第2回 旅行業界が再び国際化するために求められる力とは

旅行会社はもともと、極めて国際的な業種だった。旅行会社の歴史は、訪日外国人旅行(インバウンド)の取り扱いからスタートしているからだ。お客はすべて外国人。彼らのニーズに合うようなビジネススタイルやサービスが求められるのだから、旅行会社に国際感覚が求められるのは当然だった。

しかし日本の経済発展とともに国民生活が豊かになり、日本人の国内旅行市場が生まれ、さらに海外旅行市場も登場する。特に1964年の海外観光渡航自由化以降、海外旅行市場は急成長し、旅行会社は国内旅行と海外旅行という二つのビジネスを経営の両輪とするようになる。

一方、旅行会社のビジネスに占めるインバウンドの割合は急速に低下し、インバウンド部門を持つ旅行会社は大手を中心にごく一部の存在となる。たとえインバウンド部門があっても、売上比率は会社の売り上げ全体の1桁台のパーセンテージになるなど、主力のビジネスという存在感は消えかけていた。

そうなると、かつて国際的な業種だった旅行会社は、急速にドメスティックな業種へと変貌していった。「いやいや国内旅行オンリーならともかく、海外旅行を取り扱うのにドメスティックはないでしょう」と思われるかもしれないが、海外旅行ビジネスの実態は極めてそうなのだ。

確かに舞台はグローバル。しかし旅行会社にとっては、日本人が好む場所へ、日本人が好むスタイルで、日本人を、日本人の案内で送り込むのが海外旅行の仕事なのである。視点は常に日本人目線。せっかく海外に行きながら「やっぱり横メシばかりじゃなあ」などとわがままを言うお客のために、添乗員は現地に持ち込んだ炊飯器で飯を炊き、持参した梅干しを具にしてオニギリを食べさせる。そんなサービスが喜ばれる。コテコテの日本的ビジネスなのだ。

ところが旅行会社にとって国際的なビジネス感覚を取り戻さなければならない時代がやってきた。03年の小泉内閣の観光立国宣言以来、再びインバウンドが脚光を浴び始めたからだ。観光立国宣言を別にしても、少子高齢化が進む国内市場を相手にする国内旅行と海外旅行だけでは、大きな成長は望めない。旅行会社もインバウンドのビジネス比率を上げていかざるを得ない。

さらに進んで、海外へ打って出て会社を設立し、海外から日本への旅行需要を取り扱ったり、相手国から日本以外の第三国への旅行需要をビジネスにしようという動きも始まっている。こうなると旅行会社にも本当の国際感覚が求められる時代がやってくる。

そんな時代に旅行会社に求められる国際感覚の一つは“IT力”ではないか。どの国でどんな市場を相手にビジネスをするにしても、ITシステムは不可欠だ。効率的で無駄がなく、顧客やビジネスパートナーにとっても使いやすいシステム、世界的なネットワークをスムーズに連携させられるシステム。それらを展開するITセンスと知識が求められるはずだ。

これから本当の国際派になることが求められる旅行会社にとって“IT力”は、例えば語学力などより、はるかに重要な能力のはずだ。

次回は4月初旬の予定です。

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この記事の著者

株式会社トラベルジャーナル

高岸 洋行

繊維業界紙記者、旅行業界誌編集長を経てフリーライター。
現在は旅行業界専門誌「週刊トラベルジャーナル」を中心に、旅行業界の動向に関する記事を執筆。海外取材も22カ国・70回以上。得意分野はアウトバウンドとインバウンドを含む国際旅行ビジネス全般。

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