アパレル業界におけるAI、IoT活用のすすめ ~店舗における顧客の行動把握を実現~

アパレル業界ではインターネット販売へのシフトが進んでいますが、実店舗についても依然として高いニーズが寄せられています。その実店舗販売では、Web同様に非購入者も含めた顧客行動の把握が求められており、それを実現する手段として注目されているのがAI技術を活用した映像ソリューション「FieldAnalyst」です。入店する顧客数を属性別に把握できるうえ、IoT化してBIツールなどと連携することでさらなる成果が期待されています。

プロフィール

田中 俊彦 氏(日本電気株式会社 プラットフォームソリューション事業部 エキスパート)

ワークステーションなどの映像クリエイティブサーバーの技術経験を経て、2016年より顔認証や、「FieldAnalyst」をはじめとした映像系のアプライアンスサーバーの立ち上げ・販売に従事。技術的な知見と、お客様と作り上げたソリューション経験を基に、数百施設への展開など、提案から運用までの幅広い支援を手掛けています。

豊田 雅章(株式会社大塚商会 本部SI統括部 業種特化支援グループ 部長)

大塚商会入社後、システム営業として、アパレル業、医療・介護業、旅行業、運輸業など数々のシステム構築に携わる。2012年度より本部SI統括部で、企業の業務生産性の向上を目指した基幹業務システムと、それに連携するクラウド・IoTソリューションの取り扱い、もしくは自社製品化などを手掛けています。

  • * 肩書きは2018年12月時点のものであり、閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

アパレルの店舗における顧客の行動を把握する「FieldAnalyst」

インターネットとは異なり、非購入者の動向を把握することが難しいアパレルの店舗運営。その課題を解決するために開発された「FieldAnalyst」について、概要、活用方法、期待される効果などについて紹介します。

実店舗における非購入者の行動把握が課題

アパレル業界では、マーケティング戦略上、どのような課題を抱えているのでしょうか。

田中氏:インターネットが普及したことにより、売上が実店舗からインターネット販売にシフトするという流れがあります。そしてインターネットでは訪問ユーザーがどのページを閲覧し、どのような遷移で購入・離脱に至ったのかといった情報を詳細に把握することが可能です。一方、実店舗はPOSデータから購入情報は分かるものの、非購入者の行動や興味の対象といった情報をとらえることはできません。そこにインターネット販売と実店舗販売とのギャップが生まれている部分が課題になっていると思います。そのギャップを埋めつつ、インターネットにはないサービスを実店舗で提供し、付加価値を生み出すことが求められているのでしょう。

AIによる画像認識技術で入店者数や属性を把握

その実店舗販売をサポートするためのツールとして「FieldAnalyst」が開発されましたが、その概要についてご説明ください。

田中氏:「FieldAnalyst」は、画像から自動で人物・顔を検出し、性別、年齢層などを推定するAIによる画像認識技術を活用した製品で、その用途によって「FieldAnalyst for Gate」と「FieldAnalyst for Signage」の2種類のソリューションをご用意しています。「FieldAnalyst for Gate」は店舗の入り口にカメラを設置し、入店した人数をカウントするとともに顔や様態から性別、年齢層を確認します。プライバシーに配慮するため、個人を特定できない属性情報のみを扱い、映像データは解析後即時廃棄される仕組みになっています。解析結果はあくまでも推定であって、年齢層もある程度の幅がありますが、店舗のマーケティングに活用するためには十分だと思います。

豊田:これまでもPOSレジを操作する際に人手で顧客属性を入力するという仕組みはありましたが、混み合っているときは入力する余裕がなく、仮に入力しても購入者の情報しか得ることができません。「FieldAnalyst」を活用すれば、カメラで撮影した映像から非購入者も含めた属性情報を自動的に蓄積することができます。しかも低コストで導入可能ですので、非常に画期的なソリューションだと思います。

田中氏:さらに言えば、POSレジに入力する場合は担当者の判断によってばらつきが出てしまいますが、「FieldAnalyst」であれば統一された基準によって判断されますので、ばらつきをなくすことが可能です。

キャンペーンなどの施策評価や従業員配置に活用

実店舗における活用例を具体的にお聞かせください。

田中氏:例えば、「FieldAnalyst」により入店者数が多い時間が特定できれば、そのタイミングにセールを実施する、あるいは店舗のスタッフを増やすといった施策が実現できます。マーケティングの施策、従業員の準備という両面に活用することができるのです。またキャンペーンを実施した際の入店者数を把握すれば、売上だけでは分からないキャンペーンの評価を行うことが可能です。実際に施策の評価基準に入店者数を加え、成果の上がったものだけを繰り返すことでキャンペーンの効果を高めることに成功している例もあります。

