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【緊急課題】リスクマネジメントの見直し

最新リスクマネジメントはパンデミック+大規模災害への対応がカギ

2020年の新型コロナウイルスのパンデミックは、感染症の大流行だけでなく世界的な不況をも巻き起こしました。想定外の被害に、リスクマネジメントの見直しを図っている企業が多いのではないでしょうか。

[2020年 8月 3日公開]

パンデミックによるリスクマネジメントの見直し

企業のリスクマネジメントは、事業継続計画(BCP)に沿って事業リスク、災害リスク、犯罪リスクなどあらゆるリスクを想定して、組織的に行います。事前に対策を講じることで、損失の低減と早期の復旧を図ることが可能になります。

2020年初頭から、世界中で急速に広まった新型コロナウイルス感染症は、感染による健康被害だけでなく経済活動の大規模な停滞を招きました。世界的な規模で大不況を引き起こし、企業の根幹を揺るがす事態に発展しました。

これほどまでのパンデミック被害を想定していた企業は少なかったのではないでしょうか。特に緊急事態宣言による外出自粛=テレワークの推進など、働き方や生活様式が一変すると想定することは困難だったかもしれません。リスクマネジメントも直接的な被害への対策だけでなく、長期にわたって間接的に影響を及ぼしかねない、社会環境の急激な変化を想定する必要が出てきました。

リスクマネジメントを適切に行うためには、常にリスクを見直し最新の危機管理マニュアルを全ての関係者に周知徹底することが必要です。

リスクマネジメントの基本

企業のリスクマネジメントは、自然災害やパンデミック対策だけでなく、製品や社員によるトラブルや情報流出、SNSの炎上など多岐にわたります。企業にとって好ましくない事態は全て「リスク」と捉えるべきです。

リスクは大別して地震・風水害などの自然に起因するもの(ウイルスなどの感染症の流行も含む)と、事故・犯罪・トラブルなどによる人為的なものに分けて対処します。

自然災害リスクの対処

自然災害の場合は予測と事前対策が大切です。地震などの大規模災害は未然に防ぐことはできません。耐震補強、避難場所・水・食料の確保、重要書類の保管、データの保全、複数のサプライチェーンの確保などの備えと、安否確認から復旧作業までスムーズに展開できる非常時体制を整えます。

パンデミックの対処

テレワークの推進、マスク・消毒液などの日常的な備蓄、サプライチェーンの確保に加え、ソーシャルディスタンスの取り方などの感染予防対策や、従業員(家族含む)が感染した場合の企業としての対応方法をあらかじめ定めておく必要があります。

人為的リスクの対処

社会的な事故や犯罪を除き、発生の原因が自社にあるものはその防止に努めることが第一となります。そのためには「危機管理マニュアル」を作成し、コンプライアンスの徹底、担当業務の法的規制の理解促進、就業規則の順守徹底、安全管理知識の啓蒙(けいもう)などを行いましょう。このような研修を通して十分な教育を施し、社員として責任のある行動を求めていきます。こうしてリスクが生まれにくい環境をつくります。

危機管理マニュアルの作成と更新

リスクマネジメント情報を全社員で共有するために「危機管理マニュアル」を作成し、周知徹底を図ることが重要です。また危機管理マニュアルは定期的、もしくは大きな災害や事故の被災後、速やかに検証と内容の更新を行います。常に最新の状態で危機管理ができるようにしておきましょう。

1.危機管理マニュアル作成のポイント

  • リスク対策の目的、方針、準備、体制、緊急措置を明確化する。
  • 危機管理体制と役割を具体的に定める。
  • 緊急事態の発生時に、社員として責任ある行動を取るための指針を明示する。特に「商品や資産の保全より人命優先」など、正常な判断ができないときでも企業使命として緊急行動時に必要な企業メッセージを簡潔にまとめる。
  • マニュアル+訓練によって体で習得する。

2.危機管理マニュアルの作成手順と運用

(1)基本方針の策定

経営方針に基づいて、現状抱えるリスクと今後予想されるリスクを洗い出します。
リスクから想定される被害をシミュレーションし、事業継続に影響の大きいものからリスク回避策を立案。さらに着手すべき優先順位と対策にかかる費用を算出します。

