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ワーケーションの導入と労務管理のポイント

ワーケーションとは?

「ワーケーション」とは、働く(Work)と休暇(Vacation)を組み合わせた造語で、新たな働き方や休暇のスタイルとして、今注目されています。その背景には、IT技術の発展によりテレワークを中心とした時間や場所にとらわれない柔軟な働き方が普及したことがあります。

[2020年10月19日公開]

ワーケーションがもたらす効果

長期の休暇を取得するどころか、年次有給休暇の取得日数も伸び悩んでいる日本。これまでは、未取得の年次有給休暇をまとめて取得して長期休暇を楽しんだり、出張先にそのまま滞在し1週間ほど現地での生活を楽しんだりといったことは、なかなか難しいことだと考えられてきました。
しかしワーケーションを導入すれば、旅先から重要な会議にオンラインで参加したり、クライアントにメールを返信したりと、業務を滞らせることなく休暇を楽しむことができるかもしれません。

ワーケーションを始めるための四つのステップ

とはいえ、実際にワーケーションを導入している企業はまだまだ少ないのが現状です。どんなことに注意しながら制度設計し、運用していけばよいのでしょうか。

1.ワーケーションを導入する目的を明確にする

ワーケーションを導入する目的として、以下のようなものが挙げられます。

  • 年次有給休暇の取得促進
  • 長期休暇によるリフレッシュ効果
  • 家族や友人と過ごす時間を大切にしてほしい
  • 趣味や勉強に打ち込む時間の確保
  • 出張先にそのまま滞在し、休暇を楽しんでほしい

もし自社でワーケーションを導入するとしたら、その目的は何でしょうか?
休暇中でも普段と変わらない仕事量を求められるのであれば、「ワーケーション」ではなく単なる「テレワーク」「リモートワーク」になってしまうかもしれません。制度設計で悩んだら、まずはそもそもの目的に立ち返るようにしましょう。

2.ワーケーションの労働時間管理について定める

ワーケーションはあくまで休暇がベースの制度だと考えるならば、労働時間は休暇の趣旨を損なわない程度に短く設定すべきでしょう。
例えば、以下のように設定すれば休暇の質を落とさずに済むのではないでしょうか。

  • 毎朝1~2時間、メールチェックと必要最低限の業務だけを行う
  • 休暇中に行われる重要なミーティングにのみ参加する
  • 休暇のうち数日間は資料作りに集中する

ワーケーション中の労働時間は、テレワークに準じて始業・終業時刻を自己申告する場合が多いと思います。労働時間に関するルールがないと、全く仕事をしない人がいる一方、仕事に熱中して残業する人がいるかもしれません。幾つかのパターンを想定して、始業・終業時刻や労働時間の目安をあらかじめ設定しておくことをおすすめします。

3.「いつでも連絡が取れるように」は要注意

「ワーケーション中は、いつでも電話に出られるように」と言いたくなってしまいますが、これには要注意です。かかってくる電話を待っている時間は、労働基準法上は手待ち時間に該当し、全て労働時間とみなされる可能性があります。
ワーケーション中、いつ会社から電話がかかってくるか分からない状況では、旅先でも思うようにリラックスできません。
「急ぎの要件があれば連絡をするけれども、電話に出られなければ翌朝10時までに折り返し連絡をする」など、休暇の質を落とさないルールを事前に決めておくとよいでしょう。

会社側としても、「休暇中の従業員とはすぐに連絡が取れないかもしれない」という前提でその場合の対処方法などをあらかじめ決めておくと、BCP対策などにもつながっていきます。少しハードルが高く感じられるかもしれませんが、業務に関する情報共有方法の見直しなど、あらゆる角度から自社の弱点を洗い出すチャンスでもあります。

4.費用負担は? セキュリティは? その他のルールについても定めておく

ワーケーションには交通費、宿泊費、通信費などのさまざまな費用がかかります。通常のワーケーションの場合、交通費や宿泊費は従業員負担にし、通信費や旅先でのワークスペースの利用料金などは会社で負担してもよいかもしれません。

一方、ワーク(仕事)が主体のワーケーションの場合、リモートワークやテレワークの考え方を準用して宿泊費の一部も会社で負担するなど、会社の費用負担の割合を増やしてもよいかもしれません。細かい計算が面倒であれば「ワーケーション手当」として一律の金額を支給するのもよいでしょう。いずれにしても、費用に関することはあらかじめ明確に定めておく必要があります。

セキュリティに関しては、テレワーク同様、不特定多数の人が利用するWi-Fiなどセキュリティ対策が不十分な環境からアクセスするのはやめましょう。また、海や山など行楽地でワーケーションをする場合は、特にパソコンやスマートフォンの破損・盗難に注意が必要です。
パソコンの使用は宿泊先のホテル内や帰省先の実家に限るなど、セキュリティに関するルールもしっかりと決めておきましょう。

制度ができたら、従業員の理解を得ることが重要

制度ができたら、運用を開始する前にまずは従業員の理解を得るところから始めましょう。
働き方や休暇に対する考え方や価値観は、年代や立場、家族構成によって違いがある場合が多いと思います。どのような目的で導入するのか、また導入することで従業員にはどのようなメリットがあるのかなどを丁寧に説明し、適切な形で導入できるとよいですね。

著者紹介

岩野 麻子(いわの あさこ)

特定社会保険労務士・健康経営アドバイザー。社会保険労務士 岩野麻子事務所代表。青山学院大学法学部を卒業し、大手化粧品メーカーに勤務。2007年5月に東京都中央区にて開業し、現在はスタッフ数名と共に中堅・中小企業の労務管理や給与計算サポートなどを行っている。

座右の銘は「働く全ての人々にQOL(生活の質)の向上を」。最近では、健康経営の推進にも力を注いでいる。(2018年2月22日時点の情報です)

社会保険労務士 岩野麻子事務所 (https://www.iwano-sr.com)

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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