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有給休暇取得義務化と買い取り・時季指定

2019年より有給休暇の取得(5日/年)が義務化されます

働き方改革関連法の成立で、2019年4月1日より有給休暇を5日取得することが義務化されます。違反すると罰則が発生しますが、買い取りや時季指定ができるかについて解説します。

[2018年11月28日公開]

働き方改革と有給消化率の向上

生産効率を上げ、長時間労働や無休労働をすることなく、疲労やストレスを軽減し健康に働くことを目指す働き方改革が進んでいます。ですが現段階では有給休暇の取得状況は平均で49.4%(注1)と半分以下の状況です。

  • (注1)厚生労働省「平成29年就労条件総合調査の概況」p.7 参照。

このような状況を改善すべく、働き方改革関連法が成立しました。平成31年(2019年)4月1日より、有給休暇を得ている従業員に対して会社は年5日の有給休暇を取得することが義務化されます。これに違反すると6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
仮に従業員50人が有給休暇の消化が5日以下の場合、最大で1,500万円の罰金が科せられることになり、経営に大きな影響を及ぼすことになります。また懲役刑にならないまでも、書類送検されれば助成金などの申請や受け取りができなくなるだけでなく、企業評価や信頼を大きく損なう恐れもあります。

有給休暇制度とは

ここで有給休暇の仕組みについて整理します。

「有給休暇」とは文字通り労働者が給与を得ながら休暇を取得することです。労働者が会社指定の休日以外に任意に休むことで心身共にリフレッシュするための権利として付与されています。

具体的には6カ月以上勤務し、そのうち8割以上出勤した労働者に10日の年次有給休暇を付与しなければなりません(労働基準法39条1項)。
さらに、1年6カ月勤務すると1日追加され11日、2年6カ月で12日、3年6カ月からは2日増え14日、4年6カ月で16日、5年6カ月で18日、6年6カ月では20日となります。以降は20日で変わりません(労働基準法39条2項)。

このように、有給休暇は労働者の権利として法律で保障されているため、労働者は原則として希望する日に有給休暇を取得することができ、取得の理由を会社に示す必要はありません。

有給休暇の時季指定

有給休暇の取得日を会社側が具体的に○月○日と特定することを「時季指定」と呼びます。
働き方改革関連法により、会社は有給休暇のうち5日間は労働者ごとに時季を定めて付与することが義務化されました(労働基準法39条7項<改正後>)。

つまり、有給休暇のうち5日間については労働者が有給休暇の希望日を申請するのではなく、会社が時季指定し有給休暇を取得させることが必要となったわけです。
そのため、その5日間についてはある意味で「会社の指示」という形になり、会社に遠慮することなく有給休暇を取得することができるのです。

時季指定変更権

労働者は会社の業務状況にかかわらず任意に休暇を取得することが可能ですが、繁忙期など休まれると会社運営に支障が出る場合に、別の時季に有給休暇を与えることができる時季変更権が会社側には定められています(労働基準法39条5項)。
しかし、実際には会社が労働者の休暇取得のために代替要員の確保や設備・環境の改善などの努力や配慮がなされたかなど客観的に納得できるさまざまな理由が問われるため、長期にわたる休暇の取得以外で、会社が時季変更権を行使できる条件は高いものとなっています。

有給休暇の買い取り

有給休暇は労働者が心身の疲労を回復するために取得するとされているので、金銭によって代替えすることは違法行為となります。従って在職中の社員の有給休暇を買い取ることはできません。
ただし、会社が労働基準法に定めた日数を超える有給休暇を付与している場合、法令を超えた分の有給休暇日数について買い取ることは可能です。また、取得請求権の時効となる2年(注2)(労働基準法115条)を超えて消滅した有給休暇の買い取りを行うことは違法ではないと解釈されています。

有給休暇の買い取りが問題となるケースは退職時が多くなっています。退職によって有給休暇の請求権も消滅しますので、退職時に消化できなかった有給休暇を買い取ることは会社の判断となります。この場合も買い取り義務はありませんし、買い取り金額の基準もありません。買い取る場合は退職者との話し合いで決めることになります。

  • (注2)民法の改正により時効期間が原則5年となったため(2017年6月公布、2020年4月施行)、有給休暇の時効も2020年から5年となる可能性があります。

有給休暇の消化を促進するために

有給休暇の消化率は年々高くなっていて、さらに有給休暇の消化の義務化によってその動きに拍車がかかると思われます。残業や休日出勤が多くなることで疲労やストレスが蓄積し病気になったり、メンタルの不調に陥ったりするリスクが発生します。その場合、疾病した本人はもとより会社業務にも大きな影響を与えます。休むときはきちんと休んで私生活を充実することで、仕事に対しての意欲も高まり生産効率も向上します。そのために有給休暇を効果的に取得することが望まれているのです。

多くの企業の人事担当者は、有給休暇の消化率は個人差があるといいます。それはつまり、仕事と休暇を計画的に効率よくこなすことができる人と、目先の業務に流されてしまう人との差のようです。
会社が率先して計画的に有給休暇を定めることで、仕事と私生活のリズムを作り有給休暇の取得率を上げることができます。おすすめの方法として「年次有給休暇の計画的付与制度」があります。

年次有給休暇付与制度

有給休暇の5日を除いた残りの分は、労働者の代表もしくは労働組合との労使協定締結により計画的に休暇取得日を指定して割り振ることができます。有給休暇の5日は病気など不慮の場合に備えて必ず残しておく必要がありますが、残りについては計画的付与の対象にできます。有給休暇が10日ある場合は5日、20日ある場合は15日まで計画的に休ませることができます。

全社一斉の付与

会社を休業として全社員が一斉に休暇を取ることです。夏休みや年末年始、創業記念日や連休の谷間を休みにして連休期間を長くするなどの方法があります。製造業の場合工場の稼働を止めて全社一斉に休みとする場合がありますが、これに準じるものです。取引先などに影響の少ない日を指定し、全社休業期間を社内外にあらかじめ周知しておくことでマイナスの影響を回避します。

グループ別の交代制付与

業務の関係で全社一斉に休むことができない場合は、部署やグループ単位で休む制度です。会社機能を最低限維持しながら休むことができるため導入する企業が増えています。

個人別付与

例えば、5年勤続で5日、10年勤続で10日など勤務年数に応じて連続休暇の取得を義務付けたり、誕生日や結婚記念日などの記念日を休みにしたりして付与します。会社のルールとして休暇を指定するため気兼ねなく休むことができます。

上記以外にも、通院や育児・介護に便利な時間単位の有給休暇を設けるなど取得を促進する制度がありますので、検討してみてはいかがでしょうか。

また、大切なのは「休むことを奨励する」企業風土の形成です。業績を落とすことなく休むためには業務を効率よくこなすことが必須です。よく働き、よく休むことを会社全体で実践して収益向上を目指しましょう。

有給消化率を上げるには

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著者紹介

マネジメントリーダーWEB編集部

企業を活性化する総合マネジメント情報サイト「マネジメントリーダーWEB(http://www.mng-ldr.com/)」を企画・運用。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。