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STOP! 人材流出!

人材の流出は最大のリスク。人材流出の防止策を探ります

人材の流出は企業の存在を脅かす大きなリスクとなります。このような事態を避けるために、社員の退職の傾向と原因を探り、人が集まる、魅力ある企業の在り方について考察してみましょう。

[2020年 1月 6日公開]

人はなぜ企業を辞めるのか

厚生労働省の調査によると、平成29年(2017年)の入職者数(採用数)は全体で788万1,500人。対して離職者数は734万5,000人となっており、入職者数が約50万人多くなっています。しかしこの割合は、景気動向などによって変動します。

出典:厚生労働省「平成29年雇用動向調査結果の概況」p7を元に作成。

では、離職者はどのような理由で退職しているのでしょうか。

出典:厚生労働省「平成29年雇用動向調査結果の概況」p15を元に作成。

退職の理由で多いのが、男性は「その他の理由(出向等を含む)」23.4%を除くと「定年・契約期間の満了」17.8%が最も高く、次いで「労働時間、休日などの労働条件が悪かった」12.4%となっています。女性は「その他の理由(出向等を含む)」22.9%を除くと 「労働時間、休日などの労働条件が悪かった」14.7%が最も高く、次いで「職場の人間関係が好ましくなかった」13.0%となっています。 (注1)

  • (注1)厚生労働省「平成29年雇用動向調査結果の概況」P15 表5 転職入職者が前職を辞めた理由別割合から引用。

男女ともに「労働時間・休日の労働条件」を退職理由としていることが特徴的で、この傾向は年々高まっているようです。つまり、今注目されている「働き方改革」は効率よく働き、ワークライフバランスを充実させるだけでなく、離職率の増加に歯止めをかけるポイントでもあるのです。

社会全体として見ると、傾向としてはおおむねこのようになっています。

  • 少子高齢化による慢性的な人材不足
  • 経験を持った高年齢者の退職
  • 働き方の多様化・転職活動の活性化による人材の流動化

特に中堅・中小企業においては、「仕事を受注しても人員不足で対応できない」「後継者が育っておらず、事業承継ができなくなり廃業する」などの深刻な問題が身近に迫りつつあります。

参考

人材流出のリスクとは

退職などで社員が辞めると、さまざまなリスクが生じる可能性があります。

経験やノウハウの流出
中堅以上の社員が退職した場合、企業としてのノウハウが失われます。
企業秘密の流出
ノウハウ=企業秘密です。書類などの提携物の流出は防ぐことができますが、人的なノウハウはその人と一緒に流出することになります。
顧客の流出
顧客の信頼を得た社員が同業他社に転職した場合、企業の顧客もそちらに流れて売り上げが減少するリスクが高まります。特に、長年同じ顧客を担当したベテラン社員が辞める場合は、業務処理のノウハウも丸ごと失う可能性があります。
後継者の流出
若手社員(特に定期採用の新入社員)の場合、育成の流れが途絶え、後継者不足のリスクが生じます。
人事コストの流出
採用から育成にかかる手間も含めたコストは大きく、特に新入社員においては多額の費用がかかります。社員採用から育成にかかったコストを失うだけでなく、退職者の補充を図るための中途採用コストも新たに発生します。

退職理由と本当の原因の違い

このようなリスクを避けるためには、できるだけ早く対処を図ることが大切です。

人材の流出を減少させるためには、社員が退職する原因を突き止め、改善することです。しかし、退職の表向きの理由と本当の原因が異なる場合も多々あります。上司に退職を告げる際は「親の介護」を理由としていたとしても、本当の原因は同期の社員との人間関係の悪化だった、ということは珍しくありません。

また、上記の調査結果にはありませんが、自分の評価が正しくされない(上司の評価)というのも退職の理由としてよく耳にします。最近話題になっている「フリーライダー社員」の存在がその原因の一つかもしれません。

このような社員がいると、それを許容している企業に嫌気が差して、周囲の社員は次々と辞めていくことになります。しかし、退職の理由は個人的な争いを避けるため、家庭都合などほかの理由とすることが多く、企業としては実態を把握しにくいようです。
いずれにしても退職の本当の原因を突き止めることは、人材流出を少なくするための第一歩となります。退職希望者の話だけでなく、周囲からもヒアリングするなどして原因を究明しましょう。

人材流出を防止するために

では、人材流出を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。
第一に取り組まなければならないことは、退職する理由と原因を明らかにしてその原因を取り除くことです。

例えば、こういうポイントはいかがでしょうか?

