2020年、3Dプリンターの世界市場規模は?

答え:289億ドル

IT技術は数あれど、その分かりやすさという意味で「3Dプリンター」は屈指の存在でしょう。実際に触れられ、動かしたり遊んだりできる“モノ”を自宅の機械で作れる。子供でなくともワクワクしてしまいます。その3Dプリンターが日本で特に注目を集めたのは2014年のことでした。それから約3年。現状はどうなっているのでしょうか?(クラウド Watch特約)

[2017年 2月 3日公開]

世界規模では順調に成長中~2020年までに市場規模は2倍へ

IT関連の統計でおなじみの米IDCは2017年1月、3Dプリンターに関する調査を発表しました。それによると、2020年に予測される3Dプリンター関連市場の世界規模は289億ドル。1ドル115円換算で3兆3235億円に達します。

一方、直近の実績ですが、2016年は132億ドル(1ドル115円換算で1兆5180億円)となる見込み。つまり、今後4年で倍以上の成長を遂げる計算になります。

この調査では2015年から2020年までの市場実績・予測をとりまとめていますが、これを地域別に見た場合、米国だけで全体の約4分の1を占めています。これに西ヨーロッパ、日本、アジア・太平洋地域を含めると、その割合は50%を超えます。いわゆる先進国に加え、中国を含む製造業が盛んな地域で強いニーズがあることが伺えます。

産業用試作品の制作で活躍

現時点での3Dプリンターの主要用途は、ズバリ製造業です。中でも、試作品の制作に効果を発揮するとされています。

開発中の商品の外観を、3DモデリングによるCADデータとして仕上げていく過程では、かつては粘土や木で完成見本を作っていました。当然、人間が実際に手を動かして作るわけですから、時間も手間もかかります。ここを3Dプリンターで置き換えるのです。

一つの商品が世に出るには、企画・開発・設計・製造まであらゆる立場の人間が携わります。その関係者たちが会議で意見のすりあわせを行う中で、試作品・完成見本の存在は決定的に重要です。精度の高い試作品に触れることにより、図面の上では分からなかった問題も浮かび上がるでしょう。

近年は、時間や出張費の節約を目的にビデオ会議も普及してきています。試作品を手作りしていた時代では、遠方の会議参加者がそれぞれ同じ試作品を手にすることも難しかったはず。これに対して、設計データをオンラインで共有し、双方の拠点に設置された3Dプリンターであらかじめ出力すれば、議論もさらに円滑化するでしょう。

出力方式いろいろ、カラー&金属出力の品質も向上

3Dプリンターと一口にいっても、その方式は実に多種多様。紙に印刷するプリンターにトナー式やインクジェット式があるように、3Dプリンターもまた、用途や目的に応じて、方式や素材の種類を選べます。

比較的身近な方式としては、熱溶解積層法があります。2014年前後、個人向けの低価格3Dプリンターの発売が相次ぎましたが、その製品の多くがこれを採用していました。糸(フィラメント)状の樹脂を熱で溶かし、文字通り積み上げていく方式です。

光造形法は歴史的に古く、産業用途でも一般的な方式です。材料となる液体の樹脂に紫外線を照射して、硬化させます。

また、材料粉末を焼き固める方法(粉末焼結積層造形法)も有名です。石膏はもちろん、それこそ金属粉を採用する例もあり、プラスチックとはまた違った質感の出力物を得ることができます。

このように、出力の方式あるいは材料素材によって、できあがるモノの質感は全く変わってきます。表面処理、強度、経年劣化への耐性といった要素はもちろん、プリント速度、そしてコストによっても、おのずと利用できる機材は変わります。

注意点として、特に産業用途で使われる3Dプリンターはそれ単体で利用できることはまれで、空調やガス管理など何らかの付帯設備を要します。また、カラー出力についても、実用レベルが年々高まっているようです。

日本国内市場、実は…?

