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ペーパーレス化を賢く進める4つのステップ
ペーパーレス化により業務フローから紙をなくして、デジタル化/システム化を推進することで、業務スピードや生産性の向上、テレワークへの対応やコストの削減につながります。ここでは、全体的なペーパーレス化/システム化を段階的に実現するための、4つのステップをご紹介します。
目次
単にシステム化を進めても、ペーパーレスは実現しない?
ペーパーレス化にはシステムが不可欠です。しかし、既に多数の業務システムが導入されているのに、なぜペーパーレス化が実現できていないのでしょうか。
原因の一つは、部門・部署・役割ごとにサイロ化(孤立し、他のシステムと連携が取れていない状態)されたシステムです。例えば、同じ申請業務でも「残業申請をする仕組み」「経費精算を申請する仕組み」「稟議を申請する仕組み」「結婚届や住所変更届けをする仕組み」、全て異なるシステムや仕組みを構築してしまうと、検索性やデータの整合性などが損なわれ、一部の業務では、”紙での業務が最も効率的”という状態になってしまいます。
大塚商会×アドビ社がおすすめするアプローチとは
ペーパーレス化のゴールは、単に部分的な業務改善やコスト削減ではなく「企業組織全体の改革」「企業体質の強化」です。しかし、その実現は非常に難しく、簡単にはいかないケースが多いです。いたずらにシステム化を進めると、社内にシステムが乱立し、導入・メンテナンスの費用がかさみ、ビジネス拡大に必要な新たなIT投資が難しくなります。
一方で、一度に全てのシステムを刷新しようにも、多くの関係者を巻き込む形となり多大な工数が発生します。システムの入れ替えは通常業務と並行して進めることがほとんどなので、全てのシステムを一度で変えることはあまり現実的ではないかもしれません。
大きく4つのステップでペーパーレス化を実現
ペーパーレス化に取り組もうと考えたとき、始めにどこから手を付けるべきか悩んでしまうことも多いと聞きます。まずは、契約書などの電子化から着手することをお勧めします。もちろん、抱えている課題や担当している業務範囲によって着手のポイントは変わります。
契約書の電子化からペーパーレス化に着手することを勧める一番の理由は、社外からペーパーレス化への取り組みが見えやすく、企業イメージの向上や人材確保につながりやすいからです。しかしながら、電子契約の導入においては取引先企業にも影響があるため、全ての契約業務を一度に電子化するべきとは一概には言えません。まずは部分的であっても、電子契約の導入を進めてみるのはいかがでしょうか。
ペーパーレス化のメリットとデメリット
そもそも、なぜペーパーレス化が必要なのか、そのメリットと一般的なデメリットについて整理します。
ペーパーレス化のメリット
ペーパーレス化のメリットは大きく分けて3つあります。またメリットだけではなく、上述のとおりペーパーレス化への取り組みが推進される4つの社会的背景もあります。
メリット1:印刷コスト、保管コストの削減
ペーパーレス化のメリットとして、誰もがすぐに思い浮かべるのはコスト削減でしょう。用紙の購入量を減らし、印刷コストも削減することができます。また、書類を保管するためのキャビネットや倉庫スペースも必要なくなるため、オフィススペースそのものの縮小にもつながります。
メリット2:柔軟な働き方の実現
生産性の向上やパンデミック対策でテレワーク環境を整備したくても、紙文書が介在する業務が残っていると、文章の印刷、確認、捺印などのために出社する必要があります。ペーパーレス化を進め、業務がデジタル上で完結するようにすれば、自宅や外出先からも円滑に業務を遂行できます。
メリット3:システム化による生産性向上・業務効率化
ペーパーレス化とは、言い換えるとデジタル化/システム化です。ペーパーレス化を実現することで、情報府の共有・検索が容易に行えるようになり、業務効率の向上につながります。さらに、データやシステムを連携して業務プロセスを自動化すれば、二重入力や入力ミスもなくなり、業務スピード、生産性の向上にも貢献します。
ペーパーレス化のデメリット
ペーパーレス化自体にデメリットはほぼないとはいえますが、「会社から紙が1枚もなくなってしまった」ら不便が出てくるかもしれません。ずっとディスプレイを見ていると目も疲れてしまいますので、「資料」や「頻繁に確認する帳票」「創造的な業務」などは、紙のままで残した方が、業務効率が落ちずに済みます。
デメリット1:ITに不慣れだと、使いにくい
単純に、パソコンやスマートフォンに馴染みがない場合、紙に比べて作業効率が低下します。慣れの問題と言ってしまえばそれまでですが、慣れるまでは非常にストレスがかかります。
デメリット2:導入にコストがかかる
ペーパーレス化のメリットとしては、コスト削減が挙げられますが、ペーパーレス化のためのシステムを導入にも、コストが発生します。削減コストと導入コストを比較し、削減コストが大きければペーパーレス化に取り組みましょう、と以前は言えたのですが、昨今は法制度の整備やパンデミック、自然災害といった社会的背景より、そう簡単にはいかないようです。
ペーパーレス化/システム化が必要な4つの社会的背景
ペーパーレス化とは、文字どおり紙の運用をなくし文書、紙を減らし、パソコンやスマートフォン・タブレットからの閲覧を可能にし、業務の効率化を図る取り組みのことです。企業にとってペーパーレス化は長年にわたるテーマでしたが、近年、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うテレワークの推進や法制度の整備により、あらためてペーパーレス化の必要性について注目されています。
パンデミックや自然災害
新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業がテレワークを導入しました。こうしたパンデミック対策としてだけでなく、豪雨、台風、地震などの自然災害によって、オフィスでの業務遂行が制限されるリスクも想定されます。ペーパーレス化やシステム化を推し進め、テレワークができる体制を整えることが、重要な事業継続対策になります。
法制度の整備
日本政府もペーパーレス化、システム化を推進するために法整備を進めています。電子署名法により電子署名(電子契約)が法的根拠を持った契約であることが定められ、また電子帳簿保存法の改正により、さまざまな帳票のデジタル保存が推奨されています。
労働人口の減少
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、15歳~64歳の生産年齢人口は2015年時には約7,700万人でしたが、25年後の2040年では約6,000万人まで減少するとされています。ペーパーレス化により業務をスピーディーにすることで、1人当たりの生産性を向上させることや、柔軟な働き方の実現により多様な人材を確保することが求められています。
情報技術への対応
経済産業省が2018年に発表した「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート」では、旧来のシステム(レガシーシステム)からの脱却ができなかった場合、ビジネス上の大きな損失を被ることになると提言されています。ペーパーレス化を契機としてシステムを刷新することが、企業競争力を高めDXを推進するためのベースとなります。
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