ライドシェアリング企業「Uber」の評価額は?

答え:625億ドル

破竹の勢いで世界中にサービスを拡大し、果敢な資金調達で企業価値を押し上げている米Uber(ウーバー)。設立わずか7年の企業がなぜそこまで成長したのか。同社の価値は、単なるITを活用した新サービスだけにあるのではない。同社が実現を目指す破壊的イノベーションの中身とは。(東洋経済オンライン/JBpress特約)

[2016年 8月 1日公開]

モノを超えたシェアリングで新たな価値を提供

Uberのようなビジネスは「シェアリングエコノミー」と言われる。シェアリングエコノミーとは、モノやサービスを共有するビジネス。所有するためのコストをみんなで負担することで、個人の負担を軽減する。その意味で、シェアリングエコノミーの代表格は自動車を共有するカーシェアリングだろう。環境負荷低減につながることもあり、エコロジーの観点からも注目されている。

Uber Technologies Inc. サービスサイト

しかし、カーシェアリングはそれほど大きなビジネスにはなってはいない。なぜか。それは、カーシェアリングに使われるのは特定の企業や団体が保有する自動車であり、台数やサービスの体制に限りがあるからだ。自動車は高価なので、何台も買いそろえてサービスを広げることが難しい。モノのシェアリングは、そこに限界がある。

一方、Uberのビジネスは、タクシードライバーや個人が保有する車を使う。利用者はスマホ上のUberのアプリを使って、Uberに登録しているドライバーを呼び出して乗車する。ドライバーはプロのタクシー運転手もいれば、無所属の素人もいる。そこには、モノのシェアリングをベースにしながらも、さまざまなシェアリングエコノミーの要素が加わっている。

例えば、ドライバーの情報。普通に考えると、会社に所属していない個人の車を利用するのは不安が付きまとう。しかし、Uberは口コミという「情報のシェアリング」によって、安全性を担保している。利用者は毎回ドライバーを評価し、その評価情報をもとに、乗車するかどうかを判断する。良い評価を得られるかどうかが売り上げに直結するので、ドライバーのサービスレベルは当然アップする。

さらにUberでは利用者もドライバーから評価される。ドライバーは利用者の評価を見て、ピックアップするかどうかを判断する。

Uberではこうした情報のシェアリングによって、ドライバーと利用者双方の安全性を担保している。つまり、お互いの評価がサービスの質を高めているのである。サービス提供者と利用者たちの「自らの安全を守る」「自らの利益を守る」というごく自然な、当たり前のインセンティブによって、事業が伸びているのだ。

Uberと同様にシェアリングエコノミーで急成長している企業に「Airbnb」(エアービーアンドビー)がある。こちらが提供するサービスはホームシェアリング。利用者は、個人の家の空いている部屋やアパート、別荘などを予約して宿泊場所として利用できる。同社も今や「部屋を一つも持たない世界最大のホテル会社」である。時価総額は255億ドル。Uberの半分以下だが、ホテル大手のマリオット・インターナショナルの時価総額を上回る。

Airbnb, Inc. サービスサイト

巨額の資金調達で常識との戦いに挑む

UberとAirbnbは今のところ非上場である。資金は主に投資ファンドから調達している。例えば、サウジアラビア政府の公共投資ファンドから35億ドルの資金を調達したことで、手持ち資金は110億ドルを超えたという。

こうやって調達した巨額の資金を使って、彼らは何をしているのか。一言でいえば、これまでの常識と戦っているのである。例えば、当初Uberは空港に入れなかった。タクシー運転手の雇用を守るために規制が引かれていたからだ。空港の利用者はタクシー会社にとってはドル箱なので、当然の規制と言ってよい。空港への乗り入れ規制はだんだん緩和されてきたが、まだ多くの規制がUberの前に立ちはだかる。

Airbnbも同じように、多くのトラブルや係争を抱えている。例えば、宿泊利用者による盗難や破損、所有者による違法な貸し出し、人種差別による宿泊拒否などだ。考えてみれば、起こり得るべくして起こるトラブルと言ってよい。普通の人であればビジネスにすること自体を諦めてしまうかもしれない。しかし、彼らは諦めない。そうしたトラブルを乗り越え、既得権者のこれまでの常識と戦い、打ち破ろうとする。

そのためには資金がいる。自分たちの思い描く世界を実現するために、大量の技術者を雇ってシステム開発に投資し、将来の無人タクシー導入に備えて「自動運転」技術を開発し、世界中で規制撤廃のためにロビー活動に精を出す。新しいビジネスを定着させて業界の地図を塗り替え、さらには人々の生活スタイルをも変えるためには、どうしてもお金がかかる。

Uberが契約するロビイストの数は2015年6月時点で250名と言われる。同時点での従業員数が約3,000名だから、いかにロビー活動に力を入れているかがお分かりいただけよう。それほどUberは本気で世の中を変えようとしている。その評価が625億ドルという数字に表れている。

協力メディア

東洋経済オンライン/JBpress

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ビジネス・IT系のメディアとの「数字」を切り口にしたコラボレーション記事です。ご期待ください。

プレジデントオンライン/JBpress
1月中旬に公開予定

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