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働き方改革は誰のため? 給与アップの鍵を握る労働生産性とは

労働生産性がアップすると、私たちの給与もアップする?

「働き方改革で残業代が減った分、給与の手取り額が減ってしまった」という声を耳にすることがあります。働き方改革で企業の生産性が向上したら、私たちの給与もアップするのでしょうか。

[2019年 9月17日公開]

用語の解説

労働生産性についてお話しする前に、まずは三つの用語をご説明します。

付加価値率

そもそも付加価値とは、生産によって新たに加えられた価値で、総生産額から原材料費・燃料費・減価償却費などを差し引いた額をいいます。

一方、付加価値率とは、売上高に占める付加価値額の割合をいいます。付加価値率が高い場合は、その企業が新しく創造した価値の割合が大きいと考えられます。

労働分配率

労働分配率とは、付加価値に占める福利厚生費を含む人件費の割合をいい、企業が付加価値のうち何パーセントを給与や社会保険料等に振り分けているかを示します。財務省の「年次別法人企業統計調査(平成29年度)概要」によると、近年は、営業純益が微増する一方、人件費は減少傾向にあります。

データ出典元:法人企業統計調査(平成29年度年次別調査)|財務総合政策研究所
(https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/h29.pdf)

労働生産性

労働生産性とは、従業員一人当たりの付加価値額をいいます。労働生産性が高い場合は、「労働の効率性が高い」といえます。計算式を見ると分かるように、従業員数がさほど増加していないにもかかわらず、付加価値額と給与(=人件費)のいずれも増加している場合は、労働生産性がアップしていると考えられます。一方、従業員数が増加しているにもかかわらず利益が伸びていない、無理な安売りなどにより営業純益を損ねている場合は、労働生産性の下押し要因となる可能性があります。

労働生産性向上の成果が出たら、給与や賞与も見直しを

労働分配率は中堅・中小企業において比較的高く、大企業において比較的低い傾向にあるといわれていますが、地域や業種によっても差があるのが現状です。給与アップのためには、単に労働分配率を上昇させるのではなく、まずは従業員一人当たりが生み出す付加価値額(労働生産性)をアップさせることが重要です。

一方、労働生産性が上がった分、残業時間が減り、結果として手取り給与額が減少する社員が出ることがあります。そのような場合は、能力の向上に合わせて来期からの給与を昇給する、会社や本人の業績に応じて賞与を増額するなど、頑張った社員へ還元することも忘れないようにしましょう。このような形で労働分配率が上昇することは企業と社員、双方にとって良いことといえます。

労働生産性を比較する

都道府県別、業種別、年代別の具体的な労働生産性を知りたい場合は、こちらもご参照ください。

労働生産性を上げるには?

労働生産性を上げる方法はさまざまですが、以下などが一例となります。

  • 部署ごと、店舗ごと、個人ごとの業務の棚卸しを行い、手順を再考する
  • ITシステムなどを導入し、業務の効率アップを図る
  • タイムマネジメント研修など、人材育成に力を入れる
  • 高いモチベーションと目的意識を持つよう、組織風土の改革を行う
  • 繁閑の差が激しい場合は変形労働時間制を、勤務時間が比較的自由ならテレワークを導入するなど、勤務スタイルを見直す

自社に合った方法を探りながら、できることから進めてみましょう。

生産性を向上し続ける組織となるために

人手不足が深刻化する中、限られた人員で最大限の効果を発揮する組織となることが、労働生産性アップの重要な鍵となります。

一方で、労働生産性を上げるためにシステムを導入する、売上高を増やすために事業規模の拡大を図る場合は、ヒト・モノ・カネ・情報にバランスよく投資することが大切です。その結果として、組織全体で真の意味での効率アップが図られるため、得られた利益の一部を社員へ還元することにより、その企業はより強い組織へと育っていくでしょう。

著者紹介

岩野 麻子(いわの あさこ)

特定社会保険労務士・健康経営アドバイザー。社会保険労務士 岩野麻子事務所代表。青山学院大学法学部を卒業し、大手化粧品メーカーに勤務。2007年5月に東京都中央区にて開業し、現在はスタッフ数名と共に中堅・中小企業の労務管理や給与計算サポートなどを行っている。

座右の銘は「働く全ての人々にQOL(生活の質)の向上を」。最近では、健康経営の推進にも力を注いでいる。(2018年2月22日時点の情報です)

社会保険労務士 岩野麻子事務所 (https://www.iwano-sr.com)

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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