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経営課題としての健康管理

全ての従業員が元気に働いてこそ、企業が活性化

長時間労働により社員が疲れ果て、ひいては病気になってしまうことを回避することが、働き方改革の課題です。社員が健康に働ける環境は、企業にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。

[2018年 5月 7日公開]

企業にとっての健康管理とは

少子高齢化が進み、これまでの働き方が見直されている中、社員の健康管理は企業にとって大きな課題となっています。

社員が病気になりにくい、健康で丈夫な心身を維持できる、あるいは症状が軽いうちに病気の早期発見と治療につなげられること。そういう環境下であってこそ、社員個々の仕事が順調に進み、会社全体の生産性と収益の向上につながります。また、それにより社内に「活気」と「ゆとり」が生まれ、働く社員の会社に対するロイヤリティ(価値)が向上し、離職率の減少、優秀な人材の採用が可能になってくるのです。さらに、医療(保険)費用の削減や健康企業と認定されると融資が受けやすくなるといった経営上のメリットも享受できます。

一方、健康管理が社員任せの場合は、疾病による休職者の増加や人員不足による過重労働のリスク、会社に対しての不満が強くなるなど全体の士気が下がり、人員補充のためのコスト増も伴うため生産性の大幅な低下を招く恐れが出てきます。最近の傾向では業務経験や高いスキルを持った中堅社員が、忙しさやストレスからうつ病などのメンタル系の病気で長期休職するケースが多くなり、中には交代する人材もすぐには育成できず、やむなく業務縮小に追い込まれる企業もあるようです。

健康管理の法律と義務

1.企業の健康管理に関する法律

企業の労働時間や労務環境は、法律で定められています。また、この法律に沿って全社員の健康診断受診などが義務付けられています。

労働基準法

働くうえで基本となる労働時間の上限や賃金、災害や休業補償などが定められていて、さらに働き方改革関連法案などで過重労働の抑制に向けて、残業規制などが強化される方向にあります。

労働安全衛生法

危険作業や化学物質の取り扱いなど、健康を害する恐れのある労働環境において安全を保つために定められた法律です。

労働契約法

第5条で、企業が社員に対して施さなければならない安全配慮義務が規定されています。

「使用者は、労働者の生命、身体などの安全を確保し労働することができるように必要な配慮をするものとする。」(労働契約法第5条要約)

仕事が原因となりけがや病気になった場合は「労災(労働災害)認定」の申請をして、労働基準監督署が判断をします。

2.企業に義務付けられている健康管理

健康診断の受診

社員の健康診断は病気の予防や早期発見を目指すもので、労働安全衛生法(66条以下)と労働安全衛生規則で定められています。使用者が社員の健康診断を怠った場合は罰則が科せられます。

産業医の選任

社員の健康管理を効果的に行うために、常時50人以上の従業員を抱える事業者は産業医を選任し、従業員の健康管理を行わせなければなりません。
産業医とは厚生労働大臣が認めた研修機関(日本医師会、産業医科大学)で専門知識を習得し、労働衛生コンサルタント(保健衛生)の試験に合格している人です。
健康管理の指導や健康教育・相談を実施し、従業員の健康障害が発生した場合、原因の調査や再発防止の措置など必要な勧告をすることができます。

ストレスチェック

心理的な負担の程度を把握するための検査(職業性ストレスチェック)が常時雇用50人以上の事業者の義務となっています(労働安全衛生法66条の10)。
1年に1回、従業員に対して定期的に職業性ストレスの検査を行わなければなりません(50人未満の企業は当面の間努力義務)。

経営施策として健康管理を行う場合は、法律で定められた要件や施策は必要最低限のこととして理解し、元気に安心して仕事に集中できる環境を作るための積極的な取り組みを考え、実践していくことが重要です。

健康管理の取り組み

経営層と社員が一体となった健康への取り組みを行うために、現状の課題を整理して将来に向けた健康戦略の立案と環境作りを行います。

社員の健康状況の把握

社員の疾病状況やその原因を調べ、解決のための方法を探ります。
これは、社員全体の傾向把握(高血圧、メタボの増加、メンタル不調などの傾向)と既に病気を抱えている方の治癒・復職に向けた取り組み(個別対応)を調査します。生活習慣病対策として、社員のみならず社員の家族も含めて健康状況や食生活を調査し、食生活のアドバイスなど健康管理に役立てている企業も増えています。
この調査は、社員のプライバシーに深く関わりますので、情報の取り扱いには十分な配慮が必要です。

解決方法の検討

1.社員全体

病気予防に関しては、全社員を対象として取り組みます。

例として、以下があります。

  • 腰痛や血行障害につながるリスクを減らすため、定時に軽い体操を行う。
  • ストレスを減らし集中力を高めるためマインドフルネス(ヨガに由来する呼吸を整える瞑想法)を取り入れる。
  • ジョギングやフットサルなど多くの人が楽しめるスポーツ指向の社内イベントを実施する。
  • 空調や照明設備など健康を意識した労働環境の改善
  • 社員食堂がある場合は、健康メニューを設定する。
  • 禁煙運動の実施

多くの社員が楽しんで取り組むことで、健康に対しての意識が高まり職場の雰囲気も生き生きとしてきます。

2.個別の対応

既に本人、もしくはご家族が病気になった場合は、早期の治癒に向けた取り組みを行います。通院や介護のための時短勤務や在宅勤務を可能にするなど会社としてのバックアップ体制を検討し実施します。
この個別対応に当たっては、本人と上司、会社指定の産業医と本人が治療を受けている主治医との連携と情報共有が大切です。

実施計画・予算化

健康促進のための取り組みを具体的に行うために、実施計画を立案し予算化します。
実施計画は、取り組みだけでなく、周知や盛り上げの方法、想定する効果も盛り込むことで、有意義な施策となっていきます。

健康管理施策の実施

社員全員が対象の施策は、トップが積極的に呼びかけ率先して行動することが、健康管理に対しての企業姿勢として伝わっていきます。実務を行う担当者と一体になって取り組むことが成功のポイントです。

また、健康は短期間に獲得できることではありません。検証や改善をしつつできるだけ長期継続することが「健康企業」となる必須要素です。

検証・改善

実施後は速やかに効果を検証し、次への実施に向けた改善を行います。簡単なアンケートを採るなどして、社員の感想や効果を知るのが大いに役立ちます。
検証を踏まえて次の展開に反映することで効果の高い健康管理施策がノウハウとして定着するようになります。

企業の健康管理は、企業活性化の基盤となる施策です。生産性の向上と企業の活性化を目的として全社的に取り組み、社員が安心して生き生きと活躍できる環境を作ることが、企業としての大きな役割となります。

社員が健康に働ける環境を作るには

照明をコントロールして、残業を減らす環境を作る

照明を決まった時間に一斉消灯することで「照明が消えれば帰る」というきっかけを作ることができます。

あわせて、効率的に仕事をしなくてはならないという、業務のメリハリ意識も生まれます。

「残業削減」に関する導入事例

ずるずると残業してしまう職場環境の改革に成功

引地精工株式会社 導入事例

残業削減ソリューションによって、これまでなかなか減らすことができなかった残業を大きく減らすことができました。それに伴う従業員の意識の変化は、業務の効率化にもつながっています。

著者紹介

マネジメントリーダーWEB編集部

企業を活性化する総合マネジメント情報サイト「マネジメントリーダーWEB(http://www.mng-ldr.com/)」を企画・運用。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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