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【最新】電子帳簿保存法改正のその後

電子帳簿保存法の抜本的な改正と2年間の猶予をどう捉えるか

2022年1月に電子帳簿保存法の改正が施行されました。しかし、紙での保存廃止は急きょ2年間の猶予期間が設けられるなど混乱も見られます。今後の法改正対応について解説します。

[2022年 5月 2日公開]

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は、紙で作成し保存していた国税関連の帳簿書類を電磁的記録(電子データ)として保存することを認めた制度で1998年に制定されました。

以前は、国税関係の帳簿や書類は書面で作成されていました。企業に会計システムが導入されると、仕訳帳、総勘定元帳、補助簿などの帳簿や賃借対照表、損益計算書、棚卸し帳などの決算書類はPCで作成し用紙に出力して利用・保存されるようになります。さらに電子帳簿保存法で、初めて(紙に出力しない)電子データが税務申告や監査に認められるようになりました。しかし、制定当初はスキャナー保存された電子データは対象外であったり、電子証明書取得などの導入ハードルが高かったりしたため、電子帳簿保存法に対応した企業は少なかったようです。

その後、IT技術の進展・普及とともに法律が改正されていき、保存要件も緩和されました。最近では、本来業務はテレワークが可能となっているのに、交通費精算の領収書提出や承認印を押印するためだけに出社しなければならないという問題が表面化してきました。

それに呼応する形で、2021年に電子帳簿保存法が改正されました。この改正により、電子帳簿や書類の保存要件が大幅に緩和されたのです。

電子帳簿保存法の対象となる帳簿書類と保存方法は以下の通りです。

改正で要件が緩和された主な項目

  1. 税務署長事前承認制度の廃止
    税務申告の準備作業で事前承認に要する労力や時間が軽減されました。
  2. 適正事務処理要件の廃止
    スキャナー保存で改ざんなどの不正防止のために必要とされていた相互チェックや定期検査が不要となりました。
  3. タイムスタンプ要件の緩和
    タイムスタンプを付与する期間が最長で約2カ月に拡大し、受領者のサイン(自署)が不要になりました。また、訂正や削除ができないなどの要件を満たすシステムに保存した場合は、タイムスタンプの付与も不要となります。
  4. 検索要件の緩和
    監査などで必要な項目を検索するための項目が、取引の日時・金額・相手先に限定されました。また、検索範囲の指定や検索項目を組み合わせて検索する機能も、税務署の電子データダウンロード要求に応じられる場合は不要となります。

改正により電子データ保存が義務化

2021年の大幅改正で保存要件が大幅に緩和されるとともに、電子取引を書面として出力し保存することが廃止され、電子データのままで保存することが義務付けられました。

改正が施行される2022年1月1日以降開始する事業年度からは、紙で受領(じゅりょう)した請求書や領収書は全て電子ファイル化して保存しなければなりません。
しかし、運用している会計システムが電子取引データの保存システムに対応するための、移行や改修が間に合わないとの声が多数上がったため、2021年12月の財務省令により、2022年1月1日から2023年12月31日までの2年間、以下の要件を満たすことを条件に猶予されることとなりました。

  1. 所轄税務署長がやむを得ない事情があると認めること
  2. 税務職員の質問検査権に基づき、電子取引情報を書面により提示または提出することができること

これらの条件は、事前の申請・承認が不要で「やむを得ない事情」の定義もあいまいなため、実質的に2年間はこれまで通りに紙での保存が行えると解釈されています。しかし、2024年1月からは国税関係の書類や帳簿は全て電子化しなければ青色申告ができなくなるなどの不利益が生じることとなります。この2年間を「猶予」とするのではなく「移行期間」と解釈して電子帳簿保存法への対応を行いましょう。

電子帳簿保存法に対応するための課題とは

電子帳簿保存法の大幅改正は、企業のIT化による業務効率向上を促進し、テレワークなどの働き方改革を推進することが主眼となっています。今後は国税関係の書類だけでなく、労務や保険などあらゆる書類のペーパーレス化が進むと思われます。つまり、電子帳簿保存法への対応を手始めとして、企業活動で発生するあらゆる書類を電子化することが必要となってきます。

しかし、電子帳簿保存法に対応している企業はまだ少ない状況です。この課題に直面している経理担当者や税理士にその原因について聞いてみると、以下の要因が挙げられています。

システム課題:会計(経理)システムと電子データ保存システムとの連携

見積書、請求書、領収書、契約書など企業間の取引で作成する書面や経費精算などで作成する申請書類など、企業活動で日々作成されている書面は多岐にわたり、その数も多くあります。これらは、書面であることを前提として処理している企業が多いため、電子化保存したデータの承認や帳簿としての入力方法など、既存の会計システムと電子データの保存システムの連携が課題となっています。

運用ルールの設定、取引先への周知

電子データの保存システムが定まらないと運用のルール設定と従業員への周知もできません。また、電子データ化するのは社内の書面だけではありません。顧客や取引先に対して発行(授受も含む)を行う見積書、契約書、請求書、領収書などの電子データ化を周知し理解を得ることも必要です。

