ハードディスクドライブの進化がパソコンにもたらしたもの(中編)

ハードディスクドライブの登場は、パソコンの使い方を大きく変えました。しかし、登場当初はとても高価だったのでなかなか普及はしませんでした。そんな中でも大容量化と低価格化は着々と進み、ハードディスクはパソコンに当たり前に備わっているものになっていきます。すると、パソコンの使い方にも変化が現れ始めました。

[2017年 3月15日公開]

新技術が登場するにつれ、ユーザーが持つデータはどんどん大きく

最初のハードディスクドライブ(HDD)搭載パソコンが登場したのは1984年でしたが、まだ高価で一般に普及するには時間がかかりました。90年代中ごろまで、HDDは簡単に手の届く価格にはならなかったので、多くのユーザーがフロッピーディスクドライブからデータを読み出していました。とはいえ、HDDの大容量化と低価格化が状況を変えていきます。

長らくストレージデバイスに携わってきた、NECパーソナルコンピュータ 資材部 キーパーツ技術・品質部 部長 安田秀彦氏(写真1)は「倍々で(容量が)増えていきました」と述懐します。日本初のHDD内蔵パソコンが搭載していたHDDは記録容量10MBでしたが、20MB、40MBと新機種が登場するたびに記録容量は倍々で大きくなっていったのです。

(写真1)NECパーソナルコンピュータ 資材部 キーパーツ技術・品質部 部長の安田秀彦氏 *内容は取材当時のもの(写真:加山恵美)

歴史を振り返ると、HDDをはじめストレージの記録容量が大きくなっていくペースに合わせるように、ユーザーが作り出してHDDに保存するデータのサイズも大きくなっています。広い部屋に引っ越しても、すぐに荷物で一杯になってしまうという現象にどこか似ていますね。

1992年にはWindows 3.1が登場しました。インテルの新しいプロセッサーの能力を引き出して処理性能を大きく向上させ、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)の設計を一新したOSです。MicrosoftのWindowsとしては初めての大ヒットとなりました。しかし、この頃になるとパソコンを起動するたびにOSをフロッピーディスクから読み出すという使い方は事実上不可能になってきました。機種によって多少の違いはありますが、PC-9801シリーズ向けのWindows 3.1の大きさは、フロッピーディスク24枚ほどにもなっていたのです。そのような背景があって「Windows 3.1のころから(HDD搭載モデルの売れ行きに)火がつき始めました」と安田さん。NECも、1993年5月にはWindows 3.1をプリインストールしたパソコンを数機種発売しました(写真2)

(写真2)NECが初めて発売したWindows 3.1プリインストールパソコンのうちの一つ「PC-9821Ap(通称:98MATE)」(提供:NEC)

さらに1995年にはWindows 95が登場し、Windows 3.1を大きく上回る大ヒットとなりました。「インターネット接続」という新しい体験を求め、多くの人がパソコンを買い求めたのです。ユーザーはインターネットにアクセスし始めると、Webブラウザーでインターネットページを見始め、さらに電子メールをやりとりするようになりました。電子メールには画像ファイルを添付して送受信することもありました。言うまでもありませんが、メール本文のテキストと比べたら画像データは格段に大きなものです。メールのやりとりを繰り返すうちに、HDDを数GB使ってしまったという人も多いかと思います。

Windows 95が登場した頃は電話線を使ったダイヤルアップ接続が主流でしたが、2000年ごろからADSLや光ファイバーの常時接続が急速に普及し、インターネットでやりとりする情報の量はどんどん大きくなっていきました。当然、メールのやりとりやWebページのブラウジングで消費するHDD容量も大きくなっていきます。

周辺機器の発達も、ユーザーが扱うデータ量を大きくさせています。例えばデジタルカメラ。登場当初の製品は画質も低く、画像ファイルのデータ量もそれほど大きくありませんでしたが、イメージセンサーの画素数がどんどん増大し、デジタルカメラが生成する画像ファイルのデータサイズはどんどん大きくなっていきました。

さらに、デジタルカメラの記憶媒体であるフラッシュメモリーの記録容量がどんどん大きくなっていき、ユーザーは高画質な写真を何百枚も撮影して、パソコンで管理するようになりました。写真の枚数が多すぎて、パソコンに転送しようにも、パソコンのHDDに十分な空きがないという経験をされた方もいらっしゃると思います。

また、携帯音楽プレーヤー、特にAppleの「iPod」の登場も、ユーザーが扱うデータ量の増大を後押ししました。それまで、携帯音楽プレーヤーといえば携帯型CDプレーヤーや携帯型MDプレーヤーが主流でした。この種のプレーヤーは、パソコンがなくても音楽を楽しめるようになっていましたが、一度に楽しめる楽曲数はCDやMDの記録容量の制限を受けていました。CDもMDも記録容量は、1枚につきアルバム1枚が入る程度のものです。たくさんのアルバムを楽しみたいと思ったら、アルバムの数だけメディアを持ち出す必要がありました。

そのような状況を変えたのがiPodでした。iPodは本体にハードディスクを内蔵しており、アルバムにして1,000枚以上の楽曲を記録することができました。ユーザーは自身が持っている音楽ライブラリーをまるごと持ち歩くことができるようになったのです。

そして、iPodを使うときに欠かせないのがパソコンです。iPodに楽曲を記録するには、パソコン上の音楽プレーヤーソフトを使って、パソコン上に楽曲のライブラリーを作る必要があったのです。パソコン上にライブラリーを作ってから、iPodにライブラリーを転送することで、iPodで音楽を楽しめるという流れでした。

こうして、iPodなどの携帯音楽プレーヤーを使う人は、パソコンに無数の楽曲データを取り込むようになりました。この楽曲データを記録する場所もHDDです。アルバム1,000枚以上の楽曲データを持っている人などは、楽曲データがHDDの記録容量を圧迫していたということもあるでしょう。

Windows、メール、Web、デジカメ、音楽など、ユーザーが扱うデータは新しい技術の登場とともにどんどん大きくなっていきました。すると当然、ユーザーはより大容量のHDDを求めるようになりました。(後編に続く)

執筆:加山恵美(フリーランスライター)
編集・文責:株式会社インプレス

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