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倒産を回避する緊急対応マニュアルの整備

緊急対応マニュアルを整備し、事業継続の鍵となる素早い復旧を目指す

国内においては今なお、将来的に大規模な地震が起きる確率が高いと想定される地点が数多くあります。また、自然災害も多発しています。被災しても事業継続できるようにするためには緊急対応マニュアルの整備が欠かせません。

[2019年 6月26日公開]

企業を取り巻く最大のリスクは、大規模な自然災害

企業活動を行ううえでは、さまざまなリスクが伴います。製品の不具合や従業員の不祥事、トラブルや事故、事件に巻き込まれるといったものから、不況や法律改正などの社会環境の変化によるもの、軽微なものから会社存続に関わる大きな事態まで、いつ何が起きても不思議ではありません。

中でも、地震をはじめとする大規模な災害は、企業だけでなく広範囲なエリア全体が深刻な影響を被ります。記憶に新しい東日本大震災での関連倒産件数は、2011年3月から2018年2月まで84カ月連続で発生し、累計は1,857件(2018年2月28日現在)に達しています。
また、「震災」関連の倒産企業の従業員被害者数は、2018年2月28日現在で2万8,597人に達しています。1995年の「阪神・淡路大震災」時は4,403人(3年間で集計終了)なので、単純に比較すると、約6.5倍となっています。
倒産企業の地域別集計では震源に近く甚大な被害を受けた東北3県(宮城・岩手・福島)が高い確率で上位を占めているだけでなく、島根県を除く全国46都道府県で関連倒産企業が発生しています。

  • * 出典:株式会社東京商工リサーチ、Webサイト 2018年3月1日公開 「“震災から7年”「東日本大震災」関連倒産状況」

このように、地震などの大規模な自然災害では人命や施設の直接的な被害だけにとどまりません。販売先や仕入れ先をはじめとする関連企業や電力、交通などのインフラも大きな被害を受け、影響は長期化します。このため、企業は自社内だけの被災想定だけではなく、事業継続に関わる全てにおいて対応を検討する必要があります。

突然発生する緊急事態は、経営基盤の脆弱な中堅・中小企業では倒産や事業縮小のリスクが生じます。緊急対応マニュアルを整備し、緊急事態が起きても早期に復旧することで、事業継続だけでなく企業価値の維持・向上につながります。

効果的な緊急対応マニュアルの作成

緊急対応マニュアルは、事業継続(BCP)の一環として整備します。そのため経営方針の延長上で基本方針を定めます。

1.基本方針の立案

  • 人命(ステークホルダー)の安全を守る
  • 自社の経営を維持・継続する
  • 供給・提供責任を果たし、顧客・市場からの信用を守る
  • 従業員の雇用を守る
  • 自社商品・サービスの提供で社会からの需要に応える

2.コアコンピタンスの明確化

コアコンピタンス(Core competence)とは、事業の核となる自社ならではの価値を提供する技術や特色です。企業活動で他社を圧倒する強みを分析し、優先順位をあらかじめ定めておき、最も優先的に行わなければならない重要な商品・サービスを選定します。万が一、従業員や設備に甚大な被害が生じたときに、事業継続のために優先して取り組むことを決めて、そこに設備と人員を集中させます。

3.被害状況の確認

緊急事態が発生した際の状況把握は、素早く正確に行わなければなりません。被災した場合の初期対応が遅れると、その後の復旧活動に遅れや無駄などが発生する可能性が大きくなります。
慌てずに状況を把握するための方法を検討し、定期的に訓練を行いましょう。

自社の被害確認

災害発生での従業員とその家族が負傷
家族の被災、家屋の倒壊、交通機関の障害により出社不能
モノ
社屋・工場・倉庫の破損・倒壊
一部設備・什器が破損
商品・備品の損傷
交通機関のマヒによる物流の停止
仕入れ先、販売先の被災
情報
PC、ネットワーク、サーバーなどの機器類破損
重要書類・データの破損
カネ
被災による事業停止での売上損失
運転資金(社員給与、賃貸料など各種支払い、建物・設備の復旧資金など)の欠乏

