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人材開発[研修]の最前線

会社に必要な人材は全社で育成

少子高齢化で労働人口が減少していく中、企業での人材育成の課題は徐々に大きくなっています。企業で活躍する人材はどのように育成すればよいのでしょうか。

[2018年 9月26日公開]

人材育成の実際

自社の業務を遂行・発展させていくうえで、その中心を担う「人材」の育成は大きな課題です。安定して業務を行うためには人材の育成は欠かせません。では、企業では人材育成にどのように取り組んでいるのでしょうか。
採用編に続いて、この点について企業の人材開発のご担当者にインタビューを行い、人材育成の現状と課題をお聞きしました。

人材育成(研修)はどのように行っているのか

採用編と同じく、東京都内に本社を構える3,000名規模の企業の人材開発部門のご担当者の方から、匿名を条件として人材育成担当者Tさん(以下Tさん)に研修の実際をお聞きしました。

【 研修実施の概要 】
この会社では、内定段階からさまざまな研修に取り組んでいます。

内定者研修
10月の正式内定とあわせて内定者研修を実施(2カ月に1回程度)。
合宿形式や研修会場での座学など、入社後の職種の理解、社会人としての基本マナーを学びます。
新人研修
4月1日の入社後6月末までの3カ月間実施。内定者研修に続き、さらに詳細な業務内容と基本スキルを学びます。1カ月間は全員同じプログラムで教育し、2カ月目以降は職種別に分かれて、職種に必要なスキルを学びます。
フォローアップ研修
7月に部署に配属後、毎月1回フォローアップ研修を行い、入社2~3年目は、年間2回研修を実施します。主に新しい商材の知識を取得したり、提案の方法をディスカッションしたりしています。
階層別研修
階層別研修は、主任昇進研修が最初になります。最短3年で主任に昇格します。続いて、係長・課長・次長昇格者研修となります。
昇格すると役割が少し変わります。例えば売り上げの数字も自分の分だけではなくて、チーム全体の売り上げを管理するとか、チームの後輩の面倒を見るとか、役割の変化に対応して研修を行います。
同様にマネージャー研修も、マネージャー昇格時に行います。
それ以外の研修
一般社員(昇格者以外)も、対象者を選定して研修を行います。
自由参加研修
福利厚生の一環として自由参加の著名人講演会を行っています。興味があって得るものがあると思った社員は誰でも参加でき、毎回数百名の方が参加されます。自発的に研修に取り組むという仕組みを作っています。

全社共通のスキルは人事部門で、業務は専門部署の担当者が講師となる

インタビュアー

さまざまな研修が行われているようですが、研修の講師はどのような方が担当されていますか。

Tさん

新人研修は、職種問わず社会人として必要なスキルを研修していますので、私たち人材開発担当者で研修を行います。そこから各職種の研修を行う際は、各部署にいる(人材開発部以外の)教育担当者にバトンタッチをして、新人研修でやったことをしっかりと引き継ぎつつ、それぞれの職種について研修を行っていただきます。

インタビュアー

社外の講師に依頼することはありますか。

Tさん

あります。専門的なスキルを研修する際は外部の専門家を呼んで研修を行っていますが、その割合は減っています。その理由はコスト的なことにあります。弊社の場合新入社員が100名ほどいますので、全員に外部の方の研修を行うと多額の費用がかかります。そのため、できる限り自分たちで研修内容を作成して自分たちで講師も行うことにしています。ここ7~8年で、研修についてもいわゆる「内製化」が進んできました。

インタビュアー

各部署の教育担当者の方を教育する仕組みはありますか。

Tさん

はい、あります。例えば営業職の場合は、直接的な営業担当者ではなく製品プロモーションを行っている部署がありますので、そこの商材に詳しい人間が講師を務めます。その部署の中ではプレゼンテーションの仕方を教育し、相手に正しく理解してもらうために必要なスキルを研修しています。ですから、プレゼンテーション研修を受けた担当者が新人研修で講師を行えるのです。

年々早まる傾向のOJT研修の実施開始

インタビュアー

新入社員の場合、新人研修を終えた後でOJTを行っているのでしょうか。

Tさん

そうです。ただし、近年は早めにOJTを開始するようにしています。なぜなら、座学で研修を受けていると、入社した本人たちが「働いているんだ」という実感がなかなか得られず、知識だけ詰め込む形となりがちで、業務の話をしても自分事として捉えられないということがあるためです。

配属より早いタイミングの4月に1~2日現業の部署に行って実際に業務に携わってもらい、先輩たちの働き方を見て、自分たちは配属されたらこのような仕事をするというイメージを持ってもらいます。そのイメージを持ったまま、続く研修を受けると講師の話している内容が理解しやすくなり、現場で活用するイメージが湧きます。そのため現在では、この仕組み(早めのOJT開始)をとても大事にしています。

新人研修期間中は月に1回現場でOJTを行っています。期間は1~2日が基本ですが、長い時では1週間ぐらいOJTを行うスケジュールもありますよ。

研修の効果はどのように把握するのか

インタビュアー

研修効果はどのように測定していますか。

Tさん

まず新人研修の効果は、現場にOJTに行った際と7月1日に現場に配属されたときに、基本的なマナーとか基礎的な職種ごとのスキルが正しく生かされているかという声(評価)が現場から上がってきます。ここで研修の効果を把握しています。

