輪書」にはスキルマップの原型とも思われる記述が数多く残されています。こうした長い歴史を踏まえつつ、現在の産業界・金融界におけるスキルマップの注目度、必要性及び将来に向けた課題についてご説明させていただきます。どうぞご期待下さい。

(^^) 始めてみませんか、タレントマネジメントへの取り組みを…

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次回は6月10日(火)更新予定です。

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