2020年にインターネットにつながる「モノ」の数は?

答え:530億個

ビジネスや社会のあり方を大きく変えると注目されるテクノロジー動向の一つに「IoT」(Internet of Things:モノのインターネット)がある。東京オリンピックが開催される2020年に向けて、今、どのような変化が起きようとしているかを、あらためて考えてみよう。(東洋経済オンライン/JBpress特約)

[2016年10月 7日公開]

IoTが築き上げる人間とITの新しい関係

米国の市場調査会社、IHS Technologyの発表によれば、2020年にはインターネットにつながる「モノ」の数が530億個になるという。

モノがデータを発信し、それがインターネットを通して集められる。当然、その逆もある。インターネットを通して、モノに何らかの指示が与えられ、モノが指示通りに動く。「IoT」(Internet of Things)と言われる世界である。

以前からこうした世界が来ることは予想されていた。コンピューターに囲まれた社会、「ユビキタスネットワーク社会」がそれだ。

例えば、コンピューターが人の体温や脈拍の変化を察知して、休息を促すようなメッセージを送ってくる。2000年頃には、「いずれそういう世界が来る」と思われていた。それが今、急速に現実のものになろうとしている。

自動車は早くから「走るコンピューター」と言われてきた。既に車体には多くのセンサーが埋め込まれ、運転状況やエンジンの調子、燃費などのデータをリアルタイムに収集している。こうしたデータ収集システムがインターネットを通して外部とつながることで、さらにサービスレベルが向上する。

今や、車のディスプレイがGPSと地図情報から目的地までのルートを示し、受信した渋滞情報を基に迂回路まで表示してくれるのは当たり前となった。今後は、走っている地域や運転スキルによって保険料がリアルタイムに変動するようなサービスも出てくるだろう。そして、いつかは完全自動運転が実現する日が来るかもしれない。

IoTによる変化は多くの業界で起きつつある。医療では患者の状況を常時モニタリングして分析した情報を医師や看護師に知らせ、製造業の工場では、ドイツが進める「インダストリー4.0」のように製造工程やテスト工程のオートメーション化が進み、センサーが製造装置の故障を事前に検知する……といった仕組みも導入されている。

無線とクラウドがIoT化を後押し

ここに来てIoTが一気に広がった最も大きな要因は、実装コストの低下だ。通信機器やセンサーなどハードウェアに加え、通信やデータ処理などの運用にかかるコストが劇的に低下した。例えば、センサーの単価はこの10年で半分以下になっている。こうしたコストの低下によって、より多くの機器がIoT化され、より広く、細かくデータを収集できるようになった。

さらに、IoTの普及を後押しする大きな変化も起きている。通信の“無線化”である。スマートフォンの急速な普及によって、電話回線は無線が当たり前になった。電話線が敷設されていない発展途上国では、スマートフォンの方が普及している。そのインフラとなっているのが、Wi-Fiをはじめとする無線LANである。

もう一つの大きな変化はクラウドサービスの普及だ。多くのITサービスがクラウド上で提供されている。最も身近なクラウドサービスはSNSだろう。2016年7月時点で、Facebookのユーザー数は、月に1回以上利用するユーザーが16億5,000万人、毎日1回以上利用するユーザーは10億9,000万人もおり そのうち9億8,900万人がモバイルユーザーである。

つまり、今や無線とクラウドを使ってモバイル端末でコミュニケーションし、データをやりとりするのが当たり前の時代になった。こうしたインフラ環境の進展が、IoTの実装と適用領域の拡大を推し進めているのだ。

無限のデバイスが人間の生活空間に

米国の調査会社ガートナーによれば、2020年には、ネットワークに接続された機器の数は、一般消費者向け製品で2014年の5.9倍、産業分野で6.3倍、自動車分野で18.5倍になるという。2020年の経済的な市場規模は2014年の3倍近い1.7兆ドルになるという予測もある(IDCの調査)。

世の中にセンサーがあふれ、リアルタイムにデータの収集と分析が行われ、あらゆる場面で活用されるのだから、市場が大きく成長するのは当然だろう。

しかし、IoTのそれ以上に大きなインパクトは、人間とITとの距離を縮めることだ。「人間とITが混然一体となって存在する」世界が現実のものになると言ってもいいかもしれない。

ITが人間の目や耳の代わりになり、逆に人間がITの指示によって動くようになる──。こうした兆候はさまざまな分野で見て取ることができる。

例えば、Googleが開発したスマートコンタクトレンズ。糖尿病患者向けに、涙に含まれるグルコースの値を測定するコンタクトレンズである。レンズには超小型のワイヤレスセンサーとアンテナが内蔵され、測定した血糖値をスマートフォンやPCなどに送信する。そのデータを医師と共有すれば、さらに効果的な治療を受けることができる。

スマートウォッチも人間とITを一体化させる。次のアポイントの時間が迫ると知らせてくれる、長く座っていると健康のために立ち上がって動くように警告してくれる……。IoTによって、これまでにない人間とITの新しい関係が築かれていくことだろう

「530億個」というのは、インターネットに接続されたデバイスの数の通過点に過ぎない。私たちの身の回りには、530億個を飛び越えて無限ともいえるデバイスが存在するようになるはずだ。その時、私たちはどんな世界を作り上げているのだろうか。それは私たち人間の選択にかかっている。

協力メディア

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