世界最速のコンピューターの処理性能は?

答え:9京3,015兆回/秒

世の中や人々の動きを示す膨大なデータ群。それらを処理して知見を導く圧倒的なコンピューティングパワー。デジタルテクノロジーの進化に呼応して、我々は今、大変革期を迎えようとしています。最新コンピューターの処理能力を示す数値を入り口に、今後の変化に思いを巡らせてみましょう。(IT Leaders特約)

【2016年11月 7日公開】

中国のスパコンが世界一を更新

筆者が小学生の頃に巻き起こったスーパーカー・ブーム。ランボルギーニ・カウンタックLP400やフェラーリ512ベルリネッタボクサーといった車名に加え、それぞれの公称最高速度などを丸暗記するほど夢中になり、いつの日か自分もステアリングを握るんだと夢を膨らませたものでした。スーパーマンにスーパースター、はたまたスーパーモデル!?…。頭に「スーパー」が付く単語に、今でも素直に“超越した凄さ”を感じてしまうのは、幼少期の刷り込みが影響しているのかもしれません。

さて、当シリーズのテーマであるICT(情報通信技術)の世界に目を転じてみると、「スーパーコンピューター」なるものが存在します。主には科学技術計算を目的とした大規模かつ高性能なコンピューターであり、その処理能力の向上を巡っては、メーカーの枠を超えて、国を挙げてしのぎを削っている状況にあります。

では、昨今のスーパーコンピューターはどのような水準にあるのでしょうか。最も高速なコンピューターを定点観測する著名なランキングに「TOP500」があります。所定のベンチマークテストで検証し、その名の通りに上位500位までを公表するプロジェクトで、年に二回の頻度で結果が更新されています。

TOP500の公式サイト

執筆時点で最新となる2016年6月のランキングでトップになったのは、中国の「神威太湖之光(Sunway TaihuLight)」で、その性能は「93.015PFLOPS(ペタフロップス)」に達しています。自動車のエンジンなどに使われる「馬力」と違ってピンとこない単位ですが、FLOPSはコンピューターの性能指標の一つで、一秒間に浮動小数点数演算が何回できるかというもの。それに「ペタ」がつくと、毎秒1,000兆回もの演算をこなす能力を備えていることを示します。そしてくだんの記録は93.015PFLOPSですから、9京3,015兆回/秒!──これで凄さの片鱗が伝わるでしょうか。

ランキングの発表時、神威太湖之光がたたき出した93.015PFLOPSという数値もさることながら、それまで6回連続で首位の座にあった、同じく中国の「天河2号(Tianhe-2)」の33.863PFLOPSを大幅に上回ったことでも話題となりました。ちなみに、2011年6月と11月にわたって二連覇した、日本の理化学研究所の「京」(10.510FLOPS)は、今では5位というポジションです。次なる新記録を打ち出して首位につくのは、どれほど“スーパーな”マシンなのか。最先端の研究によってランキングが塗り替えられることを繰り返しながら、スーパーコンピューターはさらにパワーアップしていくことでしょう。

ICTは「指数関数的」に進化を続ける

テクノロジーは常に進化を続けるもの。その中でも、とりわけICTの分野は、これまで凄まじい進化を遂げてきたし、これからもその勢いはやみそうもありません。その進化の度合いを示すのに、しばしば使われるのが「exponentially(エクスポネンシャリー、指数関数的に)」という表現です。分かりやすく言うなら“倍々ゲーム”。1、2、3、4、5…9ではなく、1、2、4、8、16…256と突き進むような猛烈な勢いを指しています。

ICTの進化を推し量る有名な法則の一つに「ムーアの法則」があります。これはインテル創業者の一人であるゴードン・ムーア氏が経験則から導いた「半導体の集積率は18カ月で2倍になる」というもので、これも指数関数的な技術進歩を示唆しています。細かいことはさておき、プロセッサーをはじめとするICTに関わる種々のテクノロジーは実際に、そんなカーブを描きながら性能向上を具現化してきました。

再び卑近な例を挙げて恐縮ですが、今から30年以上も前、筆者が大学時代に初めて手にしたパソコンはNECのPC-9801 F2というデスクトップ機でした。インテルi8086互換(セカンドソース)の16ビットプロセッサーを搭載した当時のフラッグシップモデル。記憶媒体は5.25インチのフロッピーディスクで、1枚あたり640キロバイトです。10枚入りのセットが8,000円ほどもして、気軽に買えるものではなかったと記憶しています。

大枚はたいて購入したパソコンでしたが、性能を自慢できる期間は長くは続きませんでした。その後、i386、i486、Pentium…と、搭載されるプロセッサーの世代が上がるごとに性能は飛躍的に向上。ハードディスクもごく普通に内蔵されるようになり、その容量はまさに倍々に増えていったものです。やがてパソコンをネットワークにつなぐのが当たり前となり、通信の方式も速度も、目を見張る進展がありました。「一年もすれば仕様が見劣りしてしまうので買い時に悩む」といった声は、30年以上が経った今でも相変わらず聞こえて来ます。

