文書作成に特化した専用機、日本語ワープロがもたらしたもの(中編)

日本語ワープロは、オフィス文書の作成風景を変えました。しかし、登場直後から急速に普及したわけではありません。価格の高さゆえ、オフィスで共用する機器としてゆっくりと普及していきました。しかし、急激な低価格化がその流れを変えます。

[2017年 1月11日公開]

低価格化が進み、オフィスに欠かせない存在に

登場当初の日本語ワープロは大変高価だったため、当初は官公庁や大手企業しか使えないような高級品でした。オフィスにも浸透していきますが、従業員みんなで共用する機器という位置づけでした。

1980年代の初頭に、その流れを変える出来事が起きます。ワープロ専用機の低価格化です。富士通の「OASYS」シリーズが先行し、それをNECが「文豪」シリーズで追随しました。

(写真1)1982年発売の「文豪NWP-10N」。5年リースにすれば月額2~3万円で導入可能という安さで、中堅・中小企業にも浸透していった(提供:NEC)

NECは1982年に「文豪NWP-10N」(写真1)を100~150万円という価格で売り出します。前世代機のおよそ半分の価格です。5年リースにすれば月額2~3万円で導入可能となるので、大企業だけでなく中堅・中小企業にも普及が進みました。その当時のことを振り返って、「大塚商会さんには大量に拡販いただきました。感謝しております」とNEC パートナーズプラットフォーム事業部 エグゼクティブ エキスパート 星野誠氏(写真2)はにっこりと笑顔を見せてくれました。

(写真2)NEC パートナーズプラットフォーム事業部 エグゼクティブ エキスパート 星野誠氏 *内容は取材当時のもの(写真:加山恵美)

NECは文豪NWP-10Nで、価格を下げるだけでなく、本体サイズの縮小にも挑戦しました。前世代機は、本体がオフィスで使う机のような大きさでしたが、文豪NWP-10Nの本体は机の上に置ける「デスクトップ型」となりました。この本体にセットとなったのがドットインパクトプリンター。インクリボンを針でたたいて文字を紙へ転写するため、印刷するときの「ビビビビビ」という音が大きな特徴です。レーザープリンターに比べてかなり小さいので、本体とプリンターをオフィスの机に並べて置くことができるようになり、オフィスで働く一人ひとりの机の上にワープロ専用機を置くことも現実的になってきました。ディスプレイは黒い背景に緑の文字のグリーンディスプレイ。フロッピーディスクドライブは8インチでした。

さらに1984年に発売した「文豪5N」(写真3)は40万を切る価格で登場し、市場で躍進しました。星野氏は「トップの指示で(ライバル機種を追い抜くように)当初の予定価格を大幅に下回る価格に変更されました。あまりに安いので展示会では『プリンターは別売なのでしょう?』と言われたほどです」と笑います。

(写真3)1984年発売の「文豪5N」。プリンターまでセットで40万円を切る価格を実現し、業界に衝撃を与えた(提供:NEC)

NECがワープロ専用機の低価格化を実現できた大きな理由の一つに、ビジネスパソコン「N5200シリーズ」と文豪の部品の共通化を実現したという点が挙げられます。これで価格競争力を付けることに成功しました。さらに、N5200シリーズ譲りの高い性能も実現しました。

80年代前半、NECはワープロ専用機の低価格化を進め、オフィスへの導入を促進する一方で、野心的な製品の開発も進めていました。1982年に発売となる、音声で入力できるワープロ「VWP-100」です。当時NECは、音声認識で世界最先端の技術を有していたので、会長の肝いりで開発が進められたとのことです。音声で入力するワープロは、世界初の試みだったので、当時は大きな反響がありました。

ただし音声入力をするには単音節(1文字ずつ)で話さなくてはならないこと、話者の音声を事前に登録しておかなくてはならないこと、同じ人物が話していても時間がたつと認識率が下がることなど課題は少なくはありませんでした。魚市場などキーボードを触るのが困難で、一部の決まった単語しか使わない現場では役に立ちましたが、まだ話し言葉のペースで入力できるものではありませんでした。さらに450万ほどという価格がネックとなり、普及しないままに終わりました。

しかし技術は現代にも引き継がれています。星野氏は次のように説明します。「音声認識はパターン認識技術ですので、後の指紋認証や顔認証で役立っています。現在、マイナンバーカードを受け取るときはカメラで顔認証をしますが、あのシステムはNECが作ったものなのですよ」(後編に続く)

執筆:加山恵美(フリーランスライター)
編集・文責:株式会社インプレス

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