全世界における2016年のパブリッククラウド市場規模は?

答え:2,040億ドル

今や「クラウド」は、IT業界を代表するキーワードとなりました。中でも「パブリッククラウド」は、コストやスピードの面でこなれており、企業にとって最も身近な提供形態と言えます。その市場規模も驚くべきレベルに達しているようで…?(クラウド Watch特約)

【2016年11月21日公開】

あの“あいまい語”が今年で誕生10周年(?)

「クラウド」という用語がITの世界で認識されたきっかけは2006年8月、当時のGoogleのCEOであるエリック・シュミット氏(現会長)の発言だとされています。クラウド(雲)のようなインターネットにアクセスできれば、端末やブラウザーの種類に制限されることなく、ユーザーはさまざまな利益、恵みの雨が得られる、と説いたそうです。

「ネットワークに繋がりさえすれば何でもできる」という発想は、それこそインターネット黎明期から多くのエンジニアが模索していて、クラウド的な志向のネットワークも当時から存在していたはず。しかし、用語としての「クラウド」に集約され、多くの人の腑に落ちたのは、この瞬間だったのでしょう。

当時を思い返すと、この「クラウド」という言葉、「ただのバズワード」「マーケティング用語に過ぎない」など、ITに詳しい人ほど、忌避していたように思います。ですが、シュミット氏の発言から10周年(?)を迎えた2016年のいま、メディア記事や企業のサービス名等を見回すと完全に定着したと断言できるのではないでしょうか。

成長著しい「パブリッククラウド」

「クラウド」という言葉の定義があいまいだという指摘はまさにそうかもしれません。ただ、それを補完する概念も次々と生まれています。その一つが「パブリッククラウド」。主にデータセンター事業者が広く一般向けに提供・販売しているサーバー群のことであり、ユーザーは料金を支払えば、サーバーの設置場所を意識することなく、また機材を物理的にセットアップせずとも、すばやくウェブサイトなどを開設できるものです。

2016年、パブリッククラウドは極めて一般的なサービスとなっており、市場規模的にも大きくなっています。調査会社のガートナーは、2016年のパブリッククラウド市場規模を全世界で2,040億ドル(1ドル100円換算で20兆4,000億円)と予測しています。

このレポートによると、前年2016年の市場規模は1,750億ドルであったため、1年で16.5%もの成長を遂げた計算になります。ガートナーの調査担当者も「組織によるデジタルビジネス戦略の追求がトレンドとなっており、既存ITサービスからクラウドベースのサービスへのシフトが鮮明だ」と評しています。

パブリッククラウドの中でも注目株は?

レポートではさらに、用途別の成長率についても分析しています。その中でも最も高い成長率を予測されているのが「IaaS」です。2015年の16.2億ドルに対し、2016年は38.4%増の22.4億ドルに達するとしています。

IaaSとは「Infrastructure as a Service」の略で、ネットワークインフラ各種の提供をオンラインで受けるというものです。歴史を振り返ってみますと、「クラウド的」と呼ばれるサービスの多くは、いわゆる「SaaS (Software as a Service) 」で、クラウド上で実行されるアプリケーション・ソフトウェアをユーザーが利用します。大容量のウェブメールや、オンラインストレージなどが代表格です。

対してIaaSは、オフィスで必要とされるサーバーや回線など、通信インフラ全体をクラウド化します。従業員の増減に合わせてファイルサーバーのCPU性能を変えるのも容易です。

このため、今まさに起業しようとしているベンチャーが、初期投資を抑えつつオフィスを開きたい用途などに向いています。もちろん大企業などでも、既存システムから独立した新部署を立ち上げる場合などに有効でしょう。

日本企業はプライベートクラウドがお好き?