これらの課題は、これまでの書類や伝票の取り扱い慣習を変えるため、実施には若干の混乱も予想される難易度の高い課題です。しかし、解決することで電子帳簿保存法への対応だけでなく話題となっている企業のDX化が併せて促進されます。デジタル時代に対応するためのインフラ整備として全社的に取り組むことをお勧めします。

電子帳簿保存法対応へのステップ

電子帳簿保存法に対応するための一般的な手順は以下のようになります。

  • 電子データ保存書面の洗い出し
    電子帳簿保存法の対象となる書類を洗い出します。その際に、作成→承認などの運用ルートや運用体制の見直しも行います。不要な作業や手間がかからないようにできるだけ簡素化することがポイントです。社内の経費精算などの小口現金を扱う場合は、書面の電子データ化だけでなく電子マネーの利用なども併せて検討しましょう。
  • 電子データ保存システムの選定
    電子データを保存するシステムは、改ざんなどを防止する観点から訂正・削除履歴の確保、関係書類の備え付け、見読可能性の確保、検索機能の確保などの要件を満たすことが必要です。そのため、自社環境もしくはEDIシステム(クラウド)上に、法の規定に準拠した「電磁的記録の保存」を行う必要があります。

EDIシステムとは
EDI(Electronic Data Interchange)とは、専用回線や通信回線などのネットワークで電子データの交換を行うこと意味します。そして、EDI取引データとは、EDI取引によって交換される、契約書・発注書・納品書・請求書などの電子データ化されたビジネス文書を指します。自社環境としての構築は費用と時間がかかるため、EDIシステムを提供するサービスを利用する企業が多くなると予測されます。保存システムの選定にあたっては、自社の会計システムと連携しやすいことを前提に検討します。

  • ルールの設定とマニュアル作成
    導入するシステムが決まり、運用方法や運用体制が固まったら、ルールを設定し運用マニュアルを作成します。ルールの設定やマニュアル作成で注意したいのは、分かりやすさと不正防止(セキュリティ)の徹底です。
  • 社内外への周知・教育
    電子帳簿保存法対応の周知を社内外へ行います。顧客や取引先などの社外に対しては、実施内容とスケジュールを明記して協力を仰ぎます。従業員に対しては、電子帳簿保存法対応の必要性と業務体制、運用ルールの説明・教育を行います。
  • 試験運用と調整
    実運用の前に試験期間を設けて、問題がないことを確認しましょう。電子帳簿保存法の対象となる請求書や領収書などの書面は、経営に直結する重要書類です。慎重に試験運用を行い、不具合が顕在化した場合は迅速に対応しましょう。

電子帳簿保存法対応の取り組みとインボイス制度の影響

電子帳簿保存法の大幅改正は2022年1月1日から施行されています。しかし、前述したように電子取引を用紙に出力して保存することの廃止は2年間の猶予となりました。そのため、急いで対応する必要がないと思っている企業が少なくないようです。

しかし、前述したステップで電子帳簿保存法に対応していくためには、会計(経理)システムの改修とルールの変更・周知など全社で対応しなければならない課題を克服しなければならないため、最低でも半年は必要と思われます。余裕をもって対応するためには1年ぐらいかかる可能性もあります。まだ、対応に着手していない場合はできるだけ早く取り組むことをお勧めします。

また、注意したいのは2023年10月から施行される「適格請求書等保存方式」(通称:インボイス制度)です。これは消費税の仕入れ税額控除を適格請求書の発行と保存(保存期間7年)を行う仕組みで、電子帳簿保存法の改正と合わせて電子インボイス制度となり、請求書が電子データとしてやり取りされる可能性が出てくると予測されています。企業間の取引で請求書が電子化されると、顧客から請求書や領収書の電子化を要望されるなど電子帳簿保存法への対応が加速される可能性が出てきます。適格請求書の発行には事前に適格請求書発行事業者としての登録を2023年3月までに税務署に登録申請を行う必要があります。

このような状況から、猶予期間が2年あると思わずに2023年の10月には電子帳簿保存法に対応した運用ができるようにしておきたいものです。電子帳簿保存法への対応は、企業活動がアナログからデジタルに完全移行するターニングポイントとして取り組んでいきましょう。

参考

電子契約書に移行する際の留意点

国税庁「電子帳簿保存法が改正されました(パンフレット)」(国税庁のWebサイト<PDF>が開きます)

最低限何をすればいいのか? ~義務の範囲と任意の範囲~

電子帳簿保存法への対応

2022年1月より電子帳簿保存法の大幅な改定がされました。今回の法改正の中には、電子取引の制度にて、電子データとして授受した取引データに関しては電子データとして保存しなければならないなど、紙での電子取引データの保存を廃止する内容もありました。電子帳簿保存法の改正における義務の範囲と任意の範囲を明確にし、義務付けられている対応について解説します。

著者紹介

マネジメントリーダーWEB編集部

企業を活性化する総合マネジメント情報サイト「マネジメントリーダーWEB(http://www.mng-ldr.com/)」を企画・運用。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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