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就業規則の見直しと改定について

新しいビジネス時代を見据えて、就業規則の点検と整備をしましょう

新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、生活と働き方のスタイルは大きく変化しました。この変化に対応するため、労務の基本となる就業規則の見直しと整備が急務となっています。

[2020年 8月26日公開]

就業規則の見直しと整備について

就業規則は労働基準法により、常時10名以上雇用する事業所では必ず作成し、労働基準監督署に届け出なければなりません。また従業員の同意と周知も求められていて、企業における労務の基本ルールとなっています。

会社が定める規定は定期的に見直しを図る必要があります。法律の改定はもとより、社会的な変化や企業を取り巻く環境の変化などに応じ、常に最新の内容にしておくことが安定した企業運営につながります。

一般的な社内規定の整備・管理の流れは以下のようになります。

社内規定は法改正や社会環境の変化、運用上の不具合などを踏まえて改定の必要性を検証します。
改定の方向性が固まったら、経営理念や経営方針に沿って企業内外の課題点を洗い出し、具体的に改定案を作成します。改定案の実効性については多角的にシミュレーションし、多くの意見を集めることが大切です。そして弁護士や公認会計士などの専門家の意見を聞き、確認を得る必要があります。特に労務規定に関する改定は、訴訟などのトラブルが発生する可能性があるので十分な注意が必要です。

改定案がまとまったら、取締役会の承認を得ます。また就業規則の改定に当たっては、従業員代表の意見書を添付して労働基準監督署に提出することが法律で義務付けられています。

社内規定の改定が発効され次第、従業員への周知を行います。特に就業規則については、従業員の順守義務が発生する規定となります。従って社内広報だけでなく、従業員に直接説明するなど徹底した周知を行ってください。

社内規定の見直しは、半期から1年単位で行います。技術革新や業務内容、環境の変化で不要となった規定や、現状に合わない規定をそのまま放置しておくとルールの無視や不信感の醸成につながるので注意が必要です。

テレワークと就業規定の改定

テレワークなど会社から離れた場所で仕事をすることで、労働環境や勤務時間、手当、勤務評価などが変わる場合は就業規則の改定が必要になります。
一般的に、テレワーク勤務を導入する場合は以下の規定を定める必要があります。

  • テレワーク勤務を命じる規定
  • テレワーク勤務のための労働時間を設定する場合
  • 通信費などの費用負担に関する規定

またテレワーク勤務でも労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法などの労働基準関連法令は適用されます。

テレワーク勤務を導入する際に就業規則を変更する場合、テレワーク勤務の関係事項を既存の就業規則に追記する形で規定する方法か、新しく「テレワーク勤務規定」を作成する方法の二通りがあります。どちらにするかは会社の事情にもよりますが、分かりやすさの観点からテレワークに関係する規定を集約し新設する方をおすすめします。

テレワーク導入時の就業規定を作成する

テレワークはICTを活用した、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方です。就労形態は、自宅で働く在宅勤務のほか、複数の企業で共同の設備を利用するサテライトオフィス勤務、カフェなど自宅や会社以外の場所で仕事をするモバイル勤務があります。

テレワーク対象者

テレワーク勤務の対象者を規定します。

  1. 在宅勤務を希望して許可を得た者(自宅の通信環境などが整っている場合や業務内容・勤務年数などの条件を満たした者)
  2. 会社が指定する者(ローテーション、法定伝染病対応、災害対応などの理由による場合)
  3. 育児・介護、傷病などに限定した勤務(対象者の目的が限定された場合)

ウイルス感染対策や大規模災害の場合は全社員を会社命令で在宅勤務の対象者にするなど、対象指定のタイミングや連絡方法も定めておく必要があります。また地震や台風など突発的に発生する自然災害の場合は公共交通機関に〇〇分以上遅れが出た時点で自宅勤務にするなど、会社からの連絡指示を待たずに自動的にテレワークが適用されるよう規定します。このように規定しておけば従業員が判断を迷わないため、安全確保の視点からも有効とされています。

テレワーク勤務時の労働時間

1.通常の労働勤務制

テレワークの労働時間も、通常の勤務時間が適用されます。通常の勤務時間とは、1日8時間×5日=40時間/週の法定労働時間のことです。
例えば通常勤務を9時始業~18時終業(12時~13時まで休憩)と定めている場合は、在宅勤務時も同様の時間で勤務し、休憩や残業、休日の扱いも同じになります。

2.フレックスタイム制

フレックスタイム制は1カ月以内の一定期間(清算期間)内の総労働時間を、1週間当たりの平均労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)以下となるように定めておき、従業員がその範囲内で各日の始業および終業時刻を決めて効率よく働く制度です。つまり、従業員一人一人が始業および終業時刻を選べるフレキシブルな労働時間制です。

フレックスタイム制を導入する場合には、就業規則などに始業および終業時刻を各従業員の決定に委ねる旨を定めるとともに、以下の事項を労使協定で定めなければなりません。(労働基準法 第32条の3)

  1. 対象となる従業員の範囲
  2. 清算期間(1カ月以内)
  3. 清算期間における総労働時間(清算期間を平均して1週間当たりの労働時間が、週の法定労働時間の範囲内)
  4. 標準となる1日の労働時間
  5. コアタイムを設ける場合は、その開始および終了時刻
  6. フレキシブルタイムを設ける場合は、その開始および終了時刻