日本国内の3Dプリンター市場ですが、統計上は意外な結果が出ています。前述のIDCの日本法人にあたるIDC Japanが2016年7月に発表したレポートでは、2015年の3Dプリンター国内市場は前年割れ。特に、3Dプリンター本体売上額は前年比マイナス32.5%(141億1100万円)。台数ペースでも前年比マイナス20.2%(7900台)だったのです。

ご記憶の方も多いとは思いますが、2014年は3Dプリンターの注目度が日本で特に高まった年でした。前年の2013年頃から、IT系のメディアを中心に3Dプリンターの話題が増加。10~20万円程度で購入できる、比較的パーソナルな用途の3Dプリンターの登場が契機だったと考えられます。

さらにさかのぼって2012年には、「MAKERS―21世紀の産業革命が始まる」という書籍の日本語翻訳版が出版されました。雑誌「Wired」の米国版編集長を長らく務め、「ロングテール」の概念を提唱したことで知られるクリス・アンダーソン氏の著書です。

同書はインターネット時代のモノづくり・製造業の在り方を指摘したもので、3Dプリンターによる個人レベルの製造業の可能性も示唆されていました。当時は「メイカームーブメント」という言葉も一部で話題となりました。

このほか、NHKの「クローズアップ現代」では、2013年3月に3Dプリンターが取り上げられました。こういった時代の妙もあり、2014年には3Dプリンターへの期待感が極めて高まっていました。

とはいえ、3Dプリンターは万能の存在ではありません。10万円前後の3Dプリンターともなれば、できることはおのずと限られます。まず、あまり大きなものは作れません。プリンターヘッドの可動範囲や、出力物を固定するための台のサイズが、低価格モデルではどうしても制限されてしまいます。

また、出力には相当の時間がかかります。チェスの駒ほどのモノを作るにしても、半日かかるのはザラ。出力設定を間違えて、その半日が無駄になった時の残念さといったら…。

IDC Japanのレポートでも、2014年は「3Dプリンターのブーム」だったと指摘。パーソナル用途では、期待と現実のギャップによる失望感から、またプロフェッショナル用途でも同年に投資が集中したことの反動で、2015年のマイナス成長につながったと分析しています。

産業界で確かな評価、品質向上で市場は拡大へ

個人向け製品への期待がしぼむ一方で、産業向け製品については堅調な成長が予測されています。IDC Japanでも2020年には3Dプリンター本体の国内市場が200億3200万円へ達するとみており、業者による出力代行サービス、保守サービス、材料供給サービスなど周辺ビジネスが活性化しそうです。

2017年の現時点においても、産業界では3Dプリンターが開発期間の短縮化などに大きな効果があるとの評価が大半です。3Dプリンターのメーカーや販売代理店のウェブサイトをのぞいてみれば、それこそ無数の導入事例が掲載されています。利用者の声を集めながら、製品はドンドン進化し、さらには3Dプリンターがあることを前提とした商品企画ないし販売も増えるでしょう。

今後、3Dプリンターと我々の関わりはどうなっていくでしょうか。最初のキーとなりそうなのが出力代行業者です。依頼者は3Dのデータだけを作成・入稿すれば、3Dプリンターをわざわざ買うほどのコストをかけずに成果物を手にできるわけですから、少量生産であればメリットは大きいでしょう。こういった業者は既に相当数ありますが、それこそ“街の印刷屋さん”くらいのレベルにまで増えれば、状況は変わってくるかもしれません。

例えば、名刺について考えてみましょう。名刺は、家庭用インクジェットプリンターを使って自分で印刷できます。しかし、その品質、使える紙の性質などから、現在でも業者に印刷してもらうケースが大半でしょう。かといって、オフセット印刷機を買う一般家庭はありません。

3Dプリンターも同じです。超高性能3Dプリンターが買えないのなら、その利用料を払って使わせてもらえばいい。アイデア次第で、3Dプリンターは個人にとっても身近なものになっていくでしょう。

協力メディア

クラウド Watch ( http://cloud.watch.impress.co.jp/ )

「数字で理解するテクノロジーの進化と真価」をもっと読む

記事と関連するソリューション・製品

  • 3Dプリンター

    3Dプリンター選びはどのような材料やプリント方式を使用すべきかなど検討項目が多く、手間がかかります。大塚商会なら豊富な実績を基にお客様の用途に合った最適な製品をご提案できます。

いまどきのIT活用のおすすめ記事

まずはお気軽にご相談ください。

製品の選定やお見積りなど、100万社ものお客様に支えられた多数の実績でお客様のお悩みにお応えします。まずはお気軽にご相談ください。

お電話でのお問い合わせ

【総合受付窓口】
大塚商会 インサイドビジネスセンター

0120-579-215(平日 9:00~17:30)

Webでのお問い合わせ

お問い合わせ

*メールでの連絡をご希望の方も、お問い合わせボタンをご利用ください。

ページID:00131515