インフラの状況確認

ライフライン
停電の発生、水道・ガスの停止
道路
通行規制・渋滞の発生
交通機関
鉄道・航空の運航停止・遅延
情報通信
電話、インターネットなどの通信網の停止やつながりにくくなる

インフラの状況確認は年々重要度が増しています。震度の大きな地震が発生した場合、発生直後に電車は運転が停止しますし、台風や降雪による運休や遅延も発生します。情報の収集によって出勤や退社時間の変更などを素早く判断し、連絡・周知することを心掛けてください。これは、大規模災害時の対応にも直結することです。日ごろの備えがいざというときに役立つのです。

4.事前対策の検討と実施

事業継続のために優先することと影響の把握ができたら、事前にどのような対策が必要なのかを検討します。また、検討しっぱなしでは何の意味もありませんので、対策方法が決定次第「実施」しておきましょう。

事前対策

安否確認ルール・方法の整備
代替要員の確保
モノ
施設・設備のチェック(耐震・耐火など)
代替施設・設備の確保
代替部品の調達
情報
重要書類・データの保管方法
情報収集・発信手段の確保
カネ
緊急対応に必要な資金の把握と確保
現金・預金の準備、金融機関との連携

中堅・中小企業の場合、代替要員や設備の確保が困難な場合が多いのではないでしょうか。その場合は、要員や設備を自社内で確保するのではなく、企業連携による共助を検討しましょう。近隣企業と連携して復旧に当たることや同業者同士の連携を行うことで災害を乗り切った企業も多いのです。これは近隣だけでなく、被害を受けない遠隔地にある企業との連携も有効な手段となります。いずれにしても地域や業界の共通課題として、共に取り組む仲間を見つけることは円滑な事業継続の観点からも大切なこととなります。

5.緊急体制の整備

緊急時の体制を明確にします。統括責任者は代表取締役(社長)が就任します。さらに、代理責任者を代理責任者第1、代理責任者第2というように最低2名選出しましょう。部署を統括する責任者も、必ず代理責任者を選定してください。

緊急体制は、被災直後の初期対応を迅速に行い、初期対応の収束を見据えながら復旧に向けた判断と指示を行います。

統括責任者が意思決定し、指揮命令する全社対応の項目例

初期対応
従業員・お客様の安全な避難
従業員・お客様の安否確認
被災した従業員・お客様の対応
初期消火、がれき処理
地域への対応(救援活動、備蓄品の配布、避難場所の提供など)
復旧に向けた対応
商品・サービスの提供(休止)
取引先との連絡調整
行政・業界団体への対応
マスコミなどの広報対応
資金の確保

緊急対応マニュアルの運用

前述したとおり、緊急対応マニュアルは作成して終わりではありません。いざというときに適切な対応ができるように全社員が共有して訓練を行い、マニュアルや手順に不備がないかをチェックし修正や追加を行います。

  • 年1回以上、経営者は従業員に対して事業継続(BCP)の進捗や課題を説明
  • 従業員一人一人が緊急時の取り組みや役割分担を定期的に確認
  • 緊急対応マニュアルを理解するための社内研修を実施
  • 緊急対応マニュアルに沿った訓練を実施

緊急対応マニュアルがあっても、実際に運用してみなければいざというときに役に立ちません。また、安否確認の連絡先・方法などは個人のスマホなどに保存するなど、24時間いつでも・どこでも利用できる方法を検討して準備することも重要です。

従業員を守り、会社を守るためにも、緊急対応マニュアルを事業継続(BCP)の一環として早急に整備することは企業の最重要課題なのです。

参考資料

ご存じですか? 2020年までにBCPの策定を推進されています

2020年までにBCP策定率を大手はほぼ100%、中堅企業は50%が政府の目標となっています。
「BCPはウチには不要、関係ない」と思って先延ばしにしていると、企業価値の低下や取引先の信頼を失う可能性も?!

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著者紹介

マネジメントリーダーWEB編集部

企業を活性化する総合マネジメント情報サイト「マネジメントリーダーWEB(http://www.mng-ldr.com/)」を企画・運用。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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