豊田:POSシステムでも顧客の集中した時間帯を把握することはできますが、それは最終的に購入したタイミングのデータです。顧客が店舗に滞留し、品定めをしているのはその前で、購入意欲が最も高まるタイミングです。販売機会をロスしないために、スタッフが必要になるのはその時間帯になります。POSではそのタイミングを正確に把握することはできませんが、「FieldAnalyst」は正確に人の流れを把握でき、適切なタイミングでスタッフを配置することが可能になります。働き方改革を実現するためには、1日単位ではなく時間単位で生産性を上げるための取り組みが求められており、そうした意味からも「FieldAnalyst」が成果を上げるのではないかと期待しています。またカメラを店内の複数個所に設置することで、棚ごとの滞留人数や時間を調査することができ、顧客の店内での行動パターンに応じたレイアウトの改善にも役立てることが可能でしょう。

閲覧者の属性に応じてサイネージのコンテンツを自動切り替え

「FieldAnalyst for Signage」の概要についてもご説明ください。

田中氏:店頭に掲出しているサイネージ(看板)部分にカメラを設置し、その映像からサイネージを見た人数や性別、年齢層、滞留時間、距離などを把握するソリューションです。その結果により表示コンテンツの評価を行い、その後の改善計画に役立てることが可能になります。また、デジタルサイネージを活用している場合であれば、見ている顧客の性別や年齢に応じて掲載内容を自動的に切り替え、サイネージの効果を高めるといった使い方もできます。つまり、店舗前で立ち止まった顧客に限定した、きめ細かなマーケティングが可能になるのです。こちらも実際に活用され、成果を上げている例が数多くあります。

「ApaRevo」を中心に最適なシステムをコーディネート

大塚商会は生活関連業に特化した販売・在庫管理システムである「ApaRevo」を中心として最適なシステムをコーディネートするソリューション「アパレル・ライフ・デザイン・プロジェクト」を提供。そのソリューション概要と導入のメリットについて解説します。

販売管理や経営分析などを多彩な切り口で実現

一方で大塚商会ではアパレル・ライフ・デザイン・プロジェクトというソリューションを提供していますが、その概要についてご説明ください。

豊田:アパレル・ライフ・デザイン・プロジェクトは、アパレルをはじめ、インテリア、雑貨など、生活を彩る商品の物販を多店舗で展開している企業を対象としたソリューションです。生活関連商品には色やサイズという概念があることから、特有の基幹業務の管理体系が必要になります。また季節ごとに流行を取り入れた展示会を行い、事前に受注するという独自のビジネスモデルがあることも特徴的です。大塚商会は、そうした特徴に対応し、生活関連業に特化した販売・在庫管理システムである「ApaRevo」を提供しています。アパレル・ライフ・デザイン・プロジェクトはこの「ApaRevo」を中心に複数のシステムを組み合わせ、販売管理や経営分析などを多彩な切り口で行えるように最適なシステムをコーディネートするソリューションです。大塚商会では専任の営業担当とサポート担当をアサインしてチームを作り、高度なアパレル業界のニーズに対応できるようにしています。

アパレル・ライフ・デザイン・プロジェクトの紹介

ITとの密接な関係性によってビジネス構造が大きく変化

アパレル・ライフ・デザイン・プロジェクトは、現在のアパレル業界のどのような状況を踏まえて生まれたのでしょうか。

豊田:以前はアパレルというとメーカーを連想していましたが、今ではZOZOTOWNなどの通販のイメージが強くなっています。つまり、アパレル業はIT企業が行うようになっているということです。ZOZOTOWNはメーカーではなく、ディストリビューターですが、優れたビジネスモデルを確立し、ITを活用しながら事業を展開しています。同様にアパレル業界全体がインターネット販売にシフトする傾向がある一方で、実店舗に対するニーズも高いことから、店舗とインターネットの販売を融合し、オムニチャネルとして同一のデータベースで管理するという取り組みが推進されています。このようにITとの密接な関係性によってアパレル業界では大きな構造変化が起きています。アパレル・ライフ・デザイン・プロジェクトはそうした状況に対応するソリューションとして立ち上げられました。

顧客ニーズの変化なども影響しているのでしょうか。

豊田:アパレル業界では「定番」という言葉が生み出されたように、以前はある服が流行すれば大勢の人々が同じものを着るという傾向がありましたが、今では人と異なるものを着たいという風潮もあり、一人ひとりのニーズに対応する必要があります。現代の「好きなモノを、探す手間をかけずに、今すぐ欲しい」というニーズをとらえて、販売機会を逃さないようにするためには、大量なお客様のデータ分析を可能にするITの力は欠かせないものとなりました。こういった、アパレル業界特有のマーケティングやビジネス構造の変化に対応するために、アパレル・ライフ・デザイン・プロジェクトを立ち上げたのです。「ApaRevo」を中心としてさまざまなシステムを組み合わせてご提供することで、より多様化しているアパレル業界特有のニーズにお応えします。「FieldAnalyst」もアパレル・ライフ・デザイン・プロジェクトに組み込むことで大きな成果が期待できるシステムの一つだと思います。最初は一つの店舗で試し、その後効果が確認されれば多店舗にも拡大するというスモールスタートに対応することも可能で、コストを最適化しながら導入していくことができます。