(2)危機管理体制の構築

危機管理プロジェクトを立ち上げ、プロジェクトメンバーが危機管理マニュアルの作成と改定を行います。あわせて危機管理マニュアルに沿った訓練と教育を実施します。緊急時には危機管理マニュアルに基づき、メンバーが災害対策本部の中心的な役割を担います。

(3)緊急時の行動指針

緊急時にどのように行動するかを具体的に分かりやすく明示します。全社員がテレワークに切り替えるなどの基本的な行動について解説します。
緊急行動の際は、以下の連絡先などをリスト化しておくと迅速な連絡が可能になります。
ただし電気や通信手段が断絶した場合に備えて、代替えの連絡方法も検討しておきましょう。

<緊急連絡リストの整備>

  • 危機管理プロジェクトメンバーの連絡先と連絡方法
  • 全従業員安否確認リストの整備
  • 関係企業の連絡先(取引先、仕入先など)
  • 顧問の連絡先(弁護士、会計士、税理士など)
  • 官公庁・自治体・マスコミ(社外広報)の連絡先
  • 社屋・工場・設備の修理依頼先
  • 緊急時の宿泊先(ホテルなど)

(4)緊急に備えた準備

必要な準備を行います。

  • 危機管理マニュアルの整備(1年に1回改訂版を発行)
  • 危機管理プロジェクトの定期的な打ち合わせ(経営トップも交えて定期的に会合を持ち、緊急時の対応を確認)
  • 備蓄品・医療品の備蓄
  • 災害対策グッズの調査・調達・整備

(5)緊急時対応

  • 現状の把握と分析(社員の安否確認を優先して行い、設備の被災状況を把握します)
  • 被災者の救助、被災家族の支援を行います。
  • 自社設備および関係企業の復旧状況を把握します。
  • 復旧計画の策定(現状把握を基に、担当者や専門家を交えて復旧計画を立案します)
  • 関係官庁、地域自治体との連絡・協力体制を構築します。
  • 必要物資の確保、設備の点検を行います。

危機管理プロジェクトは、経営者を最高責任者とし、正確な現状分析と迅速な判断を行います。被害を最小限にとどめるためには、客観的かつ正確な情報に基づいた素早い経営判断と行動がポイントになります。ただし復旧が落ち着くまでは、企業倫理よりも一般的な常識を優先して行動するようにしましょう。

リスクマネジメントの見直しについて

前述したように、新型コロナウイルス感染症は企業活動に大きな影響を与えています。そのためそれに応じたリスクマネジメントの見直しが急務となっています。

見直しのポイント

テレワークや新しい生活様式が浸透するとともに、働き方そのものが変わってきています。リスクマネジメントだけでなく、事業継続計画(BCP)の根幹から見直す必要があるかもしれません。ICTを駆使した業務効率向上が進み会社から自宅に就業場所が分散することで、セキュリティリスクが高まっている状況があります。そのため在宅勤務を前提とした、きめ細かなリスクマネジメントを新たに策定する必要があります。

また、第2波、第3波の到来や、コロナウイルスとは別の新種ウイルスの発生、直下型地震、大規模風水害が同時に起こった場合のリスク想定も必要となります。必要以上に悲観的な想定はしたくありませんが、日本ではパンデミックの最中に大規模な自然災害が発生する可能性が低くはないのです。

感染症と地震では被害の性質に大きな違いがあります。
例えば感染症は世界的な規模で発生しますが、建物の倒壊や損傷、停電などの物理的な被害はありません。しかし地震では東日本大震災で経験したように、地震とそれに伴う津波の発生で数多くの建物が倒壊し、停電や通信が利用できない状況に陥ります。

パンデミックの最中に大規模な地震が発生した場合、テレワークの拡大によって通信環境の重要性が高まっているので、停電や通信困難な状況は復旧の大きな足かせとなる可能性があります。さらに避難所が集団感染の温床になるのではという懸念もあります。

このように感染症と自然災害の複合被災は、事業継続に関わるような大きな被害を及ぼし、従業員の安全確保の脅威となります。自社の被害シミュレーションと事前対策を早急にまとめて、できるだけ早く準備を始めましょう。

参考

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著者紹介

マネジメントリーダーWEB編集部

企業を活性化する総合マネジメント情報サイト「マネジメントリーダーWEB(http://www.mng-ldr.com/)」を企画・運用。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。