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「裁量労働制のフリをした、正しくない運用」とは!?

ルールを正しく運用して、裁量のある働き方を実現するために

昨年、裁量労働制を違法に適用し残業代の一部を支払わなかったとして、大手企業が是正勧告を受けるという事件がありました。この「裁量労働制」とは、どのような制度なのでしょうか。また、「裁量のある働き方」には、どのようなメリットがあるのでしょうか。 

[2018年 3月19日公開]

労働時間制度の概要

そもそも、労働時間制度は原則として「1日8時間・1週間40時間」を法定労働時間と定めており(労働基準法第32条)、これを超えると残業代の支払いが必要となります。

この例外として、季節によって繁閑の差がある業種に適用される「変形労働時間制」や、始業・終業時刻を労働者に委ねる「フレックスタイム制」、業務遂行の方法や時間配分などを労働者に委ねる「裁量労働制」などといった、弾力的な労働時間制度があります。

裁量労働制とは「成果」を問う就労形態

このうち裁量労働制とは、業務遂行の手段や時間の配分などを労働者に委ねることにより、実際の労働時間数とは関わりなく、事前に労使の合意で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度のことです(労働基準法第38条の3・第38条の4)。

具体的には、コピーライターやデザイナー、経営企画などといったいわゆる「考えることが仕事」である業務については労働時間の長さのみで業務量を判断することは困難であるという理由から、業務内容や業務の質に基づいて、労使で事前に定めた労働時間数働いたものとみなし、労働時間を計算する制度だと言えます。適用できる業務内容には制限があり、どんな就労者にも適用してよい制度ではないことには注意が必要です。

裁量労働制の種類

裁量労働制には、二つの種類があります。

企画業務型裁量労働制
事業運営の企画、立案、調査および分析の業務であって、業務遂行の手段や時間配分などに関して使用者が具体的な指示をしない業務について、実際の労働時間数とは関わりなく、労使委員会で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度。
専門業務型裁量労働制
デザイナーやシステムエンジニアなど、業務遂行の手段や時間配分などに関して使用者が具体的な指示をしない19の業務について、実際の労働時間数とは関わりなく、労使協定で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度。

裁量労働制を適用した場合、労働者にとっては、自分の裁量や業務内容に合わせたフレキシブルな働き方ができ、企業にとっては、成果に応じた報酬の発生と無駄な長時間労働の削減などが期待できます。一方で、不正な活用方法により、違法な長時間労働が発生し労働者の健康を害したり、残業代が支払われなくなったりといったトラブルが起きる可能性もあるため、この点には注意が必要です。

とある企業(広告業)では、プロジェクトチームのメンバー全員に専門業務型裁量労働制を適用していましたが、実際に裁量労働制の対象となりうるのは、デザイナーとアートディレクターの2名のみだった、という事例がありました。同じデザイナーといえども、上司や先輩の指示がないと動けない新入社員は、自分の裁量で働くことはできません。また、同じプロジェクトチームに属しているけれども、一般事務や雑務などを担う従業員にも、裁量労働制適用の余地はないでしょう。

裁量労働制の詳しい内容を確認する

フレックスタイム制は「時間の使い方」を委ねる

フレックスタイム制は、弾力的な労働時間制度の一つで、1日に働く時間の長さを固定的に定めず、1カ月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、各労働日の始業、終業の時刻の決定を労働者に委ねる制度です(労働基準法第32 条の3)。

例えば、1日の所定労働時間を8時間、1カ月の所定労働日数を21日とした場合、1カ月の総労働時間は【8時間×21日=168時間】となります。そのため、1カ月の総労働時間を168時間として、日ごとの始業・終業の時刻を労働者自身が決めることができます。

一般的なフレックスタイム制は、1日の労働時間帯を、必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)と、その時間帯の中であればいつ出社または退社してもよい時間帯(フレキシブルタイム)とに分けています。朝方の人は朝早めに出社して、その分早く帰ることもできますし、また会議などは、社員全員が集まるコアタイムに行うことで「参加してほしかった人が帰ってしまっていない」という事態を防げます。

フレックスタイム制の注意点

フレックスタイム制においては、始業、終業の時刻を労働者の決定に委ねていますが、これは、使用者の労働時間の把握義務を免除したものではありません。そのため、フレックスタイム制を採用する場合においても、使用者はタイムカードやICカード等で各労働者の各日の労働時間を把握しておく必要があります。

フレックスタイム制の詳しい内容を確認する

労使双方にとって心地よい働き方を見つけよう

裁量労働制は、業務内容や職務などが限定されており適用できない場合もあります。そういった場合は、フレックスタイム制をうまく活用してみてはいかがでしょうか。「ほかの人がまだ働いているから帰りづらい」ということがなくなったり、「夜型」「朝型」など、自身の得意とする時間帯に働くことによって、残業時間を減らしたり、自分にとって心地よいワークライフ・バランスを作り出すことができたらいいですね。

著者紹介

岩野 麻子(いわの あさこ)

特定社会保険労務士・健康経営アドバイザー。社会保険労務士 岩野麻子事務所代表。青山学院大学法学部を卒業し、大手化粧品メーカーに勤務。2007年5月に東京都中央区にて開業し、現在はスタッフ数名と共に中堅・中小企業の労務管理や給与計算サポートなどを行っている。

座右の銘は「働く全ての人々にQOL(生活の質)の向上を」。最近では、健康経営の推進にも力を注いでいる。(2018年2月22日時点の情報です)

社会保険労務士 岩野麻子事務所 (https://www.iwano-sr.com)

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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