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働き方改革を成功させる二つのアプローチ

ガラケーからスマホ導入へ。働き方を変えて生産性を向上

働き方改革への関心が高まっている。関連したセミナーは大にぎわい。関心の高さがうかがえる。しかし、一方でそれほど改革が進んでいないという指摘もある。その原因はどこにあるのだろうか。働き方改革の意味とその具体的なアプローチについてあらためて考えてみたい。 (東洋経済オンライン/JBpress特約)

[2017年 7月 7日公開]

生産性を向上させるために何が必要なのか

働き方改革が注目される背景にあるのは、日本の労働生産性の低さだ。日本生産性本部の発表データでは、日本の1人当たりの労働生産性は主要先進35カ国中22位(2015年)。しかも少子高齢化の影響もあって、今後の労働人口は減少していく。日本政府が「このままではいけない」と考えるのは当然のことだろう。

しかし、その原因を読み違えると対策自体が的外れになりかねない。そもそも日本人は働かない方なのだろうか。そんなことはない。日本人の勤勉さは昔から定評があるし、平均的な能力も高い。むしろ真面目で働き過ぎだと言われてきた。過労死は今も大きな社会問題だし、ブラック企業で長時間働かされている人も多い。それなのに諸外国に比べて労働生産性が低いと言われているのだ。それはなぜか。

働き方改革が進まない大きな原因は、経営者自身がこうした問いに対して明確な答えを持っていないからだ。1人当たりの労働生産性が低いままで働く時間を減らせば、業績は低下してしまう。そんな道を安易に選択することができないのは当然である。しかし、どうしたら労働生産性を上げられるのかが分からない。だから働き方にメスを入れられない。

労働生産性が低い原因が個々人の資質や能力にないとすれば、どこに問題があるのか。考えられることは二つ。まず、個々人の資質や能力を発揮できる環境がないこと。そして個々人の力をチームや組織の力に変える仕組みがないことだ。社員が生き生きと働いているのに会社の業績が悪いとしたら、それは経営者の責任である。労働生産性もまさに同じことではないだろうか。

自律させることで個々人の能力を引き出す

では、個々人の資質や能力が発揮できる環境とは何なのだろうか。これは逆に考えると分かりやすい。どういう環境だと、持っている資質や能力を発揮できないのか。

それは、資質や能力と関係ない理由で、本来の仕事ができない状態にあることだ。その理由としては、「本来の仕事ではないことに時間が取られている」「仕事をするための時間を捻出できない」といったことが挙げられる。

本来の仕事ではないことに時間が取られている状況の一例は、通勤にかかる時間だ。インターネット調査会社のマクロミルの調査では、東京都内に勤めるビジネスマンの半数以上が通勤に片道1時間かけているという。大阪府でも状況は同じようなものだ。往復で約2時間。満員電車で揉みくちゃにされて、本を読む余裕もないし、体力も消耗する。まさに本来の仕事ではないことに時間をとられている。

また、仕事をしたくても時間が捻出できない例としては、「年老いた親の介護のために家にいなければならない」「幼稚園の送り迎えで時間がとられる」といったケースも挙げられる。子育てのために、後ろ髪を引かれる思いで退職する女性は今も多い。中高年の社員が多い中堅・中小企業などでは、介護離職は深刻な問題だ。

こうした課題を解くキーワードは“自律”である。いつでも、どこでも仕事ができる環境を用意して、自分の責任において仕事をしてもらうことだ。どこでも仕事ができれば会社に出勤する必要もないし、育児や介護の時間を縫って仕事を片付けることもできる。

それを可能にするのが在宅勤務、テレワークである。テレワークによって個々人の持つ資質や能力の発揮を阻むさまざまな制約条件をクリアできる。

テレワークを成功させる三つの要素をそろえる

テレワークの導入に成功している会社には共通している前提条件がある。制度と風土とITがそろっていることだ。会社としては、在宅勤務ができるように就業規則を改正し、在宅でも公正な人事評価が行えるように基準を作らなければならない。会社が正式に在宅勤務を認めているという決意表明でもあるし、社員に安心してテレワークをしてもらうためにも必要だ。

この制度を生かすのが「会社に来なくても仕事ができる」という風土だ。それに立ちはだかるのが旧来の“管理”という考え方だ。管理という考え方は自律とは対極にある。上司は部下を監視するのではなく、部下の能力を引き出すことに発想を切り替えるべきだろう。その結果、風土も変わってくる。

その上でテレワークを支える仕掛けとしてのITが必要になる。構成要素としては、社内にいるのと同様に仕事をこなせるモバイルデバイス、いつでもインターネットにつながるネットワーク、そしてモバイル環境に対応したシステムの三つだ。

モバイルデバイスとしてはこれまでノートPCが代表的な存在だったが、ここに来て大きく様変わりしつつある。ノートPCよりもさらに持ち運びしやすいタブレットPCやスマートフォンが活用されるようになってきている。タブレットPCやスマートフォンには通信機能を搭載しているモデルもあり、ネットワークをあらためて用意する必要がないというのも魅力だろう。

またスマートフォンが日々の生活に浸透し、普段から使い慣れているということも大きい。会社としてあらためて使い方をトレーニングする必要もない。"Bring Your Own Device"(BYOD)という考え方を取り入れて、個人のスマートフォンを業務に使ってもらうというやり方もある。

組織として成果を上げる仕組みを用意する

ただし、モバイルデバイスを活用したテレワークには落とし穴もある。セキュリティ面でのリスクだ。それまでは社内だけに閉じていたシステムがモバイル環境に対応してインターネットにつながると、サイバー攻撃の対象となる。標的型攻撃を受ければ、社内の機密情報や蓄積されている個人情報が流出する恐れもあり、DDoS攻撃でサーバーがダウンさせられる危険性もある。

セキュリティを確保するための方策としては、セキュリティソリューションを導入して自社のサーバーやデータを守るというのが王道だろう。さらに、ここに来て全く違ったアプローチも増えてきている。それはパブリッククラウドの活用だ。パブリッククラウドであればサイバー攻撃もクラウド事業者が対応してくれる。

このパブリッククラウドの活用は、労働生産性を向上させるためのもう一つの必要条件である「個々人の力をチームや組織の力に変える仕組み」作りにもつながる。パブリッククラウド上のアプリケーションを連携させることで、個人の成果を必要な人たちと共有することができるし、コラボレーションもしやすくなるからだ。

多くのパブリッククラウドサービスもこのコラボレーション機能を充実させている。マイクロソフトでは、Office製品をクラウドで提供するだけでなく、Skypeやグループウェアソリューションと連携させて、テレビ会議やワークフローとの連動を実現している。テレビ会議を行いながら、企画書を作成して、そのまま必要な人たちと共有できる。

こうしたコラボレーション機能は、業務を効率化するだけでなく、組織全体の労働生産性を向上させる。テレワークによって引き出した個々人の資質や能力を、そのまま組織の成果に結びつけることができるからだ。

最近では、基幹システムを含めたシステム全体をパブリッククラウドに移行する企業も増えている。社員が自律的に仕事ができるテレワークの環境を提供し、個々人の能力を連動させてその成果を組織で共有するコラボレーションの仕組みを整備することで、日本の労働生産性は大きく向上する。それが働き方改革を実現することにつながるはずだ。

協力メディア

東洋経済オンライン/JBpress

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