田中氏:「FieldAnalyst for Gate」で設置したカメラは、防犯目的のカメラとしても活用できますので、犯罪や不正の抑制という用途も踏まえるとスモールスタートに着手しやすいと思います。

「FieldAnalyst」をはじめとした映像技術をIoT化することで、さらなる利便性を実現

店舗での活用が期待される「FieldAnalyst」ですが、IoT化することでほかのシステムと連携すれば、その可能性はさらに広がります。

BIツールとの連携で店舗状況を把握

「FieldAnalyst」と社内システムとをインターネットで連携することによる具体的な活用方法についてお聞かせください。

豊田:「FieldAnalyst」の情報とPOSデータとをBIツールの「Qlik Sense」に取り込むことで、さまざまな分析が可能になります。例えば「FieldAnalyst」で得た顧客の滞留時間情報とPOSシステムの売上情報との相関関係を分析し、その店舗の状況を把握することができます。この分析結果は店舗だけではなく、本部でも活用できるため、店舗設計の改善に役立てることができるのです。またショッピングモールなどの太陽光の影響が少ない店舗では、外にもカメラを設置することが可能です。外の通行人数と入店者数とを比較することで、店舗立地の評価を行うことができるうえ、POSデータと合わせて分析することで、さまざまな施策への応用も実現します。

田中氏:「FieldAnalyst」の情報は、一定の時間ごとにCSVファイルの形式で自動的に出力することができ、BIツールや基幹業務システムとのリアルタイム連携が可能になります。

顔認証システムの活用でさらに広がる可能性

顔認証システム「NeoFace」と連携した活用も考えられると思いますが、その可能性についてご説明ください。

田中氏:「NeoFace」を活用すれば、大まかな属性のみならず、個人を特定することが可能になります。この情報を店舗で活用するためには、個人情報への配慮が必要になるため本人の同意が前提になりますが、入り口で顧客を特定したら、その個人に適した対応を心掛ける、あるいは店頭のサイネージを個人の好みに合わせたコンテンツに切り替えるといったサービスができるようになります。Webでは当たり前の機能になっている個人に応じたコンテンツの切り替えを、店舗でも実現できるということです。

豊田:さらに基幹業務システムと連携すれば、その個人の過去の購入履歴をリアルタイムに抽出し、タブレットなどで参照することで、よりきめ細かなサービスを提供することができるでしょう。

田中氏:また「NeoFace」は顧客だけではなく、従業員の入退室の確認にも活用できますので、勤怠管理にも応用が可能です。入退室という点では、日本で開催される予定の大規模な国際スポーツ大会の選手村における入退室管理に「NeoFace」が採用されることが決まっています。

多彩な応用が期待される映像ソリューション

「FieldAnalyst」および映像ソリューションの今後の展望をお聞かせください。

田中氏:「FieldAnalyst」は人数のカウントや滞在時間を測定するといった使い方が基本になりますが、そのベースにある映像データはさまざまな形で活用することが期待できます。NECでは映像関係ソリューションを今後さらに充実させていく予定ですので、防犯やおもてなしなど、映像データの多様な活用方法を模索していきたいと考えています。

豊田:対人接客に関しては、カメラの映像がキーになると思います。映像を活用することで接客の在り方が大きく変わってくるでしょう。これはアパレルに限ったことではなく、例えば医療や介護の領域でも活用可能で、事故やミス、不正の防止に役立てることができます。ただし、そこではプライバシーへの配慮は必須になってくるでしょう。ほかにも、映像からわずかな静脈の動きを察知して、脈拍を計測する技術も確立されています。あるいは万引き犯の典型的なモーションを割り出し、それを基準に防犯に役立てる仕組みも登場しています。このように映像技術は目覚ましい進化を遂げていますので、今後さまざまな分野での活用が期待されています。

田中氏:例えば顔認証技術を活用した無人コンビニの実証実験なども始まっていて、映像ソリューションは作業の効率化を実現する手段として期待されています。このように多彩な応用が期待されている映像ソリューションの開発・提供を通じて、今後も社会の発展に貢献していきたいと考えています。

映像技術の活用により、これまで思いもよらなかった新しい仕組みが次々と登場することが期待されます。本日はありがとうございました。

本ページで紹介したソリューション

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