ITここに歴史あり

ITの歴史をそれぞれの製品やサービスごとに振り返ります。

「コンピューターを持ち運び可能に! ノートパソコンがもたらした革命」(中編)

1989年に発表した初代DynaBookは、「どこでも、自分のパソコンで」文書を作成することを可能にし、人々の働き方を大きく変えました。東芝は、その後も革新的な製品を開発していきましたが、1995年にパソコンの世界を大きく変える「事件」が起こります。Windows 95の登場と、インターネットの急速な普及です。この事件に対応するために、ノートパソコンはどのように変わっていったのでしょうか。

[2017年 2月 1日公開]

インターネット革命とノートパソコンの薄型化

1995年11月23日、パソコンの歴史に残る大きな出来事がありました。マイクロソフトがWindows 95を発売したのです。それまでもWindowsはGUI(Graphical User Interface)のカラー化や細かい改良を重ねて進化していましたが、Windows 95はそれまでのWindowsとは別物でした。最大の違いは、Windows 95がOSレベルでインターネット接続を想定しているという点です。Windows 95発売を契機に、インターネットが日常生活に浸透するようになり、時代は変わっていきました。

「Windows 95の発売解禁は日付が変わる午前0時でした。解禁前日、秋葉原では多くのパソコン販売店がWindows 95を午前0時に売り出すために、特別に営業時間を深夜まで延長したほどです。その晩はお祭りのようでした。パソコンメーカー各社も、解禁と同時にWindows 95をプリインストールした製品を発売すべく、準備していました。私たち東芝もその日はイベントを開催して盛り上げたものです」と当時を懐かしむのは、東芝クライアントソリューション 国内事業統括部 国内B2C営業本部 B2Cマーケティング部 部長の荻野孝広氏(写真1)です。

(写真1)東芝クライアントソリューション 国内事業統括部 国内B2C営業本部 B2Cマーケティング部 部長の荻野孝広氏 *内容は取材当時のもの(写真:加山恵美)

今でこそパソコンはインターネットに接続するのが当然ですが、当時はまだインターネットは一般的でなく、パソコン通信が主流でした。しかしWindows 95登場後は、普通の人たちがホームページを見るために、あるいは友達とメールでやり取りするためにインターネットに接続するようになったのです。そして、インターネット上の情報を取り扱うために必要なものとして、パソコンの普及も加速しました。

東芝はWindows 95に合わせてプリインストール機「DynaBook GT-R590」(写真2)を発売します。プロセッサーには当時世界的な標準となっていた「Pentium」を採用し、CD-ROMドライブも搭載した製品でした。

(写真2)Windows 95と同時に発売したプリインストール機「DynaBook GT-R590」

さらに1996年に東芝は世界が驚くような製品を発表します。手のひらに載るサイズのノートパソコン「Libretto 20」(写真3)です。荻野氏は「Libretto 20は、VHSビデオテープのサイズにWindows 95が動作するノートパソコンを収めよう! という目標で開発しました。そして、手のひらの上でパソコンを操作できるということも目指しました」と話します。

(写真3)手のひらサイズのノートパソコン「Libretto 20」。Windows 95が動作した

荻野氏が言うようにLibrettoはVHSビデオテープと同じくらいのボディにWindows 95が動作するパソコンが詰め込んでありました。Librettoを初めて目にした人はみな、その小ささに衝撃を受けました。荻野氏は当時をこう振り返ります。「この小ささをどう生かすのか、私たちも模索しました。Librettoユーザーを『リブラー』と呼び、『No.1リブラーは誰だ!』と題したコンテストを実施したこともありました」。

Librettoから始まった小型化の流れは、薄さを追求する流れに変わります。きっかけを作ったのはソニーでした。1997年10月に発売した「PCG-505(バイオノート505)」は、B5ファイルサイズで本体重量およそ1.35 kg、マグネシウム合金を採用した本体の厚さは23.9 mmと、「薄くて軽い」ノートパソコンとして爆発的なヒット作となりました。

 バイオノート505に対抗するために東芝は1998年7月、B5ファイルサイズの薄型ノートパソコン「DynaBook SS 3000」(写真4)を発売します。先行するバイオノートよりも高速なプロセッサーを搭載し、本体重量をおよそ1.19 kgまで絞りました。さらに、本体の厚さは19.8 mmとしました。これは当時としては世界最薄です。

(写真4)当時世界最薄となったB5ファイルサイズのノートパソコン「DynaBook SS 3000」

またこのDynaBook SS 3000に合わせて、A4ファイルサイズの薄型ノートパソコン「DynaBook SS 6000」、薄くて小さいノートパソコン「Libretto SS 1000」も発売し、東芝はノートパソコンの薄型化と軽量化に注力する姿勢を鮮明にします。

当時は、他社も薄型軽量ノートパソコンを発売し、激しい競争になりました。競争が進むことで、ユーザーは薄くて軽い、持ち運びやすいノートパソコンを容易に手に入れられるようになり、ビジネスバッグにノートパソコンが入るようになっていきました。(後編に続く)

執筆:加山恵美(フリーランスライター)
編集・文責:株式会社インプレス

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