ハードディスクドライブの進化がパソコンにもたらしたもの(前編)

コンピューターには電源を切った後もデータを記録しておく記憶装置が欠かせません。中心となるのはHDD(ハードディスクドライブ)です。最初はテープやフロッピーディスクドライブがあり、後にHDDが登場しました。HDDは大容量化を果たし、耐障害性を高めながら現在に至ります。

[2017年 3月 8日公開]

OSやアプリケーションをすばやく起動できるように

パソコンは、電源を切った後でもデータを記憶しておく装置(二次記憶装置)としてハードディスクドライブ(HDD)を搭載しています。最近は薄型ノートパソコンなど、HDDの代わりにSSD(ソリッドステートドライブ)を搭載する製品が増えましたが、今でもパソコンの二次記憶装置といえばHDDです。

パソコンの二次記憶装置としてHDDを使うようになったのは、1980年代中頃からです。それまでのパソコンでは、「カセットテープ」を使っていました。音楽を記憶する媒体として記憶している方も多いでしょう。カセットテープは磁気のテープでできており、プログラムなどのデータを記録することができました。

NECパーソナルコンピュータ 資材部 キーパーツ技術・品質部 マネージャー 佐藤義和氏(写真1)はカセットテープを使っていた当時を思い出して、「カセットテープでは、ランダムアクセスはできませんので、必要なデータだけを拾い読みするということができませんでした。カセットテープからデータを読み出すときは最初から最後まで通して読み出さなくてはならなかったので、時間がかかりました」と語ります。また、何度も使用するとテープが伸びてしまい、データを読み出せなくなることもあったそうです。

(写真1)取材にお答えいただいたNECパーソナルコンピュータの皆さん。左側が資材部 キーパーツ技術・品質部 マネージャーの佐藤義和氏。中央が資材部 キーパーツ技術・品質部 部長の安田秀彦氏。右側が資材部 キーパーツ技術・品質部 マネージャーの沢田明彦氏 *内容は取材当時のもの(写真:加山恵美)

カセットテープに頼るユーザーがまだ多かったころ、フロッピーディスクが登場しました。これによりランダムアクセスが可能となり、必要なデータだけを拾い読みすることや、必要な部分だけを書き換えるといったことができるようになったため、データの読み書きにかかる時間が短くなりました。パソコン用として登場した初めてのフロッピーディスクは大きさ8インチのものでした、しばらくすると5インチのものが登場しました。どちらも薄い磁気ディスクを薄い保護ケースに包んだ、ペラペラとした作りのものでした。それでも発売当初は10枚入りの箱で1万円するほど高価なものだったのです。

フロッピーディスクというと、外装が硬いプラスチックになっている3.5インチタイプを思い出す方が多いことでしょう。実際、フロッピーディスクの中では、3.5インチのものが最も普及しました。記憶容量は1枚当たり720KBまたは1.44MBでした。

カセットテープもフロッピーディスクも持ち運びが可能でしたが、記録容量はまだまだごく少ないものでした。そこで、まとまった容量のデータを記憶し、高速で読み書きできる記憶装置として登場したのがHDDです。ただし、パソコンに内蔵、あるいはパソコンの隣に据え置いて使うもので、カセットテープやフロッピーディスクのように持ち運ぶことは原則としてできないものでした。

日本初のHDD搭載パソコンが登場したのは1984年9月。ロサンゼルスオリンピックがあった年です。柔道の山下泰裕さんや体操の森末慎二さんなどが金メダルを取ったことをご記憶の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

初めてのHDD搭載パソコンとなったのは、NECの「PC-9801F3」(写真2)。HDDの記録容量は10MB。そのほかに5インチのフロッピーディスクドライブを搭載していました。HDDを搭載していない機種に比べて7万円ほど高価でした。現在のパソコンが搭載するHDDの記録容量と価格を考えると、「たかだか10MBのために7万円!」と驚く方もいらっしゃるかもしれませんね。今では10MBの10万倍、1TB(テラバイト)のHDDが6,000円ほどで買えるようになりました。

(写真2)日本初のHDD内蔵パソコン「PC-9801F3」(提供:NEC)

HDD登場前は、パソコンを起動させるときに、OSやアプリケーションをフロッピーディスクから読み出す必要がありました。ディスク1枚では足りないことも多かったので、何枚もディスクを入れ替えて読み出したり、書き込んだりしていました。

HDDはそのようなパソコンの使い方を変えました。記録容量10MB程度とはいえ、複数のフロッピーディスクに記録してあるOSやアプリケーションをまとめて記憶しておくことができるようになったのです。HDDを使えば、パソコンの電源を入れて少し待っているだけでOSやアプリケーションを使う準備が整うようになりました。しかも、フロッピーディスクに比べて読み書きの速度がかなり速いので、パソコンの使い心地を大きく変えました。

今から考えると、ほんのわずかな容量のデータしか記録できないフロッピーディスクにOSやアプリケーションを収めることができたなんて、信じ難いかもしれません。しかし当時はOSもアプリケーションも作りが簡素だったので、プログラムサイズがそれほど大きくありませんでした。そのため、フロッピーディスクを複数枚使えば、OSやアプリケーションを格納することができたのです。当時主流のOSはMS-DOS。フロッピーディスク1枚に収まるサイズでした。なお日本語ワープロソフト「一太郎」が登場したのは1985年でしたが、これも登場当初はフロッピーディスクに記録した形で流通していました。

HDDが登場したことによって、パソコンが内蔵する高速な二次記憶装置からOSやアプリケーションを起動するという使い方が可能になり、パソコンの使い方が変わり始めました。また、それまで主力の記憶装置として活躍していたフロッピーディスクドライブは、持ち運ぶデータや他人に渡すデータを記録する装置という役目を担うようになっていきました。(中編に続く)

執筆:加山恵美(フリーランスライター)
編集・文責:株式会社インプレス

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