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パワハラ防止法の改正と最近のハラスメント事情

ハラスメントの増加と複雑化

厚生労働省によると、2019年度の「総合労働相談コーナー」への職場のいじめ・嫌がらせに関する相談は8万件を超え、全ての相談の中で8年連続トップとなっています。また、近ごろでは「リモートパワハラ」などハラスメントの実態がより見えにくく、複雑化しています。

[2021年 2月15日公開]

パワハラ防止法の改正

労働施策総合推進法(正式名称「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」、通称「パワハラ防止法」)の改正により、職場におけるパワーハラスメント防止対策が2020年6月1日(中小企業は2022年4月1日)から義務化されました。これにあわせて、男女雇用機会均等法は2020年6月1日、育児・介護休業法は2021年1月1日にそれぞれ改正されています(中小企業も同じ)。これにより職場におけるセクシャルハラスメントや妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント等の対策も事業主の義務となりました。

パワーハラスメントの六つの類型

パワーハラスメントとは、「(1)優越的な関係を背景に」「(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により」「(3)就業環境を害する、または身体的・精神的な苦痛を与えること」で、(1)~(3)までの要素を全て満たす行為をいいます。なお、客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、これに該当しません。

最近では「リモートパワハラ」という言葉も耳にしますが、具体的にどのような言動がパワハラに該当するのでしょうか。厚生労働省の指針にある代表的な言動6類型を基に、社内だけでなく在宅勤務やリモートワークも想定しご説明します。

1.身体的な攻撃(暴行・傷害)

該当する例
  • 殴打、足蹴りを行うこと
  • 相手に物を投げつけること
該当しない例
  • 誤ってぶつかってしまった

2.精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損<きそん>・侮辱・ひどい暴言)

該当する例
  • 人格を否定するような言動をすること
  • ミーティング中に、ほかの参加者がいる前で、必要以上に長時間威圧的な叱責(しっせき)を繰り返すこと
  • 相手を否定したり、罵倒したりするようなコメントをグループチャットに流すこと
該当しない例
  • オンラインミーティングに毎回遅刻したり、失念したりするなど、社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない者に対して、一定程度強く注意をすること
  • 本人の重大な過失で情報漏えい等の大きなミスが発生したため、一定程度強く注意をすること

3.人間関係からの切り離し(隔離・仲間外れ・無視)

該当する例
  • 自身の意に沿わない従業員を合理的な理由もなくミーティングに招集せず、その者の業務に支障を来すこと
  • グループチャット上で特定の従業員のコメントに対して、メンバー全員で意図的に無視し続け、孤立させること
該当しない例
  • 新規採用した従業員を育成するために、別室にて短期間集中的に研修等の教育を実施すること
  • 業務効率向上のために、当該プロジェクトに関係のないメンバーをミーティングに招集しないこと

4.過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制する・仕事の妨害)

該当する例
  • 新卒採用者に対して、必要な教育を行わないまま在宅勤務をさせ、到底達成できない業績目標を課し、達成できなかったことに対して厳しく叱責すること
  • 在宅勤務中の部下に対して、管理職が過剰な頻度で報告を求めるなど不適切に干渉し、すぐに連絡に応じないと「サボっている」とみなし、過度に叱責すること
該当しない例
  • 部下を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること
  • 繁忙期による業務上の必要性から、担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること
  • 緊急かつ重要な案件について、在宅勤務中の部下に至急対応を求めると同時に、適宜報告を促すこと

5. 過小な要求(合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる等)

該当する例
  • 管理職の従業員を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること
  • 気に入らない部下に対して、嫌がらせのために仕事を与えないこと
該当しない例
  • 部下の能力に応じて、業務内容や業務量を一定程度軽減すること

6.個の侵害(私的なことに過度に立ち入る)

該当する例
  • オンラインミーティング時に在宅勤務者の意に反して、バーチャル背景を設定させないこと(部屋の中を見る目的)
  • 従業員の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、本人の了解を得ずにほかの従業員に暴露すること
該当しない例
  • 従業員への配慮を目的として、本人の家族の状況等についてヒアリングを行うこと
  • 本人の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、従業員の了解を得て人事労務部門の担当者に必要な範囲で伝達し、配慮を促すこと

パワハラ対策の七つのポイント

パワハラ対策について、取り組みスケジュールの一例をご紹介します。

表内(1)経営者メッセージの一例です。ご参考ください。

また(3)実態の把握には、以下厚生労働省Webサイトの「社内アンケート例等」をご活用ください。

ハラスメント関係資料ダウンロード(厚生労働省のWebサイトが開きます)

パワハラ対策は繰り返し地道に取り組むことが重要

近年では「年下の上司」や「年上の部下」なども珍しくなくなり、豊富な知識や経験を持つ年上の部下からの言動を重く受け止めてしまい、年下の上司が自殺に至るケースもありました。

今後、テレワークやフリーランスの活用などにより労働者の就業環境が多様化すればするほど、今まで以上にハラスメントも複雑化して、顕在化しにくくなる可能性があります。そうならないように、今のうちからハラスメントをしない、許さない環境を整備することが重要です。

著者紹介

岩野 麻子(いわの あさこ)

特定社会保険労務士・健康経営アドバイザー。社会保険労務士 岩野麻子事務所代表。青山学院大学法学部を卒業し、大手化粧品メーカーに勤務。2007年5月に東京都中央区にて開業し、現在はスタッフ数名と共に中堅・中小企業の労務管理や給与計算サポートなどを行っている。

座右の銘は「働く全ての人々にQOL(生活の質)の向上を」。最近では、健康経営の推進にも力を注いでいる。(2018年2月22日時点の情報です)

社会保険労務士 岩野麻子事務所 (https://www.iwano-sr.com)

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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