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ハードディスクドライブの進化がパソコンにもたらしたもの(後編)

ハードディスクドライブは進化を続けて、記録容量をどんどん増やしていきます。ユーザーもより大容量のものを求めていきますが、ノートパソコン向けのハードディスクドライブには、記録容量拡大のほかにも課題があります。

[2017年 3月22日公開]

ノートパソコン向けHDDが向き合う問題

前回は、写真や音楽のデータがハードディスクドライブ(HDD)の記録容量を圧迫し始めたというお話をしました。この流れは、動画をパソコンで扱うようになってからいよいよ加速します。動画ファイルのデータサイズは写真や音楽よりもさらに、はるかに大きいものです。ビデオカメラで家族旅行の様子を記録し、そのデータをパソコンに転送して動画を編集したという方もいらっしゃると思います。動画をパソコンで編集するには、動画ファイルをいったんHDDに記録しなければなりません。動画編集を楽しむために外付けのHDDを増設したという人もいることでしょう。

さらに、テレビ番組を録画する機能を備えたパソコンが登場すると、より大容量のHDDが必要になってきました。好きな番組を好きなだけ録画するには、とにかく大容量のHDDが必要になるからです。

テレビ番組を録画できるパソコンはあまり広く普及していませんが、HDDにテレビ番組を録画する専用装置、つまりHDDレコーダーが登場したことで、HDDにテレビ番組を録画するということが当たり前のことになってきました。NECパーソナルコンピュータ 資材部 キーパーツ技術・品質部 部長 安田秀彦氏(写真1)は「HDDレコーダーが『HDD』の知名度を高めたと思います」と話しています。

(写真1)NECパーソナルコンピュータ 資材部 キーパーツ技術・品質部 部長の安田秀彦氏 *内容は取材当時のもの(写真:加山恵美)

HDDの進化というと、大容量化ばかりに注目が集まりがちですが、耐衝撃性を高めるための進化も見逃せません。特に、ノートパソコンに搭載するHDDにはなくてはならない技術です。

ノートパソコンの薄型軽量化が進み、多くの人がノートパソコンを持ち運ぶようになりました。しかし、ノートパソコンを持ち運んでいる人の多くは、ノートパソコンの中にHDDというデリケートな機器が入っていることを意識していません。そのためにトラブルがあちこちで発生しています。

HDDの内部では、ガラスなどの硬い素材でできたディスクが高速回転しています。このディスクには磁性体という磁気を帯びる物質が塗ってあります。この磁性体は磁石のようなもので、N極とS極の両極を持っています。磁性体上の極の方向を切り替えることで、データを記録するのです。データを読み取るときは、磁性体の極の方向を検知します。

データの読み書きに使うのが「ヘッド」です。ヘッドはディスク上を行き来して、目的の部分のデータを正確に読み書きします。このヘッドはディスクからごくわずかに離れているのですが、その間隔は10nm(ナノメートル)もありません。インフルエンザウイルス(直径80-120nm程度)でさえも、その隙間に入り込むことはできないのです。

ここで問題になるのが、ヘッドとディスクが接触するだけでHDDが故障する可能性があるということです。ヘッドとディスクが接触すると、ディスク上に大きな傷を作ってしまったり、ヘッドを破損させてしまったりすることがあります。それほどHDDは精密かつ繊細な部品なのです。

ヘッドとディスクが接触するきっかけとなるのは外部からの衝撃です。例えば、ノートパソコンを持ち歩いているときに落としてしまったという話はよく聞く話です。パソコンが落下して硬い床やアスファルトにたたき付けられてしまえば、当然HDDにも大きな衝撃が及び、ヘッドとディスクが激しくぶつかることも考えられます。実際、ノートパソコンを落下させて内蔵HDDを壊してしまう人は少なくありません。

こうした事故を防ぐために、耐衝撃性を高める技術の開発が進んできました。具体的には、必要のないときにヘッドをディスク上ではなく、ディスクの横にある安全地帯に退避させる技術です。

ヘッドを退避させる方法は主に2種類。「シッピングゾーン方式」と「ランプロード方式」です。後者は部品点数が増えるものの、耐衝撃性に優れており、ノートパソコン向けのHDDはこの方式を採用する例が多くなっています。

さらに近年は、ノートパソコンに加速度センサーを搭載し、落下し始めたことを検知するという機能も登場しています。加速度センサーからの信号を受けたら、衝撃を受ける前にヘッドを安全地帯に退避させるのです。NECパーソナルコンピュータ 資材部 キーパーツ技術・品質部 マネージャー 沢田明彦氏は「加速度センサーとランプロード方式でノートパソコンの耐衝撃性は近年大きく向上しています」と最新技術の効果について話してくれました。

80年代から現在に至るまで、パソコンが内蔵する二次記憶装置といえばHDDでした。しかし近年は薄型軽量のノートパソコンを中心に、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)が普及しつつあります(写真2)。回転するディスク、動くヘッドなど、壊れる可能性が高い部品を多く持つHDDと比べると、SSDは電気信号を送って半導体にデータを記録するので、衝撃に強いという特性があります。さらに、電力消費量が少なく、動作時に音が発生することもありません。それにHDDに比べて読み書きがかなり速いというのも、見逃せない大きなメリットです。

(写真2)SSDを搭載した最新ノートパソコン(NECパーソナルコンピュータの「LaVie Hybrid ZERO HZ550/DAB」)(提供:NECパーソナルコンピュータ)

一方で「読み書きを繰り返すと、半導体内の素子が劣化していくので、HDDに比べて寿命が短い」といったことを懸念する人もいます。この点については、一般的な用途でパソコンを使っている限り、問題になることはないとのことです。

そしてもう一つSSDには、「記録容量当たりの価格がかなり高くつく」、つまり高価なぜいたく品であるという問題があります。実際ノートパソコンを買うときに、記録容量1TBのHDDを搭載した製品と、同じく記録容量1TBのSSDを搭載した製品を比べると、後者はかなり高価なものになります。ただし、半導体製造技術の進化により、HDDとSSDの価格差は近年急速に縮まってきています。

これからはSSDが大きく普及していくことでしょう。しかし、HDDの役目は終わったわけではありません。安価で記録容量が大きいHDDにはまだまだ需要があります。しばらくはHDDとSSDが共存していくことでしょう。

執筆:加山恵美(フリーランスライター)
編集・文責:株式会社インプレス

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