2016年、世界の電子商取引の総売上額は?

答え:1兆9,150億ドル

1兆9,150億ドル。これは米国の調査会社であるeMarketerが発表した2016年の世界の電子商取引(以下、EC)の総売上予測額だ。スマートフォンでの購買も増え、オンラインショッピングはもはや当たり前の姿になりつつある。小売業の世界では、いま何が起きているのだろうか。(東洋経済オンライン/JBpress特約)

[2016年12月 5日公開]

世界的に増えつつある小売業のEC化率

1兆9,150億ドルという数字には、チケットや飲食の売り上げは含まれない。純粋にECの物販売上だ。ただし、イーベイやオークションサイトなど消費者間取引分の金額も含まれている。全世界の小売業による売上高は22兆490億円だから、小売業全体に占めるECの売上比率、つまりEC化率は既に8.7%にもなり、さらに大きくなり続けている。2015年は7.4%から1.3ポイント増えた、つまり1年で18%弱も伸びたことになる。

この傾向は日本でも変わらない。経済産業省の「電子商取引に関する市場調査(平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備)」の報告書によれば、2015年のEC市場(B to C)の物販系分野の売り上げは7兆2,398億円。小売業全体に占める比率(EC化率)は4.75%で、伸び率は年6.4%だ。世界に比べると比率はまだ小さいが、小売業全体の売り上げがほぼ横ばいで推移していることを考えると、この比率はますます高まっていくと予想される。

ECの売り上げが伸びていることは、誰もが実感していることだろう。パソコンだけでなく、スマホから購買する消費者も増えている。電車の中やカフェでもインターネットショッピングが普通に行われるようになった。ECの広がりはライフスタイルを変え、小売業の構造も変えようとしている。

こうした変化を生み出し、牽引してきたのが世界最大のEC企業、アマゾン(正式にはamazon.com)だ。アマゾンがどのように小売業界に変革をもたらしてきたのかを見てみよう。

スペースに縛られず、無制限に品ぞろえできるEC

アマゾンが設立されたのは1994年7月5日。創業者は会長兼CEO兼社長のジェフ・ベソス氏。1964年生まれの52歳で、現在の個人資産は5兆円を超える。プリンストン大学卒業後、金融機関でトレーディングシステムの開発に従事した後、ヘッジファンドに転職。インターネットの可能性の大きさに気づいて創業に踏み切った。

設立当初のアマゾンのビジネス形態は“インターネット書店”だった。競争相手はリアルな店舗を展開する大規模書店である。アマゾンはインターネットという、「リアルな展示スペースという限界のない」空間を活かし、品ぞろえで勝負した。その際のキーワードは「ロングテール」だ。

書店では、面積当たりの回転率が収益性に直結する。売れない本は置きたくない。どの本を何冊、どう並べるかが、売り場の担当者の腕の見せ所だった。

一方でサイバー空間の中の書店であるアマゾンは、スペースの制約を受けずに販売できる。注文を受け付けるのはアマゾンだが、本を消費者に届けるのは、出店している出版社や書店だ。だからアマゾンは1年に1冊しか売れない本でも販売できる。

このビジネス構造は、一つの売り上げが小さくても全体としては大きな売り上げに繋がることから、恐竜の長い尻尾になぞらえて“ロングテール”と言われる。ロングテールというECサイト特有のビジネス構造は、取扱商品の種類や数が増えた今も基本的に変わらない。物理的なスペースの制約を受ける小売店に対して、品ぞろえの制限がないアマゾンには機会損失のリスクはない。

実店舗を構える小売業の雄と言えばウォルマートだ。売り上げ約50兆円を超える超巨大企業である。だが、ウォルマートのような巨大企業であっても、一つの店舗に置ける商品には限りがある。人気商品であれば欠品する可能性も高く、そこに機会損失が生まれる。

ただし、店舗形態の小売業には、ECでは太刀打ちできない強みがある。それは店員による接客である。

顧客の顔を覚え、過去の購買履歴や外見や言動を参考に気に入りそうなものを勧める。それが店員の販売力であり、販売力の強化は顧客との関係性を深め、売上拡大につながると、これまで信じられてきた。

アマゾンはこの“販売力”という領域でも革新的な取り組みを展開する。過去の購買履歴から消費者が興味を持ちそうな商品をお勧めする「レコメンデーション」機能がそれだ。今では当たり前になった機能だが、アマゾンが始めたときは大きなインパクトがあった。この仕組みを支えるレコメンデーションエンジンは、アマゾンの競争優位を確たるものにした。

さらにレコメンデーションは、マーケティングの全く新しい領域を切り開いた。ビッグデータのマーケティングへの適用、つまり、デジタルマーケティングの世界だ。デジタルマーケティングへのアプローチはアマゾンから始まったと言えるだろう。

物流革命というもう一つの柱

アマゾンのビジネスが画期的だったのは、ネットの中だけではない。革命的とも言える物流への取り組みが、そのビジネスを発展させた。

買いたくなったら少しでも早く手に入れたいと思うのは、消費者の性だ。商品を持ち帰ることができる店舗はその点でアドバンテージがある。いくら一瞬のうちに買い物を成立させることができても、商品を届けるのには物理的な輸送が必要になる。到着するまで何日も待たされるようでは、購買意欲が削がれてしまう。

そこでアマゾンは、効率的な物流網の構築に徹底的に注力した。各地に倉庫を設け、ITをフル活用して出荷までのスピードを速め、さらに物流業者との連携を強化した。そのための投資はアマゾンにとって大きな負担となり、当初は赤字経営が続いた。経営危機を囁かれることもあった。それでもアマゾンは投資を止めなかった。店舗を持たないアマゾンにとって、物流革命は、成功するために絶対に欠かせない条件だったのである。

こうした物流革命の取り組みは大きな成果を上げる。配送までの期間は驚くほど短縮され、今では当日に届くものもある。しかも「プライム会員」になれば、送料は無料である。

アマゾンの数々の革新的な取り組みは、他のECサイトにも大きな刺激と影響を与えた。ECという業態は目覚ましいスピードで進化し、既存の小売業にとっては大変な脅威となっている。店舗で商品を確認してネットで購入する“ショールーミング”という購買スタイルが広がったことで、大規模チェーンが赤字に転落するケースも珍しくない。

ITは小売業のビジネス構造を根底から変えた。その衝撃は1兆9,150億ドルという数字では言い表せないほど大きい。

協力メディア

東洋経済オンライン/JBpress

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