東京オリンピックから続く挑戦、「より速く、美しく」(前編)

オフィスから家庭まで、エプソンのプリンターは広く行き渡っています。エプソンといえばインクジェットプリンターで有名ですが、今回はエプソンのプリンターが生まれた時代にさかのぼりましょう。

[2017年 5月17日公開]

ゼロから挑んだ東京オリンピック

1964年の東京オリンピックは、日本で初めて開催したオリンピックです。数々の日本人選手が活躍しましたが、協力という形で、日本企業も活躍しました。東京オリンピック以前、スイスのオメガ(OMEGA)やロンジン(Longines)といった世界的に有名な時計メーカーが担当していた「公式計時」を、日本のセイコーが初めて担当することになったのです。

しかしセイコーはまだ、スポーツ専用のストップウオッチを作った経験すらなく、本当にゼロからのスタートでした。機器の開発が始まったのは1961年。オリンピック本番まで3年しかありませんでしたが、「精工舎」「第二精工舎」「諏訪精工舎(現セイコーエプソン)」で分担して開発を進め、世界トップレベルの精度を誇るストップウオッチの開発に成功しました。さらに、水泳用電子計時装置や観客用の大型時計、卓上小型水晶時計「クリスタルクロノメーター QC-951」(1969年:諏訪精工舎が開発した世界初の水晶腕時計「アストロン」誕生のベース)などを開発し、東京オリンピックの成功を下支えしたのです。

オリンピックのために開発した製品の一つに「プリンティングタイマー」というものがありました。東京オリンピック以前、時間を競う競技では、人間がストップウオッチで記録を計時し、それを手書きで書き残していました。その作業のあり方を一変させたのがプリンティングタイマーです。

プリンティングタイマーは、高精度の水晶時計を内蔵した計時装置です。水晶発振器からの時間信号に合わせて、競技スタート時から機械式のカウンターが回転し、ラップ時、ゴール時にカウンターが示した時間を紙に印刷するというものです。いわばプリンター機能付きのストップウオッチです。その精度は1/100秒と、当時のオリンピック公式機器の名に恥じないものでした。さらに驚くべきは、時間を計測して印刷するだけでなく、ラップ数、コース、着順まで内蔵ロールペーパー(巻取紙)に印字する機能を持っていたことです。人手による計時と記録を置き換えた電子記録システムは実に画期的なものでした。

東京オリンピックのプリンティングタイマーは、後のベストセラーの基となりました。1968年に登場した世界初の小型軽量デジタルプリンター「EP-101」はプリンティングタイマーの技術を応用したものです(写真1)。電子式卓上計算機などに組み込む用途に向けて発売しました。印刷方式は「ラインプリント方式」。紙の上に赤黒の2色リボンが流れるようになっており、リボンを細い棒で打ち付けることで、リボンのインクを紙に転写する方式です。なお「EP-101」の「EP」は電子プリンター(Electric Printer)の頭文字に由来しています。

(写真1)世界初の小型軽量デジタルプリンター「EP-101」。大ヒットを記録し、その製品名は現在のブランド名の由来にもなった

EP-101は重さ2.5kg、手のひらに載るサイズでした。今見ると「小型」には見えないかもしれませんが、当時の計算機のプリンターに比べたら超がつくほど小型でした。EP-101には水晶時計用モーターを応用した小型モーターを実装するなど、腕時計で培った精密加工技術をふんだんに採り入れました。その結果、消費電力を従来のプリンターの1/20にまで抑えることに成功しました。

エプソン販売 RP営業部 RP MD課 課長 宮地哲氏(写真2)は「EP-101は実にさまざまな現場、オフィスだけではなく船内や発電所などでも使われました。構造がシンプルで耐久性が高かったため、7~8年前まで修理の相談があったほどです」と言います。累計販売台数は144万台に到達するなど広く普及した製品でした。

(写真2)エプソン販売 RP営業部 RP MD課 課長 宮地哲氏 *内容は取材当時のもの(写真:加山恵美)

「EPSON」という現在のブランド名は、この「EP-101の子ども(SON)」が由来となっています。EP-101から始まったプリンターがこれからも世にたくさん出ていくようにという願いを込めて1975年にプリンターの「EPSON」ブランドが誕生しました。EP-101はまさにエプソンの源流です。

今でもミニプリンターの子どもたちは小売りや外食の店舗など活躍しています。近年ではWebアプリケーションとタブレット端末から印刷できるレシートプリンター「TM-T88V-i」が小規模な店舗を中心に人気です。現在世界のミニプリンター市場でセイコーエプソン製品は45%を占めるほど根強い人気を誇っています。(中編に続く)

執筆:加山恵美(フリーランスライター)
編集・文責:株式会社インプレス

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