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リスクマネジメントでリスクを最小限にとどめる

リスクの影響を受けにくい企業体質を作り、健全に発展させるためには

企業活動を行ううえで、リスクを完全に回避することは現実的ではありません。組織的に管理することで損失を低減させるリスクマネジメントが経営手法として注目を集めています。

[2018年 8月 6日公開]

企業の存在を脅かすさまざまなリスクとリスクマネジメント

大規模な地震をはじめとする災害や事故・トラブル・景気の変動など、企業を取り巻く環境には常にリスクが発生する要因が存在しています。そのうえ、ネットワークなどの情報インフラが高度化するにつれて、リスクは増加傾向にあります。

リスクマネジメントは、これらのリスクを予測しコントロールする経営管理手法です。
難しいように聞こえますが、個人でも自然に実践していることなのです。

例えば、学校を受験する場合「不合格」というリスクが発生します。リスクを回避するために勉強して成績を上げることが第一となります。しかし、それだけでは100%のリスク回避にはなりません。滑り止めとして志望校より合格確率の高い学校を複数受験するのか、あえてリスクを受け入れて「浪人」も覚悟で、より難関の学校にチャレンジする選択もあります。

このようにリスクを想定して、どのように立ち向かい、万が一リスクが発生した場合の対処を決めておくのが「リスクマネジメント」なのです。また、損失が少ないと予測した場合はリスクを避けるだけでなくリスクを承知で立ち向かうこともあります。企業が発展する過程ではリスクを乗り越える局面が避けられないため、損失を少なくしながら企業発展に寄与する「リスクマネジメント」は注目を集めています。

それでは、どのようにリスクマネジメントを行うのでしょうか。
まずは、発生の可能性がある、あらゆるリスクを洗い出してみることです。リスクマネジメントはリスクの可能性を把握することが、重要な第一歩です。

想定しやすい主なリスクを挙げると以下のようになります。

財務リスク
経営者の経営判断ミス、業績・株価の低迷、取引先の倒産など
労務リスク
社員の不正行為、労働災害、リストラなど
災害リスク
地震・火災などの災害による被害
製品・サービスリスク
製品・サービスの不具合が原因となる事故(PL法の訴訟など)
設備リスク
建物・設備の故障・老朽化・操作ミスによる事故など
社会リスク
うわさ、風評
犯罪リスク
詐欺、盗難、犯罪に巻き込まれるリスク
(インターネットのハッキングやウイルス侵入なども含む)
政治リスク
制度の改正など

企業トラブルとなるリスクは上記以外にも大小無限にあります。
「一寸先は闇」の状況ですが、自社にとって想定されるリスクを分析することで、大まかなリスク発生の傾向が把握できます。

例えば、製造業では製品に関連するリスクが想定されますし、運送業では交通事故や過重労働など、業務や業態に関連したリスクがあります。

危機管理・コンプライアンスとの違い

リスクマネジメントと同じような意味を持つ言葉として「危機管理(クライシスマネジメント)」や「コンプライアンス(法令遵守)」があります。

「危機管理」はリスクが発生した場合の対処がメインとなります。大きな事故が起きた場合に、迅速な記者会見による謝罪と原因の公表、損害賠償や訴訟対応などリスク発生後に最適な処置をして損害や影響を最小限に抑えることです。また、コンプライアンスは、企業活動において法律や規則に従い(法令遵守)、社会規範や企業倫理に反せず業務を遂行し、リスク回避することです。

リスクマネジメントは、リスク発生前に能動的に対処してリスクの想定と対応策を判断し、想定外のリスクが発生した場合は危機管理によって損失を最小限に抑え、その後の回復を速やかに行うという長期的な経営戦略です。

例えば、「コンプライアンス」の徹底で事故を起こさない(発生確率を低減する)ことが第一ですが、それでも事故が起きてしまったら「危機管理」により迅速に対応し、事故発生の損失を最小限に抑えます。
しかし、これは事故発生に対応した処置となります。
リスク発生時後の対処だけでなく、普段から顧客や地域社会と円滑なコミュニケーションを醸成し、企業信頼度を高めることで業績回復の支援を受けやすくするなど、中長期的・総合的な視野でリスクに対処するのが「リスクマネジメント」です。

また、企業活動においては、投資や新規事業など失敗リスクを伴う取り組みをしなければならない局面があります。その場合に事業を中止するといった判断だけでなく、損失を予測したうえで「リスクを許容する」という判断をする場合もあります。つまり、リスクを全て避けるのではなく、発生と影響を予測しながら、自社の戦略に組み込んでいくのが「リスクマネジメント」になります。

