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緊急寄稿! 同一労働同一賃金の導入で必要となる企業の対応とは

賞与が正社員だけに支給されるのは、「貢献度」が違うから?

皆さんの会社では、契約社員やパートタイマーにも賞与が支給されますか? もし、正社員にのみ一律で賞与が支給されるとしたら、そこに合理的な理由はあるのでしょうか。その理由が「貢献度が違うから」ということだとしたら、契約社員等はその期間「貢献度がゼロだった」ということでしょうか。

[2020年 1月20日公開]

「同一労働同一賃金」導入の背景

「同一労働同一賃金」は、通常の労働者(無期雇用・フルタイム)と、短時間・有期雇用労働者(契約社員やパートタイマーなど)の間の不合理な待遇格差を解消するため、パートタイム・有期雇用労働法に盛り込まれるルールで、2020年4月1日(中小企業は2021年4月1日)より施行されます。

従来、正社員は賞与や各種手当が支給され、退職金制度があり、能力や役割に応じて昇給していく一方で、契約社員やパートタイマーにはそういった制度がないことが多く、給与や待遇の格差が広がる一因となっていました。

出典元:厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査 雇用形態別」
(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2018/index.html)

そこで、このような不合理な格差を解消し、契約社員やパートタイマーがその仕事ぶりや能力を適正に評価され、給与などの待遇に格差を感じることなく意欲を持って働けるようにする目的で今回の導入がなされました。

同一労働同一賃金の考え方と企業に求められる対応

厚生労働省の指針(厚生労働省告示第430 号「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」)によると、短時間・有期雇用労働者に対して、必ずしも通常労働者と同じ賃金決定基準を設けることが求められているわけではありません。ただ、決定基準が異なる場合は、その決定基準の相違が不合理ではないことが求められています。

そのため、労働者から説明を求められたときに、合理的な理由をもってその差異を説明できるように、一度自社の賃金規定を見直してみるとよいでしょう。

考慮すべき3要素

合理的な理由であるか否かを具体的に判断するには、通常の労働者(無期・フルタイム)と有期雇用・短時間労働者について、以下の3要素を明確にし、その差異をできるだけ細かく分析し、対比してみてください。

  1. 職務の内容(業務の内容、および責任の程度)
  2. 人材活用のしくみ(職務の内容・配置の変更の範囲等)
  3. その他の事情(経営判断、能力・経験・職務の成果等の状況、労使慣行や社会的状況等)

賞与規定を見直す場合のポイント

賞与については、厚生労働省の指針によると、「賞与であって、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについて、通常の労働者と同一の貢献である短時間・有期雇用労働者には、貢献に応じた部分につき、通常の労働者と同一の賞与を支給しなければならない。また、貢献に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた賞与を支給しなければならない。」と定められています。

短時間・有期雇用労働者に賞与を支給しないことは、直ちに違法とはなりませんが、金額の多少にかかわらず何らかの手当等を支給することが望ましいでしょう。

合理的と認められる可能性が高い例

  • 雇用区分にかかわらず、全従業員に一律の基準で賞与が支給されている。
  • 正社員が、「目標達成した場合は賞与が支給されるが、達成しなかった場合は待遇上の不利益を課される」などの責任を負っている一方、短時間・有期雇用労働者はそのような責任を負っていないため、支給基準に相違がある。

問題となる可能性がある例

  • 正社員には、会社の業績等への貢献に応じて賞与を支給しているが、短時間・有期雇用労働者には支給していない。

退職金制度を見直す場合のポイント

退職金については現時点では具体的な定めはありませんが、ほかの給与等と同様に、不合理と認められる待遇差があれば解消することなどを求められています。自社の退職金制度を見直すに当たっては、正社員に限って退職金制度を適用することに合理的な理由があるか(例えば、「企業が長期雇用を前提とした正社員に対する福利厚生を手厚くし、有為な人材の確保・定着を図るなどの目的のため」など)、正社員以外にも退職金を支給している場合には、雇用形態ごとの不合理な待遇の相違がないかを確認しましょう。

例えば、正社員の退職金の約50%を限定正社員にも支給するが、雇用形態の異なる契約社員には退職金を支給しないこととした場合、その区別に合理性があるのか、雇用形態ごとの不均衡がないかをチェックしていきます。

就業規則の見直しも忘れずに

賃金規定の見直しを行う場合は、併せて就業規則の見直しも行うようにしましょう。特に、従業員の区分とそれぞれの職務、職責等の違いを明確に定義しておくことが重要です。

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著者紹介

岩野 麻子(いわの あさこ)

特定社会保険労務士・健康経営アドバイザー。社会保険労務士 岩野麻子事務所代表。青山学院大学法学部を卒業し、大手化粧品メーカーに勤務。2007年5月に東京都中央区にて開業し、現在はスタッフ数名と共に中堅・中小企業の労務管理や給与計算サポートなどを行っている。

座右の銘は「働く全ての人々にQOL(生活の質)の向上を」。最近では、健康経営の推進にも力を注いでいる。(2018年2月22日時点の情報です)

社会保険労務士 岩野麻子事務所 (https://www.iwano-sr.com)

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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