文書作成に特化した専用機、日本語ワープロがもたらしたもの(前編)

1970年代まで、オフィスで文書を作成するとしたら手書きが当たり前でした。和文タイプライターを使えば、きれいで体裁が整った文書を作成できましたが、使いこなすのが難しいという難点がありました。その状況を変えたのが日本語ワープロです。

[2016年12月21日公開]

和文タイプから日本語ワープロへ

日本でオフィス文書を作成する機械の歴史を探ると、始まりに和文タイプライターがあります。今のように文字変換して漢字を選ぶのではなく、活字を1文字ずつ拾って紙に印字するものでした。2,000種ほど並んだ文字盤の文字配列を記憶する必要があり、和文タイピストという専門職がいたほどです(余談ですが、2016年放送のNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」では、ヒロインがまさにこの和文タイピストでした)。

和文タイプライターはきれいで体裁が整った文書を作るうえで役立つ機械でしたが、普通の人が扱えるものではありませんでした。そのため、オフィス文書もきれいに和文タイプライターで作ったものばかりではなく、手書きのものも混在していました。

この状況を一歩改善し、まず和文タイプライターを置き換えることを目指して登場したのが日本語ワープロの専用機です。1978年に東芝が業界初の日本語ワープロ「JW-10」を発表し、続けてシャープ、富士通といった大手電機メーカーが製品を発売しました。その流れの中でNECは、1980年に「NWP-20」を発売し、日本語ワープロ市場に参入しました。

NEC パートナーズプラットフォーム事業部 エグゼクティブ エキスパート 星野誠氏(写真1)は「私がNECに入社したのは1982年。当時NECが販売していた日本語ワープロは『文豪NWP-20N』でした。研修を兼ねて私も実務で利用しましたが、まだ日本語ワープロは新しい製品ジャンルだと感じていました」と述懐します。

(写真1)NEC パートナーズプラットフォーム事業部 エグゼクティブ エキスパート 星野誠氏 *内容は取材当時のもの(写真:加山恵美)

星野さんは文豪NWP-20Nの姿を「机と冷蔵庫のようなものでした」(写真2)と言います。自立設置型の本体があり、その隣に大型のレーザープリンター(今のコピー機に近いもの)がセットされていました。当初、和文タイピストが使用することを想定していたため、キーボードは、和文タイプライターの文字盤と同様のものが付いていました。英文タイプライターと同様のJIS配列キーボードを備えた製品もあったので、徐々に和文タイピストではない一般人も使用できるようになりました。

(写真2)NECの日本語ワープロ「文豪NWP-20N」。オフィスで使う机のような本体の横に、巨大なレーザープリンターが付いていた(提供:NEC)

作成した文書は紙に印刷するほかに、OHP(Overhead Projector)シートに直接印刷することもありました。80年代当時、プレゼンテーションの場では透明なOHPシートに描いたものをOHPで投影することが普通だったからです。OHPで投影する文書は手書きが多かったのですが、日本語ワープロで印字したものを投影すると皆が美しさに驚嘆したほどだといいます。

当時はパソコン向けの日本語ワープロソフトがまだ存在していなかったので、日本語できれいに文書を作る機械としては、先に挙げた和文タイプライターとワープロ専用機しかありませんでした。日本語ワープロの価格は当時で200~300万円。まだまだ高価なものでした。しかし紙に直接文字を打ち込んでいく和文タイプライターに比べると、日本語ワープロは過去のデータを再利用できるところが画期的でした。この再利用性は、オフィスの生産性を向上させました。

ただし文書を再利用しようとすると、日本語ワープロの処理性能が壁になりました。文書を再利用するために編集しようとすると、大変待たされたのです。作成した文書(データ)の保存先は8インチのフロッピーディスク。この読み書きが遅かったのです。また、機械としての性能もまだまだでした。星野氏は「(NECの)パソコンならPC-8000シリーズレベル」と説明します。

まだ大きく、高価で、動作が遅いものの、オフィスの文書作成という作業を和文タイピストによる専門的な仕事から、一般人にもできる仕事に変えたところから日本語ワープロの歴史と普及は始まりました。(中編に続く)

執筆:加山恵美(フリーランスライター)
編集・文責:株式会社インプレス

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