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緊急寄稿! 残業上限抑制ルールとは?

残業上限規制について、企業が真っ先に取り組むべきこととは?

働き方改革関連法案が、2018年6月29日に参議院本会議で採決され可決、成立しました。中でも、時間外労働(残業)の上限規制という、働く人の保護策を盛り込んだ点は注目を集めています。

[2018年 8月20日公開]

日本の働き方がガラリと変わる

これまで、時間外労働の上限規制の具体的な基準については、「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」という厚生労働省の告示により定められており、労働基準法には具体的な定めはありませんでした。

今回の法改正により、労働基準法という条文に格上げされることとなりましたが、実は時間外労働の上限規制の原則的な内容は、厚生労働省の告示からあまり変化してはいません。しかしながら、これに伴いフレックスタイム制の清算期間の上限の延長、年次有給休暇の時季指定、高度プロフェッショナル制度の創設などの大きな改正もあり、全体として、多様な働き方を推進すると共に、働く人の健康管理に関する規制が強化された内容となっています。

時間外労働の上限規制に関する改正点

原則(労働基準法 第36条第3項、第4項)

時間外労働の上限について、【月45時間、年間360時間】(1年単位の変形労働時間制の場合は【月42時間、年間320時間】)

例外(労働基準法 第36条第5項、第6項)

臨時的な特別の事情がある場合は、以下のとおり。

(1)時間外労働できる時間は【年間720時間】
(2)1カ月における時間外労働および休日労働できる時間は【100時間未満】
(3)繁忙期等である2~6カ月の対象期間中の時間外労働および休日労働については、1カ月当たりの平均時間は【80時間以内】
(4)原則である月45時間を超えることができる月数は【年6回まで】

上記例外のうち、(2)と(3)に違反した場合は罰則(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されます。

時間外労働の上限規制は、大企業では平成31(2019)年4月1日、中堅・中小企業では平成32(2020)年4月1日から施行される予定です。また、一部業種(自動車運転業務、建設事業、医師等)では、業務の特殊性から猶予期間を設けたうえで規制を適用する等の例外措置があります。また、研究開発業務については、医師の面接指導を設けたうえで、適用除外とできることとなっています。

時間外労働の上限規制に伴うその他の改定

労使協定の記載内容の明確化(労働基準法第36条第2項)

今回の法改正により、労働基準法において労使協定(36協定)で定める事項が具体的に列挙されるようになりました。記載内容に比較的大きな変更点はありませんが、提出時には再度記載漏れなどがないか確認するとよいでしょう。

割増賃金率の適用猶予措置の廃止(労働基準法附則第138条の削除)

月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率(50パーセント以上)については、中堅・中小企業への猶予措置が講じられていましたが、平成35(2023)年4月1日よりこの猶予措置が廃止される予定となりました。中堅・中小企業においては、月60時間を超える時間外労働をさせないか、月60時間を超える場合は、割増賃金率を現行の25パーセントから50パーセントに引き上げる必要があります。

残業上限規制への対応策

多様な働き方やワークシェアリングで残業時間を減らす

今までの業務配分や人員配置を見直し、週4正社員制度の導入や、パートタイム労働者の採用により、日々の業務を分散させておくことによって、繁忙期であっても一人一人の残業時間を軽減することができるようになります。

定額残業代で残業時間管理コストを減らす

時間外労働の上限規制の原則である月45時間分については、定額で残業代を支給することとし、実際の残業が月45時間に満たなかった場合でも支給することとした場合、毎月変動する残業代を計算する手間が省けます。一方で、月45時間を超えた分については別途残業代の支払いが必要となるため、月45時間を超えないよう日々の業務をやりくりすることで、残業時間の上限管理を労働者自身に行ってもらうことができます。

新しい労働基準法が施行される前に、現状の賃金制度や就業規則の見直しを行っておくとよいでしょう。

著者紹介

岩野 麻子(いわの あさこ)

特定社会保険労務士・健康経営アドバイザー。社会保険労務士 岩野麻子事務所代表。青山学院大学法学部を卒業し、大手化粧品メーカーに勤務。2007年5月に東京都中央区にて開業し、現在はスタッフ数名と共に中堅・中小企業の労務管理や給与計算サポートなどを行っている。

座右の銘は「働く全ての人々にQOL(生活の質)の向上を」。最近では、健康経営の推進にも力を注いでいる。(2018年2月22日時点の情報です)

社会保険労務士 岩野麻子事務所 (https://www.iwano-sr.com)

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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