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「雇用シェア」ができる、産業雇用安定助成金とは

「雇用シェア」ができる、新しい助成金

産業雇用安定助成金は、2021年に創設された新しい助成金です。企業間の人材マッチングによる「雇用シェア(在籍型出向)」で、出向元だけでなく、出向先も助成金による支援を受けることができます。

[2021年 4月19日公開]

産業雇用安定助成金の概要

産業雇用安定助成金は、新型コロナウイルス感染症の影響により、事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、通称「雇用シェア(在籍型出向)」により労働者の雇用を維持する場合に、出向元と出向先の双方の事業主に対して助成をするものです。

産業雇用安定助成金と、雇用調整助成金が大きく異なる点は、人手不足を解消したいと考え、出向者を受け入れる出向先もまた助成金による支援を受けられる点です。支援の内容は、出向者が出向先で働く際の賃金はもちろんのこと、出向に伴う就業規則や雇用契約書の整備にかかる費用や教育訓練費用までも助成対象となります。これにより、要件に当てはまれば、出向する社員の給与の約9割を助成金で賄うことが可能です。

受給できる額と助成率

出向元、出向先の事業主が受給できる助成は以下の二つです。

1.出向運営経費:出向中に要する賃金等の経費の一部を助成

出向元、出向先の事業主が負担する出向者の賃金や、教育訓練に要する費用、労務管理に関する調整経費などを助成します。

 中小企業中小企業以外
出向元が解雇等を行っていない場合10分の94分の3
出向元が解雇等を行っている場合5分の43分の2
上限額(出向元・先の計)12,000円/1人1日

2.出向初期経費:出向成立のために行った措置について助成

就業規則や出向契約書の整備費用、出向元事業主が出向に際してあらかじめ行う教育訓練、出向先事業主が出向者を受け入れるための機器や備品の整備などの購入等について、1人当たり10万円を定額で支給。

*なお、一定要件の下で、1人当たり5万円を定額で加算する制度あり。

受給までの流れ

受給までの一般的な流れは以下のとおりです。

1.出向の計画を立てる

出向元事業主と、出向先事業主との間で、出向期間、出向中の労働者の処遇、出向労働者の賃金額、出向元・先の賃金等の負担割合などを定めた出向契約を結び、出向予定者の同意を得る。

2.出向計画届を提出する

出向開始日の前日(可能であれば2週間前)までに都道府県労働局またはハローワーク(以下、労働局等)へ提出。手続きについては、出向先事業主が準備した書類も含めて、出向元事業主が行う。労働局等で要件の確認を行う。

3.出向を実施する

労働者ごとの出向期間は、1カ月以上かつ2年以内で、出向元に復帰するものであること。出向中の賃金は、事前に取り決めた内容で出向者に支給する。

4.支給申請する

1カ月以上6カ月以下の任意で設定した期間(月単位)ごとに、出向元と出向先が共同事業主として支給申請書を作成し、出向元事業主が労働局等に提出。

5.助成金の支給が決定

支給申請書に基づき、労働局により審査が行われ、出向元、出向先各事業主に助成金が支給される。

対象となる「事業主」とは

支給対象となる事業主の要件は以下のとおりです。

  1. 出向元が雇用調整を実施すること。具体的には、新型コロナウイルス感染症に伴う経済上の理由により、売上高等が一定以上減少しているため(生産量要件)、労使間の協定に基づき、出向を実施すること
  2. 出向先は、解雇等や雇用量の減少がないこと。出向期間の開始日の前日から起算して6カ月前の日から支給申請を行う支給対象期の末日までの間において、事業主都合(解雇、退職勧奨等)により離職させていないこと。また、玉突き出向を行うなどで、雇用保険被保険者数および受け入れている派遣労働者数による雇用量を示す指標(雇用指標)が一定以上減少していないこと(雇用量要件)
  3. 出向元、出向先共に雇用保険適用事業所であること
  4. 出向元、出向先共に資本的、経済的、組織的関連性からみて、独立性が認められること
  5. 出向元、出向先共にこの助成金と趣旨の類似する助成金を受給していないこと
  6. 出向元、出向先共に不支給要件(風俗営業等関係事業主等)に該当しないこと

対象となる「労働者」とは

支給対象となる労働者の要件は、以下のとおりです。

  1. 初回出向日の前日時点において、出向元事業主に引き続き雇用保険被保険者として雇用された期間が6カ月以上であること
  2. 退職願を提出している等の退職予定者でないこと

対象となる「出向」とは

支給対象となる出向とは、以下のとおりです。

  1. 出向労働者の同意を得たものであること
  2. 対象期間内に実施されるものであること
  3. 労働者ごとの出向期間が1カ月以上2年以内で、出向元に復帰するものであること
  4. 出向元または出向先が出向労働者の賃金の全部または一部をそれぞれ負担していること
  5. 出向労働者に出向前に支払っていた賃金と同等の額の賃金を支払うものであること
  6. 出向元から出向先に出向させ、かつ、出向先で就労するものであること。なお、同一出向期間内で異なる二つ以上の出向先に就労させることはできない
  7. 労働組合等によって出向の実施状況について確認を受けること
  8. 出向元、および出向先事業主双方がそれぞれ支給要件を満たすこと

最新の要件については、厚生労働省のWebサイトでご確認ください。

産業雇用安定助成金(厚生労働省のWebサイトが開きます)

企業の実情に合った対応で、コロナ禍を賢く乗り切ろう

新型コロナウイルス感染症の影響で、従業員の仕事がない企業がある一方、人手不足に陥っている企業もあります。国は、送り出し企業と受け入れ企業を出向マッチングという形でつなぐことで、人材育成や労働市場の流動化を図ろうとしています。アフターコロナを見据えて、今年は賢く助成金を活用してみてはいかがでしょうか。

著者紹介

岩野 麻子(いわの あさこ)

特定社会保険労務士・健康経営アドバイザー。社会保険労務士 岩野麻子事務所代表。青山学院大学法学部を卒業し、大手化粧品メーカーに勤務。2007年5月に東京都中央区にて開業し、現在はスタッフ数名と共に中堅・中小企業の労務管理や給与計算サポートなどを行っている。

座右の銘は「働く全ての人々にQOL(生活の質)の向上を」。最近では、健康経営の推進にも力を注いでいる。(2018年2月22日時点の情報です)

社会保険労務士 岩野麻子事務所 (https://www.iwano-sr.com)

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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