「コンピューターを持ち運び可能に! ノートパソコンがもたらした革命」(後編)

インターネットが当たり前のものになり、インターネットにつながる道具としてパソコンは爆発的に普及しました。そして、ノートパソコンを持ち歩き、外出先で本格的に使いたいというユーザーの希望がどんどん強くなり、各メーカーが薄型ノートパソコンを発売しました。その後、ノートパソコンはさまざまな方向に向かって進化します。今回は最近のノートパソコンの進化について見ていきましょう。

[2017年 2月 8日公開]

テレビとの融合、スリム化と高性能の両立、そしてタブレットも

「東芝はノートパソコン開発にあたって、三つの流れを意識してきました」と語るのは東芝クライアントソリューション 国内事業統括部 国内B2C営業本部 B2Cマーケティング部 部長の荻野孝広氏です(写真1)。一つ目の流れは、新しいことに挑戦するという流れ、二つ目はDVDムービーやテレビ放送の再生など、エンターテインメントを重視した流れ、三つ目は前回説明した薄型ノートパソコンの流れです。

(写真1)東芝クライアントソリューション 国内事業統括部 国内B2C営業本部 B2Cマーケティング部 部長の荻野孝広氏。左側は世界初のノートパソコン「DynaBook J-3100SS001」、右側は最新のタブレットパソコン「dynaPad N72」 *内容は取材当時のもの(写真:加山恵美)

この三つの流れは東芝に限ったものではなく、ノートパソコン開発に取り組む国内メーカーはおおよそこの三つの流れに乗った製品を開発していました。その中でも一つ目の「新しいことに挑戦する」という点では、東芝は印象に残る実績を残しています。世界初のノートパソコンであるDynaBook J-3100SS001、手のひらに載るほどの小型化を果たしたLibrettoなど「世界初」となる製品です。

二つ目のエンターテインメントを重視した製品としては、1997年発表の「DynaBook TECRA 750DVD」があります。世界で初めてのDVD-ROMドライブ搭載機でした。この流れを受け継ぐ製品としては、2004年発売のTVチューナー内蔵ノートパソコン「Qosmio」や、2006年に発売した世界初の地上デジタルTVチューナー内蔵ノートパソコン「Qosmio G30」(写真2)などが挙げられます。テレビ放送を見ることを可能にしたQosmioシリーズでは、液晶の輝度を大きく上げて、テレビ放送の鮮やかな画像が映えるようにしたといいます。

(写真2)「Qosmio G30」。世界で初めて地上デジタルTVチューナーを内蔵したノートパソコンとなった

三つ目は1998年のB5ファイルサイズの薄型ノートパソコン「DynaBook SS 3000」から発展した流れです。薄さや軽さを追求しつつも、外装の強度を損なわないように工夫を重ねてきたと荻野氏は語ります。例えば、外装に使うマグネシウム合金は、一定の厚さとはせず、強度が必要なところは厚めに、さほど強度が必要ないところは薄く作ることで、堅牢で壊れにくく、かつ軽い本体を開発していったとのこと。

そういった開発にかける努力が形になったのが2007年発売の「dynabook SS RX」です(東芝は2003年から製品表記を「DynaBook」から「dynabook」に変えました)。光学ドライブを搭載しながら本体最薄部をおよそ19.5 mmまで絞り込み、本体重量を1 kgほどに抑えました。

これまで薄型ノートパソコンでは、光学ドライブはあきらめなければなりませんでしたが、この製品は薄くて、軽くて、しかも光学ドライブ内蔵という画期的な製品となりました。dynabook SS RXは、2008年には当時としては大容量となる128GバイトSSDを搭載し、処理性能を大幅に引き上げました。

2010年6月には、光学ドライブを内蔵しながらディスプレイ13.3型ワイドに大型化し、同一サイズのディスプレイを搭載するノートパソコンの中では世界最軽量となるおよそ1.25 kgに仕上げた「dynabook RX3」を発売しました。

荻野氏は「この時期は、ノートパソコンの性能を上げながら、本体をより薄くするためにさまざまなことに取り組んでいました。結果として、本体の外装となるマグネシウム合金の板を細長いリブ(突起)で支えることになったのですが、このリブが描く模様を六角形の『ハニカム構造』(写真3)とすることで、最も効率よく外装の強度を確保できました」と工夫の成果を語ります。

(写真3)「dynabook RX3」の外装の裏側。ハニカム構造(六角形)のリブがマグネシウム合金製の板を補強している

最近は、ノートパソコンにもタブレット化の流れが押し寄せてきています。Windows 10でようやくタッチ操作が現実的なものとして使えるようになり、その機能を利用した製品が各社から登場しています。東芝も2013年にはキーボードの付け外しができるタブレットパソコン「dynabook V713」を発売します。この製品はタブレットと従来型ノートパソコンの両方の良いところを持たせた製品となりました。

キーボードを付け外しできるタブレットというコンセプトは最新製品にも生きています。2015年10月発売の「dynaPad N72」は、世界最薄(6.9 mm)、最軽量(569 g)の本体にキーボードを付け外しできるようになっています。ノートパソコンは進化した結果、キーボードから離れ、人間の手書き入力を受け付けるようになりました。人間に一歩近づいたといったら言い過ぎでしょうか。

アラン・ケイ氏の構想通り、ノートパソコンは人間の思考能力を支え、日常生活にも変化を与えました。これからどのような進化を遂げていくのでしょうか。

執筆:加山恵美(フリーランスライター)
編集・文責:株式会社インプレス

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