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変わりゆく副業・兼業の新しいルールとは

副業・兼業に対する考え方が変わりつつある

今、副業・兼業を容認する企業が急速に増えています。その背景には、副業・兼業に関するガイドラインの改定や労災保険法の改正などといった政府からの強い後押しの影響もあるようです。適切に副業・兼業を容認し、運用していくためには、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。

[2020年12月21日公開]

働き方改革で変わった、副業・兼業ルールとは

働き方改革関連法は2018年6月に成立し、2019年4月から順次施行されています。副業・兼業に関する考え方も、この前後で大きく様変わりしています。

厚生労働省の「モデル就業規則」では、当初「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」と規定されていました。その後、2018年1月の改定により「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」などと、副業・兼業を容認する内容に改定されました。
加えて、2020年9月に改定された「副業・兼業の促進に関するガイドライン(厚生労働省)」では、副業・兼業の容認がより現実的かつ具体的なものとなりました。

今回のガイドラインの改定では、労働者からの申告等に基づき、双方の就業先が労働時間を通算して管理すべきことや、通算によって時間外労働となる部分のうち、自社で労働させた時間については割増賃金を支払うべきことなどがあらためて明記されました。

契約形態が異なれば、取り扱いも異なる

副業・兼業時における労働者側の注意点として、契約形態(雇用契約と業務委託契約など)が異なると就業先での労働時間等の取り扱いが大きく異なることが挙げられます。具体的には、雇用契約は労働基準法等の保護を受けますが、業務委託契約は労働基準法、労災保険法等が適用されません。このため、2社の労働時間を合算して法定労働時間を超えていたとしても労働時間が通算されず、時間外労働の割増賃金は支給されません。また、業務中にけがをした場合も、労働者でないため労災保険の適用を受けることができないので注意が必要です。

 雇用契約(正社員、契約社員、アルバイト、パート等)業務委託契約(フリーランス、個人事業主等)
労働時間の通算必要不要
労働基準法の適用あり対象外
最低賃金法の適用あり対象外
労災保険の適用あり対象外
雇用保険・社会保険の適用所定労働時間による対象外
収入の内訳と確定申告の要・不要給与所得(年末調整をしない場合は、確定申告が必要)事業所得(年収20万円を超える場合は、確定申告が必要)

労災保険法改正のポイント

副業・兼業の増加を受けて、2020年9月、労災保険法も主に二つの点が改正されました。

全ての就業先の賃金額を合算した額を保険給付に反映

事業主が同一でない、複数の事業所に勤務する方に対する労災保険給付は、全ての就業先の賃金額を合算した額を基礎として、保険給付額を決定します。

例えば、A社で10万円、B社で15万円の給与を受けている方が、業務上で被災したとします。今までは、被災した就業先(A社で被災した場合はA社のみ、B社で被災した場合はB社のみ)の賃金額のみで保険給付額が算出されていたため、副業者の所得補償としては不十分でした。

そのため、今回の改正ではA社、B社いずれでけがや病気等をした場合であっても、A社とB社の賃金額を合算した額(今回の場合は25万円)を基に保険給付額が決まるため、十分な所得補償がなされると期待されています。

複数の就業先における業務上の負荷を、総合的に評価して労災認定

一つの就業先で労災認定できない場合であっても、事業主が同一でない複数の就業先の業務上の負荷(労働時間やストレス等)を総合的に評価して労災認定できる場合は、保険給付を受けられることになりました。

具体的には、今まではA社とB社の負荷を個別に評価し、いずれかの会社で労災認定されるときのみ保険給付が受けられました。今後は、いずれの会社で労災認定されない場合でも、A社とB社の負荷を総合的に評価して労災認定できる場合は保険給付が受けられることとなります。

副業・兼業申請書、届け出書に記載すべき内容

副業・兼業を希望する労働者がいる場合は、以下の内容を申請してもらい、守秘義務や競業避止義務等の観点から副業・兼業の可否を最終判断するのがよいでしょう。

なお、他社での契約形態が雇用である場合は、労働時間通算の対象となるため、4~8の事項についても確認し、各就業先と労働者との間で時間外労働の取り扱いについて事前に合意しておくことが望ましいです。

  1. 他社の事業内容
  2. 他社で従事する業務内容
  3. 他社での契約形態
  4. 他社との雇用契約締結日および雇用期間
  5. 他社での所定労働日、所定労働時間、始業・終業時刻
  6. 他社での所定外労働の有無、所定外労働の見込み時間数および最大時間数
  7. 他社における実労働時間等の報告の手続き
  8. これらの事項について確認を行う頻度

副業・兼業に関するルール作りはまだ始まったばかりですが、今後、副業・兼業は今まで以上にもっと身近なものになるかもしれません。
長い職業人生において、副業・兼業のルールをうまく活用できるとよいですね。

著者紹介

岩野 麻子(いわの あさこ)

特定社会保険労務士・健康経営アドバイザー。社会保険労務士 岩野麻子事務所代表。青山学院大学法学部を卒業し、大手化粧品メーカーに勤務。2007年5月に東京都中央区にて開業し、現在はスタッフ数名と共に中堅・中小企業の労務管理や給与計算サポートなどを行っている。

座右の銘は「働く全ての人々にQOL(生活の質)の向上を」。最近では、健康経営の推進にも力を注いでいる。(2018年2月22日時点の情報です)

社会保険労務士 岩野麻子事務所 (https://www.iwano-sr.com)

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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