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「固定残業代制の、正しくない運用」とは!?

ルールを正しく運用して、裁量のある働き方を実現するために

厚生労働省によると、ハローワークの求人票で多い苦情の一つに「賃金に関すること(固定残業代を含む)」というものがあります。入社した後で「この月給には残業代が含まれているから、残業代は支払わない」と言われる「ブラック」なケースもあるようです。 

[2018年 4月16日公開]

法定時間外労働・休日労働とは

前回の続きになりますが、労働時間はそもそも「1日8時間・1週間40時間」を法定労働時間と定めており(労働基準法第32条)、これを超える労働は「法定労働時間外労働」または法定休日における「休日労働」となります。

裁量労働制に関する前回のコラムを確認する

2018年3月19日に公開した社会保険労務士コラムをご参照ください。

時間外労働または休日労働をさせようとする場合は36協定が必要

労働基準法第36条では、時間外労働・休日労働協定届(労働基準法第36条に規定されていることから、通称「36協定」と呼ばれています)を締結し、労働基準監督署長へ届け出ることを要件として、法定労働時間を超える時間外労働、休日労働を認めています。

ただし、この届け出をしたからといって、無制限に時間外労働等を認めるという趣旨ではありません。労働安全衛生管理上の観点からも、時間外労働は必要最小限にとどめられるべきものと考えられています。

割増賃金の支払いも必要

法定時間外労働と法定休日における休日労働については、通常支払われる賃金に加えて、別途割増賃金の支払いが必要です。

時間外労働の詳しい内容を確認する

時間外労働の詳しい内容については、厚生労働省ホームページをご参照ください。

固定(定額)残業代制の概要

固定(定額)残業代制とは、一定時間分の時間外労働に対して、定額で支払われる残業代のことです(契約内容によっては、休日労働および深夜労働に対する割増賃金を含む場合もあります)。

固定(定額)残業代制のメリット・デメリット

残業制度メリットデメリット
通常の残業代制【会社側】多く働いた分だけ残業代を支払えばよい。
【労働者側】頑張った分だけ残業代が多くもらえる。
【会社側】残業代の計算が比較的面倒。
【労働者側】無制限に残業を認めると、ダラダラ残業が定着してしまう場合がある。
固定残業代制【会社側】固定残業時間内に収まっていれば、残業代の計算が容易になる。
【労働者側】早く帰っても残業代がもらえるため、業務を効率化するモチベーションになる。
【会社側】残業していない場合でも、固定残業部分の残業代は支払わなくてはならない。
【労働者側】もともとの固定残業時間が長いと、働き方にメリハリがなくなる場合がある。

固定残業代制を正しく運用すれば、労働者にとっては、残業の有無にかかわらず一定額の残業代が支払われるため、業務を効率化するモチベーションにつながります。また、企業にとっても、残業時間が一定時間内であれば、残業代の計算が容易になる、というメリットがあります。

「ブラック企業」によくあるNG例

  • 採用募集時や入社時に固定残業代に関する説明がなかった。
  • 就業規則や雇用契約書に「固定残業代」に関する規程がないため、詳細が不明。
  • 雇用契約書に「残業代は基本給の中に含む」とあるが、何時間分の残業代なのか書いていない。
  • 既定の時間を超えた場合であっても残業代は支払われない。など

固定残業代を適正に運用するための条件

固定残業代制を適正に運用するためには、1~3を就業規則や雇用契約書等で明確に定める必要があります。

  1. 固定残業代部分が、それ以外の賃金と、明確に区分されていること。
    例:基本給(〇〇円)(固定残業手当を除く額)
  2. 固定残業代部分には、何時間分の残業代が含まれているのかが、明確に定められていること。
    例:〇〇手当(時間外労働の有無にかかわらず、〇〇時間分の時間外手当として〇〇円を支給)
  3. 時間外労働(残業)時間が、上記(2.)で定めた時間を超えた場合は、別途割増賃金の支払うこと。
    例:〇〇時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給。

固定残業代制を利用して業務効率化を進めよう

固定残業代制は、裁量労働制や、フレックスタイム制と相性の良い傾向があります。また一方で、通常の残業制とは異なるため、自社の社風に合うか検討したうえで導入されることをお勧めします。

もし、固定残業代制を採用することで、会社にも労働者にもプラスになるように業務効率化を進めることができたらよいですね。

著者紹介

岩野 麻子(いわの あさこ)

特定社会保険労務士・健康経営アドバイザー。社会保険労務士 岩野麻子事務所代表。青山学院大学法学部を卒業し、大手化粧品メーカーに勤務。2007年5月に東京都中央区にて開業し、現在はスタッフ数名と共に中堅・中小企業の労務管理や給与計算サポートなどを行っている。

座右の銘は「働く全ての人々にQOL(生活の質)の向上を」。最近では、健康経営の推進にも力を注いでいる。(2018年2月22日時点の情報です)

社会保険労務士 岩野麻子事務所 (https://www.iwano-sr.com)

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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