  • 労働時間が問題であれば、どうすれば労働時間を短縮できるのか
  • 退職の理由が家族の介護のためであれば、在職のまま介護ができる仕組みを作れないのか

想定できる限りの原因の究明と改善を図ることです。退職原因として多いものから優先順位を付けて対応を図るとよいでしょう。

リテンション(人材の流出防止策)

人材流出防止で注目されているのが「リテンション」です。リテンションとは「維持する」「保持する」という意味ですが、「優秀な人材を手放さない」人事施策を表す言葉として使われています。

具体的なリテンション施策は、優秀な人材の流出を防ぐためにインセンティブ(報酬)を与えることです。インセンティブは「金銭」と「非金銭」の2通りがあります。
「金銭」は、文字どおり給与や賞与(査定)など高収入を保証することです。
「非金銭」は、勤務環境やワークライフバランス、スキルアップなどです。

インセンティブを金銭とするやり方は以前からありました。しかし、報酬が高くなっても忙しいために残業や休日出勤に不満を抱えるケースや、より報酬の高い企業へ転職する必要性が出てくるなどの弊害もあるため、金銭的なインセンティブを希望する人は、非金銭的なインセンティブを希望する人に比べて少ないといわれています。

人が集まる魅力ある企業へ

人材流出を防止する最大の施策は自社が魅力ある企業となることです。

では、魅力ある企業とはどのようなものを指すのでしょうか。主な要素をまとめると、以下のようになります。

人的魅力経営者の人格・けん引力(企業理念・ビジョン)
企業風土(誠実さ、信用力)
企業的魅力安定性、将来性、収益性
知名度
CSR(地域、スポーツ、文化共生)
商品独創性、革新性(技術力・開発力)
ソリューション力
話題性、時流性(営業力)

これらの魅力は、経営者の人格や企業風土などといった普遍的なものと、景気や流行などの外的要因によるものが混在しています。

最も重要な要素は「企業の魅力=経営者の魅力=企業理念」ではないでしょうか。景気が良く企業の収益が向上しているときは待遇の心配などしなくてもよいのですが、不景気や業績の悪化で待遇が悪くなると、本来は魅力であった要素が一気に退職の原因へと変化してしまいます。

理想は「企業理念の共感」です。例えば「世界一の○○技術の実現を図り、人々のより良い生活の実現に寄与する」といった企業理念を掲げ、それに共感する人々が集うことです。企業理念に共感する社員であれば多少苦しい環境下であっても、創業者と同じように理念の追求のために頑張ることができるのです。
言い換えると、企業はさまざまな困難を乗り越える魅力を備えることです。企業理念が明確でそれに沿った企業風土が培われている企業は、退職者が少ないといわれています。

多様な働き方と人材流出防止策

企業を取り巻く環境は、少子高齢化や働き方改革などで急激に変化しています。常勤の終身雇用制だけでなく、在宅勤務や副業も珍しくはありません。
そのような多様化する流れに合わせて、これまでの「退職」という概念を「広い世界での修行のための休職」と捉え「いつでも現職に戻れる制度」を掲げる企業もあります。隣の芝生が青く見えるように、他企業がとにかく魅力的に思えることもあります。そのようなときに「外の空気を吸ってきなさい」と指示し、社員が成長して戻ってくれば企業にとっても大きなメリットになるのではないでしょうか。

また、人事採用も成績重視から自社の企業理念に共感する学生を獲得するために、学生対象のアイデアコンテストや研究テーマに奨学金を提供する企業も増加傾向にあります。

働き方に大きな変化が表れている現在、自社の魅力を高めて人材の流出を防止するための方法を、これまでの常識にとらわれず多角的に検証してみてはいかがでしょうか。

人材流出を防ぐために働き方改革の対応はできていますか?

働き方改革関連法で、時間外労働(残業時間)の上限規制が強化されます。勤怠の適正化や残業抑制、業務の効率化といった具体的な働き方改革の対策が不可欠です!

著者紹介

マネジメントリーダーWEB編集部

企業を活性化する総合マネジメント情報サイト「マネジメントリーダーWEB(http://www.mng-ldr.com/)」を企画・運用。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。