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厳しさを増す中堅・中小企業の事業承継

事業承継の壁「2025年問題」を乗り越える方法とは?

日本の人口構造は、2025年に4人に1人が75歳以上となる超高齢社会を迎えます。それまでに「事業承継」を円滑に行い、築き上げた資産を存続させるためにはどうすればよいのでしょうか。

[2020年 3月25日公開]

高齢化社会と廃業が及ぼす社会的な影響

日本の人口構造は65歳以上の世代が増加し、15~64歳の労働人口が減少する高齢化社会の道を突き進んでいます(日本の将来推計人口参照)。
そして、2015年に団塊の世代が65歳を迎え、その前後から中堅・中小企業を中心にやむなく廃業する企業が増加し、以前より指摘されていた「事業承継問題」が現実のものとなってきました。そのため、国は相続税を大幅に軽減するなどの優遇策を取り、事業承継を積極的に支援しています。

しかし、団塊世代が75歳の後期高齢者となる2025年には、中小企業・小規模事業者の経営者のうち約245万人が70歳以上に達するという超高齢化社会となります。経済産業省の推計「事業継承・創業政策について」では、このうち約半数の127万人が後継者未定であり、廃業が急増する可能性があるとされています。
また、急激に技術革新が進むITインフラにおいては、データベースやシステムの面倒を見てきた担当者が高齢化などで退職し、後継者がいなくなることによるブラックボックス化が懸念されています。こうなるとその企業におけるデータ利用に支障が生じ、多くの失業者を生むとされています。そして、こうした問題を解決できなければ、2025年以降、毎年最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があるとさえ言われているのです。

日本の将来推計人口

出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」を元に作成。

参考

事業承継の方法とは

事業承継は、創業した経営者と従業員が長年多くの苦労を重ねながら培ってきた経験・ノウハウ・信用を次世代に引き継ぎ、企業活動を継続発展させるために行います。

経営権
経営者のノウハウや信用などを引き継ぎます。創業者一代で成長した企業の場合、経営者にあらゆる権限が集中していて、可視化が難しいため引き継ぎに数年単位の時間がかかることも珍しくありません。
資産
株式や事業資産を引き継ぎますが、相続税・贈与税の支払いも行う必要が出てきます。また、負債などがある場合は返済についても取り決める必要があります。経営者が個人保証で運転資金などの融資を受けている場合がありますので、税理士や金融機関と相談のうえ正負の資産をともに引き継ぎます。
知的財産
人材・技術をはじめ、著作権や特許といった知的財産だけでなく、販売力や開発力・ブランド力など企業として培った「武器」を引き継ぎます。具体的な形で表すことは困難で、従業員の信頼を得ることが第一のポイントとなります。引き継ぎがこじれて退職者が大量に発生すると、知的財産流出のリスクが高まります。

事業承継=後継者の決定

事業承継を阻む要因は「手間と時間がかかる」ことです。前述したように承継するノウハウなどは感覚的なものも多いため、うまく伝えられない場合も多々あるからです。

しかし、それ以前に後継者を探すことが大きな課題なのです。後継者の候補は、大別すると以下のようになります。

  • 親族
  • 従業員
  • それ以外の第三者

実際に後継者となるのは親族が多いといわれています。早くから(後継者が生まれたときから)後継者として指名することも珍しくなく、周囲も後継者として認知・理解がスムーズで承継しやすいといわれています。しかし、子供が家業を引き継がず親も承継を無理強いしないことも多く、後継者が決まらないケースも増えています。

事業承継で注目される「M&A」とは

後継者が見つからない場合は「M&A」を検討してみましょう。M&AはMergers(合併)and Acquisitions(買収)、つまり企業が合併したり買収されたりすることの総称です。そのままの体裁で企業の経営権を引き継ぐ事業承継もM&Aの一部となります。

M&Aのメリットは以下のようになります。

A社がB社を買収したケース

相互補完的に、双方の企業がメリットを享受できる可能性があります。このようなWin-Winの関係を「マッチング」といいます。

マッチングが成立する主な条件

  • 互いの企業が補完関係にあるなど、一緒になるメリットが多くある
  • 企業の経営計画に沿った展開が可能となる
  • お互いの企業文化が似ている
  • 双方で信頼関係を結ぶための理解・努力ができる

経営層はお互いのリスクを洗い出して解決することを徹底します。自社に不利なことを隠蔽(いんぺい)し、調査段階でそれが露呈するようなことがあるとM&Aを推進するうえで大きな障害となる可能性があります。
従業員も含め、信頼=安心できる関係を短期間に構築することがポイントです。

経営戦略として、他社を積極的に買収して足りない部分を補完し成長するのか、他社にノウハウを提供することで発展的な売却、もしくは合併、企業解体、雇用維持を図るのかを早いうちから決めておくと、事業承継だけでなく、天災や事故など、万が一の危機への備えにもつながります。

事業継承に関するコラム

中小・中堅企業の次世代への経営承継 ―その1 同族経営は3代で終わる―

会社を承継するに当たり、一番大切なことは何でしょうか? 法律的に会社の株式をきちんと承継することでしょうか? それとも実務的に考えて、代表取締役社長やCEO(最高経営責任者)に就任して会社の意思決定の権限を持つことでしょうか?

未来に引き継ぐ意識

「事業承継」だけではなく、組織のリーダーとして求められるであろう「未来に引き継ぐ意識」に関して考えてみたいと思います。

著者紹介

マネジメントリーダーWEB編集部

企業を活性化する総合マネジメント情報サイト「マネジメントリーダーWEB(http://www.mng-ldr.com/)」を企画・運用。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。