サーバーの設置・運用をほぼ完全に外部委託するのがパブリッククラウドですが、その反対概念として「プライベートクラウド」があります。パブリッククラウドは広く一般に共有サービスを提供するのに対し、プライベートクラウドは利用者が占有できるクラウド環境を提供します。

プライベートクラウドのメリットは、利用者の事情をより深く酌んだシステム設計ができることにあります。パブリッククラウドは運営事業者が構築した環境を借りるわけですから、いくら汎用性を重視しているとはいえ、仕様面での限界はあります。「社内ルールでこのセキュリティプロトコルをどうしても使いたい」としても、パブリッククラウドがそれをサポートしていなければ、それまでです。

その点、プライベートクラウドはいちからサーバー環境を構築するのとほぼ同義ですから、開発の自由度は極めて高くなります。その反動として、相対的に高コストとなりがちで、リソースの自由な増減も難しくなっています。

日本の企業は、比較的クローズドなシステムを好むとされ、実際にプライベートクラウドを手がけるデータセンター事業者は数多くあります。IDC Japanの調査によれば、2014年の国内プライベートクラウド市場規模は6,196億円で、前年比42.4%の増。その5年後の2019年には、約3倍の1兆8,601億円に達すると予測しています。この伸び率を見る限り、パブリッククラウドがいかに世界を席巻しようとも、日本に限ってみれば、プライベートクラウドは確固たる市場を確立していくでしょう。

クラウドの在り方は、国ごとの文化や技術によっても違う

近年は文化・技術などの面でグローバル化が進んでいるとはいえ、それでもやはり“お国柄”はあります。それを「ガラパゴス化」と断じるのは簡単ですが、人々が地道に積み上げてきたもの──惰性ではあったかもしれませんが──を捨て去ることはできません。

例えば自動車の通行方向。米国や欧州主要各国は右側通行(左ハンドル)であり、日本のような左側通行(右ハンドル)は世界的にみて少数派です。工場での生産性、在庫点数の縮減を優先するのであれば、日本も右側通行にすべきかもしれません。ですが、道路の改装コストを考えれば、さすがに無謀な発想でしょう。

ボーダーレスのインターネットとはいえ、それを支えるのは1人1人の人間です。日本でプライベートクラウドが重視されるには、それなりの理由があるわけです。もともと地震が多く、2011年に東日本大震災を経験した日本であれば、サーバーの分散配置に対する切迫度は、諸外国と比べても高いはずです。

さらに言えば、技術的な事情もあります。残念ながら、日本国内でも標的型サイバー攻撃は猛威を振るっており、インターネットは必ずしも100%安全な世界ではありません。しかし、もしソフトウェアの改善によって脅威が減ったら? 新発明によってストレージ価格が20分の1になったら? まだ見ぬ第6世代移動通信システムが規格化されて真の意味でのデータ定額が実現したら? ──ネットワーク環境は大きく変わり、クラウドに求められる要件も当然異なってくるはずです。

新技術をどこまでフォローすべきなのか?

このように、IT技術は決してそれだけで完結するものでなく、地域の文化であったり、ハードウェア技術の発展度とも相関関係にあったりします。特に、最先端技術だからといって、実際のシステム利用者の意向を無視してまで導入を急ぐのは得策ではありません。使いやすいシステムを構築するための一助──、それこそがIT技術の本質です。

例えば、個人・法人どちらにも知名度の高いクラウドサービスのDropboxは、そのストレージインフラに「Amazon S3 (Amazon Simple Storage Service) 」を使っていました。しかし2016年3月、保存されているユーザーデータの約9割を新規設計の自社インフラへ移行したと発表しました。

Dropboxのユーザー数は5億を超えるといいますから、おそらくその規模ではパブリッククラウドよりも自前のインフラを組んだ方が、コスト面でもシステム設計の面でも有利という判断があるのでしょう。もちろん、従業員5人のベンチャーが「Dropboxのまねをして今すぐ自前でネットワークを作ろう!」なんて考える必要は全くありません(少なくとも2016年では)。

クラウドを一切使わず、オフィスの片隅にサーバーを置いてのオンプレミス運用にこだわるという方向性もあります。パブリッククラウド、プライベートクラウド、さらにその二つを組み合わせた「ハイブリッドクラウド」などなど……今のビジネス事情に最適なサービスはどれなのか。世界の潮流を意識しながらも、見定めていきましょう。

協力メディア

クラウド Watch (http://cloud.watch.impress.co.jp/)

「数字で理解するテクノロジーの進化と真価」協力予定メディア

ビジネス・IT系のメディアとの「数字」を切り口にしたコラボレーション記事です。ご期待ください。

東洋経済オンライン/JBpress
12月上旬に公開予定

プレジデントオンライン/JBpress
1月中旬に公開予定

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