研修効果を数字で表すのは多岐にわたり困難なため、配属された部署の上司やマネージャーに「今年の新人はどうですか?」などとヒアリングしています。

また、新入社員に対して研修のアンケートを採ることはあります。もう少しこの内容を説明してほしいとか、良かった点と改善してほしい点を声として聴いて効果測定の機会としています。

インタビュアー

改善点の要望で多いのはどんなことですか。

Tさん

今は、「配属後すぐ活躍できるようにしてほしい」という即戦力化が求められています。
かなりハードルが高い要望ですが…(笑)。
その声を受けて職種別の研修内容を増やしています。その職種で現場に出てすぐに先輩の言っていることを理解するとか、お客様先で商談するお相手としっかり会話でき、何か商材を提案できるとか、そういう商品面とマナー面含めてしっかりとすぐに活躍できる人材の研修が求められています。

あとは社内システムですね。PCを使って業務することが増えていますので、PCの操作スキルというのが求められるようになってきました。以前は営業だけできれば(PCスキルはなくても)よいと言われたこともありましたが、現在では、社内システムを使用して見積書を作成したり、パワーポイントで提案書を作ったり、エクセルで比較表を作るというようなPCスキルを研修するように現場から要望されています。

インタビュアー

今の学生さんはPCスキルがあるのではないでしょうか。

Tさん

今の学生はスマホ・タブレットで育っているので、PCは持っていない学生が多いのです。学校で少し触っている程度です。スマホ感覚ですのでPCを使用した後電源を切ることを知らず、ログオフしないで帰宅したケースもありました。

PCの操作とスマホ・タブレットの操作は違いますね。SNSというようなコミュニケーションツールの使い方には慣れていますが、PC上のソフトやPC自体の機能に関してはあまり得意ではないようです。PCが小型化高機能化していることもあるためPCの基本的な仕組みを理解するのは難しくなっているかもしれません。ハードウェアとOSを理解しないと本当に使いこなすのは難しいですね。

どのような人材をどのように育てるのか

インタビュアー

人材教育を行ううえで、育てる人材のイメージや指針がありましたら教えてください。

Tさん

研修ステージによって求められる人材のスキルは違います。会社が期待している人材をイメージするのが半分、そのステージに上がる人材が抱えている課題を解決することが残り半分、といった感じでしょうか。その両面をクリアにできるよう、具体的な研修プログラムを検討します。

例えば、新人研修であれば、新入社員の傾向や課題は前述のように「PCスキルの不足」です。ただ、その解決に終始するのではなく、現場が期待する「即戦力(基本マナー、顧客対応力、商品知識)」をどう結びつけるかが重要になります。

インタビュアー

人材を育てる場としての研修は、どんな雰囲気で行われているのでしょうか。

Tさん

以前は厳しい雰囲気で研修を行っていたこともあるようですが、現在は、一律に厳しくしても本人たちに伝わらなければ意味がないので、どのようにアプローチすれば伝わるのかを考え、段階に応じて雰囲気も変えるようにしています。「これを皆でやっていこう」と決めたことができていないときは厳しく指導します。そうでないときは、みんなで和気あいあいと研修するというふうに「北風と太陽」を使い分けています(笑)。

研修の実施ではメリハリをつけ、ダラダラやらないことも重要だと思います。
特に配属後の研修は、いろいろと多忙で仕事を抱えた社員が対象なので、研修時間がオーバーすると実務に支障が出がちです。そのため1日でやっていた研修を半日にするなど、効果が下がらなければ短期間・短時間で効率よく研修を行うことを主眼に、毎年検討を重ねて研修のバージョンアップを図っています。

会社全体で人材を育成するのが理想

インタビュアー

今後研修教育がこのようになればよいという期待や希望はありますか。

Tさん

今取り組みを開始していますが、弊社は部門が多岐にわたっているので、共通要素は人材開発部門で教育を行い、それぞれの専門スキルについては各部門・部署や地域の拠点で教育を行うというように、しっかりと業務を分かっている人が若手メンバーに教えていく体制や組織を作っていきたいです。

会社全体で人材を育てる風土ができれば理想です。人材開発部は教えるという業務のほかに各部署から教育相談を受ける業務が多くなればよいと思います。また、部署によって人材育成については温度差がありますので、その差を埋めながら会社全体で人を育てていければと思っています。

インタビューまとめ「企業ブランディングと人材育成」

人材の育成は、どの企業でも大きな課題となっています。
人の育成には多くの時間と費用がかかります。しかもすぐに効果が実感できません。
しかし、インタビュー先の会社のように、内定段階からきめ細かな研修を実施すると、少しずつ研修の成果が感じられるようになります。

何より重要なのは会社が何を目指し、そのためにどんな人材が求められるのかを明確にして社員全員が共有することです。これはまさに企業ブランディングの内部的実践といえるでしょう。研修はスキルの伝達だけでなく、会社を語り合うコミュニケーションの場であり、企業ブランディングを醸成する場でもあります。

教育・研修は会社の持つ知識や経験・ノウハウを効果的に伝達し、互いの絆を深めアイデンティティーを形成する機会として優れた効果を発揮します。

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著者紹介

マネジメントリーダーWEB編集部

企業を活性化する総合マネジメント情報サイト「マネジメントリーダーWEB(http://www.mng-ldr.com/)」を企画・運用。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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