「危機管理」「コンプライアンス」のどちらもリスクを回避・低減し損失を抑える要素ですが、「リスクマネジメント」はこれらを包括した経営管理手法なのです。

リスクの見える化と分析

リスクの見える化

リスクマネジメントを行ううえでは、リスクの洗い出しと分析が基本となります。
いつ起こるか、起きたらどのような損失をもたらすのかをシミュレーションしてみるのです。社員全員でそれぞれが想定するリスクを挙げることで、多面的にリスクを検証します。
リスクは思いもよらないことで発生するといわれますが、多様な人間がそれぞれの視点や感性でリスクを出し合うことで、想定外のリスクをできるだけ想定内にしていきます。万が一想定外のリスクが発生しても、類似のリスク想定ができていれば対処も的確にできる可能性が高くなります。

自社で想定されるリスクを洗い出す

企業内のさまざまな部門や職位の社員がブレストし、業務上考えられるリスクを自由に出し合います。
ブレストでは相手の意見を否定するのはご法度です。「そんなこと起きるわけない」と否定せずにあらゆる可能性を検証してみましょう。リスクを洗い出すことで社員の危機意識も高まります。

リスクの分析

想定したリスクについて、要因、頻度、損失を検証します。過去に発生した事例や同業他社の事例も踏まえることで、頻度や損失の大きさを推測します。

リスクを発生頻度と損失の大きさでプロットしていくことで、影響の大きなリスクと影響の少ないリスクが分かってきます。これを参考に優先順位を決めて対処方法を考察します。

リスクの種類と対処方法

企業が抱えるリスクには大きく分類すると二つのタイプが存在します。

1.事業の継続に影響を与えるリスク

地震や火災などの災害、犯罪や事故による被害、経営者・社員の死亡・病気・事故、取引先の倒産、自社商品の欠陥による売り上げ減少や損害賠償など、発生の予測が難しく企業が一方的に損失を被るリスクです。

2.事業目標達成に影響を与えるリスク

景気・株価・為替などの経済変動、競合他社によるシェアの変化、技術環境の変化、制度・法律の改正など、企業活動を取り巻く環境の変化に起因するものです。収益減少のリスクもありますが、増収の可能性もあります。

1の事業の継続に影響を与えるリスクを回避することは困難ですが、あらかじめ備えることでリスクの低減や分散することが可能です。災害や事故・病気などは保険をかけることで、保険会社にリスクを転嫁することもできます。このリスクはいつ起きるか分かりません。そのため「発生する」ことを前提にできることから対策を始める必要があります。

2の事業収益に影響を与えるリスクは、市場分析など情報の収集と解析によってある程度の予測は可能です。そのうえでハイリスク・ハイリターンとなる勝負に出るのか、じっと成り行きを見守るのかは経営判断が必要です。災害リスクと違い、シェアの拡大や収益の向上のためにリスクを承知で能動的に立ち向かわなければならないタイミングもあります。この場合、事業提携などさまざまな方法でリスク共有や分散を図り、失敗した場合に損失を低減する「リスクヘッジ」が大きなポイントとなります。

リスクマネジメントの傾向

リスクマネジメントを行ううえで重要なポイントとなるのが、情報インフラの整備です。
リスクの予報には自然災害情報やマーケット情報など膨大な情報をリアルタイムに収集し解析することが不可欠です。また、何かにチャレンジする際は企業全体で情報共有し効率的に推進する必要があります。推進の過程で潜在していたリスクが顕在化してくることがあります。それにいち早く気づき報告・連絡を行ううえでも情報共有は大切です。

リスクマネジメントは情報インフラの効率的な活用で効果を高めることが可能となります。リスクの低減と成功確率の高いチャレンジは、ライバル企業へのアドバンテージとなります。また今後のAIの進化と導入でリスク予測や判断がより精度が高く迅速に行える期待もあります。リスクの低減に必要な迅速で的確な対処が簡単にできる可能性が高まっています。

リスクマネジメントのまとめ

リスクマネジメントは企業が存続し、社員を守るための有効な経営手法となります。まずは無理をせず身近で手軽に対処できる課題から取り組んでみましょう。確実に結果を出す積み重ねがリスクを回避し、損失を抑えるためのノウハウの蓄積になります。

また、大規模な地震を始めとする自然災害は、全ての企業が直面するリスクです。いつどのような形で起きるか分かりません。万が一被災しても最小限の損失とすばやい復旧・復興することを前提に取り組みましょう。

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著者紹介

マネジメントリーダーWEB編集部

企業を活性化する総合マネジメント情報サイト「マネジメントリーダーWEB(http://www.mng-ldr.com/)」を企画・運用。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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