ITここに歴史あり

ITの歴史をそれぞれの製品やサービスごとに振り返ります。

紙から紙に複写するコピー機がたどった道(中編)

コピー機は多様な技術開発が同時並行に進み、進化を遂げてきました。例えばトナーは当初湿式と乾式の2種類で技術を競い合いました。80年代にはコピー機はデジタル化し、機能が爆発的に増えました。白黒反転や輪郭抽出、翻訳機能を持つ製品まで登場しました。

[2016年12月 7日公開]

デジタル化で機能は百花繚乱、一時は画像処理もコピー機で

「80年代半ばくらいまで、商店街に『コピーサービス』って看板を掲げたお店があったんですよ」とリコーの轡田氏は言います。コピー機が普及する前は、コピー機を所有していればコピーをサービスとしてビジネスができていたということです。コピー機が普及するまでには多くの技術開発がありました。

(写真1)株式会社リコー テクノロジーセンター 画像システム開発本部 副本部長 轡田正郷理事 *内容は取材当時のもの(写真:加山恵美)

トナーだとかつては湿式と乾式の2種類がありました。最初に登場したのは湿式でしたが、しばらくは乾式と並行して開発が進みます。轡田氏は「乾式派と湿式派が互いに競い合っていましたね」と言います。

湿式は液体なので長く放置すると乾燥してしまうなど扱いが難しく、構造が複雑になりがちという難点がありました。一方、乾式はコントラストが強く出すぎてしまうなど、繊細な表現力を不得意としていました。両者ともに技術改良を進めつつも、最終的には乾式に一本化されます。

「2種類あると開発費が倍になってしまいます。しかし当初はどちらがいいか判断が難しいところでした。最終的には良質な画質を実現できること、コストや性能で有利となる乾式になりました」(斉藤氏)

技術的に大きく躍進したのはデジタル化です。リコーだと1987年発売「IMAGIO 320」が初のデジタル化を実現した製品でした。それまでのアナログ複写機と比較すると、デジタル化で多様な機能が実現可能となりました。そこから、コピー以外にもFAXやプリンターとしての機能も搭載できる複合機へと発展します。

(写真2)リコーのデジタル複写機「IMAGIO 320」。複写機はデジタル化によって多彩な機能を装備するようになり、飛躍的に進化した。またFAXやプリンターとしての機能も備えた複合機へと発展した

初期のデジタルコピー機は今では驚くくらい多機能でした。拡大縮小はもちろん、縦方向あるいは横方向だけ拡大縮小、白黒反転、輪郭抽出、網掛けなど、ちょっとした画像処理機能も搭載していたのです。

「デザイナーなど一部で好評だったんですよ」と斉藤さん。今ならパソコンですむ処理ですが、当時は80年代でパソコンはまだ普及しておらず画像処理機能には需要がありました。「書類を文字認識して単語単位で翻訳する製品もあったんですよ。ただし出力に時間がかかってしまってね(ほかに使いたい人が待たされてしまう)」と斉藤さんは笑います。

(写真3)株式会社リコー テクノロジーセンター 画像システム開発本部 開発支援センター センター長 斉藤穣氏(写真:加山恵美)

デジタル化でメモリーやハードディスクも搭載するようになりますが、80年代はまだメモリーは高級品でした。メモリーだけで数万円のコストがかかるほどでした。最大サイズ(A3)で緻密な書類だとメモリー不足を起こすことが分かり、急きょメモリーを増強して改良することもありました。

複合機となることで多様なインターフェイスが実装されていきます。パソコンのインターフェイスにRS-232CやSCSI、FAXには電話のアダプターなど。90年代前後はコピーの機能が百花繚乱の様相を呈した時代でした。(後編に続く)

執筆:加山恵美(フリーランスライター)
編集・文責:株式会社インプレス

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