企業の情報システムに関わるテクノロジーも同様に、変革の波にさらされてきました。サーバーに使われるプロセッサーの速度、データを蓄えるストレージの容量、ネットワークの性能…年を追うごとの進化を、多くの人が実感してきたと思います。

少し前の資料になりますが、大手ベンチャーキャピタルのKPCB(Kleiner Perkins Caufield Byers)がここ数年毎年発表している「Internet Trends」の2014年版に興味深い数字を見つけました。コンピューティングコストの経年変化を見たもので、以下に概略を紹介しましょう。

Internet Trends 2014(コンピューティングコストの経年変化_米KPCB社調べ)

コンピューターの価格性能比の変化を見る目安として、(プロセッサー内の)トランジスタ一つあたりのコストを算出すると、1990年に527ドルだったものが2013年には0.05ドルにまで下落しています。ストレージはどうでしょう。ギガバイトあたりのコストは、1992年に569ドルだったものが2013年には0.02ドルという水準。ネットワークの指標として1,000Mbps(メガビット/秒)あたりのコストを見ると、1999年に1,245ドルだったものが2013年には16ドルになっています。どれも著しく安くなっており、我々が(一定額で)手にできるコンピューティング能力が、まさしく「指数関数的に」高まっていることを物語っています。

かつて、大学の教室を埋めるような大きさで、ものすごく高価だったコンピューターよりも、今、我々の手のひらにあるスマートフォンの方が、はるかに高い性能を備えています。同じようなペースで進化が続くとしたら、どうなるでしょう。処理性能がさらに向上する、どんどん小型化していく、タダ同然で使えるようになる…幾つもの方向性がありますが、いずれにしても、何やら凄いことが起こりそうですね。

社会もビジネスも大変革期に突入する

IoT(モノのインターネット)が象徴するように、さまざまな機器がネットワークにつながり、センサーなどで察知した現場の状況を示すデータが続々と生成されています。ユーザーが拡大するSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)にしても一種の“感情センサー”であり、個々人の意見や行動といった貴重なデータの発生源と見ることができるでしょう。GPS(全地球測位システム)による位置情報も交えながら、膨大なデータ群が時々刻々と生み出される世の中を迎えているのです。

そうして爆発的に増えるデータを処理するのには相応のコンピューティング資源が必要ですが、先に触れたテクノロジーの指数関数的な進歩に支えられて、我々は手軽に、そして安価に圧倒的なパワーを手にできるようになってきました。しかも、クラウドの台頭によって、自らの手で基盤を用意することなく、サービスとして利用できる環境も着々と整いつつあります。AI(人工知能)の進化も見逃せません。自己学習アルゴリズムなどを洗練させながら、コンピューターがより精緻な判断を下せる可能性がぐっと高まってきました。

膨大なデータと、圧倒的なコンピューティング能力。これらの掛け合わせは、ビジネスや社会基盤に大きな変革をもたらすことは間違いありません。状況を判断し、その時々や個々人に最適化させた形でリアルタイムにサービスを創り上げていくアプローチはその典型例となるでしょう。商品/サービスの開発から市場展開、さらにはユーザー体験までをも含んで首尾一貫して最新ICTを前提とした事業モデルを組み上げること、すなわちデジタルビジネスの実践力が大きくものを言う時代を迎えようとしているのです。

ガートナーが2016年8月に国内で調査した結果によると、デジタルビジネスに何らかの形で取り組んでいる企業は7割程度。これは前年の調査から大きく変わっていないものの、部門レベルではなく全社で取り組むケースが1割増え、3割程度にまで達しています。また、デジタルビジネスで成果を挙げていると回答した企業が全体の4分の1にまで増えてきました。日本企業も着実にアクションを起こしていることがうかがい知れます。

ガートナーのプレスリリース「デジタル・ビジネスはプラットフォームの時代へ」(ガートナー ジャパン株式会社)

「破壊的な変化が日常になる(Disruption is New Normal)」という言葉がまさに現実になりつつあるのが今の時代です。そんな大変革期、各種テクノロジーの進化を裏付け、そして近い将来を予見する数字をつぶさに眺めていると、世の中の見え方が変わってくるに違いありません。

協力メディア

IT Leaders

「数字で理解するテクノロジーの進化と真価」協力予定メディア

ビジネス・IT系のメディアとの「数字」を切り口にしたコラボレーション記事です。ご期待ください。

東洋経済オンライン/JBpress
12月上旬に公開予定

プレジデントオンライン/JBpress
1月中旬に公開予定

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