フレックスタイム制は、テレワークだけでなく通勤混雑を避けるための時差通勤でも利用されています。この場合、テレワーク就業規則のみにフレックスタイム制を定めるのではなく、就業規則本文に定めることで出勤者とテレワーク勤務者双方に適用可能となります。

3.事業場外みなし労働時間制

事業場外みなし労働時間制では、従業員が事業場外で業務に従事し、労働時間の算定が困難な場合に所定労働時間を労働したものとみなします。もしくは、当該業務を遂行するために通常所定労働時間を超える労働が必要な場合は、その業務に通常必要とされる時間(労使協定が締結されている場合は当該協定で定めた時間)を労働したものとみなします。例えば会社の所定労働時間が8時間と定められている場合は、実際に労働した時間ではなく8時間 労働したものとみなすことになります。

事業場外みなし労働時間制については、モバイル勤務に適用可能なケースと在宅勤務に適用可能なケースがあります。

モバイル勤務で適用する場合

  1. 事業場外で業務に従事していること
  2. 使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定ができないこと

在宅勤務で適用する場合

  1. 当該業務が、起居寝食など私生活を営む自宅で行われること
  2. 当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能(注1)な状態におかれていないこと
  3. 当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと
  • (注1)常時通信可能な状態とは使用者が労働者に対して、情報通信機器を用いて電子メールや電子掲示板などで随時具体的指示を行うことが可能であり、かつ使用者から具体的指示があった場合に労働者がそれに即応しなければならない状態のことです。つまりPCの前を離れられない待機状態を意味します。

事業場外みなし労働時間制を導入する際に、就業規則に事業場外みなし労働時間制に関する労働時間の規定がない場合には、就業規則を変更し所轄労働基準監督署に届け出する必要があります。
また労使協定で定めた「みなし労働時間」が法定労働時間を超える場合も、原則として「事業場外労働に関する協定届」を所轄労働基準監督署に届け出する必要があります。(労働基準法第38条の2)

また、労働したとみなされる時間が法定労働時間を超える場合には、原則として36協定も所轄労働基準監督署へ届け出る必要があり、これに対する割増賃金の支払いも必要となります。
さらに、みなし労働時間制であっても深夜または休日に労働した場合は、深夜労働または休日労働に係る割増賃金の支払いが必要です。

4.裁量労働制

裁量労働制はみなし労働時間制の一つです。弁護士や公認会計士、プログラマーなど法令で指定された専門技術職19業種(注2)を対象とした「専門業務型裁量労働制」と事業計画や営業計画などの企画、立案、調査、分析を行っている従業員を対象とした「企画業務型裁量労働制」の二種類があります。いずれも、業務遂行の手段や方法、時間配分の決定などを使用者が具体的に指示することが困難であり、従業員の裁量に委ねる必要がある業務に認められる労働時間制度です。

  • (注2)19種の専門業務は、以下をご参照ください。

テレワークの出退勤管理

従業員の勤怠状況を管理するため、就業規則作成時にあらかじめ始業および終業時刻の報告・記録方法を決めておきます。

1.電子メール

テレワーク実施企業で最も多く利用されています。使い慣れている、業務の報告を同時に行いやすい、担当部署も一括で記録を共有できるなどの特長があります。

2.電話

電子メールの次に利用されています。使い慣れている、時間がかからない、会話によるコミュニケーションが取りやすいなどの特長があります。
ビデオ会議用のWeb会議システムやテレビ電話を利用することで、出退勤の報告だけでなく表情や雰囲気で従業員の体調変化などを知る手掛かりとなることもあります。

3.勤怠管理ツール

勤怠管理ツールは、フレックスタイムやテレワークなどによる複雑な勤務時間を簡易に把握でき、残業時間や休日出勤の管理も適正に行うことができます。
従業員は勤務開始・終了時刻をその都度メールや電話で連絡する必要がありません。管理者も簡単・スピーディーに勤務状況の把握やシフト管理が行えます。また給与計算などで必要な勤務(残業)時間の計算も手動に比べ大幅に省力化できます。
勤怠管理ツールはさまざまな機能を備えたものが各種ありますので、自社の勤怠管理に適した使い勝手の良いツールを選定しましょう。

テレワーク勤務時の給与、費用負担、情報通信機器の貸与

給与の設定

基本給
テレワーク勤務だからといって基本給を減額することはできません。(不利益変更となります)なおテレワーク勤務によって労働時間が短くなる場合に、労働時間に相応した基本給にすることは可能です。
諸手当
テレワーク勤務だからといって諸手当を減額することはできません。(不利益変更となります)なおテレワーク勤務による勤務日数の変動や労働時間が短くなる場合には、その手当の性質に相応した処遇とすることはできます。
通勤手当
終日在宅勤務を行う日は会社に通勤しないので、会社への出勤日数は少なくなります。公共交通機関の通勤定期券相当額と実際に通勤した日数分の実費を比較して、低額の方を支給するケースもあります。

費用の負担

在宅勤務は自宅での作業となるため、個人負担となる水道光熱費や通信費、電話料金(個人契約の電話を利用する場合)をどのように負担するかあらかじめ定める必要があります。
私用と業務用を区別することが困難なため、一定額をテレワーク勤務手当として支給し、水道光熱費・通信費・電話料金などの個人負担分を補うケースが多いようです。

定額手当で費用負担を補う場合、当該手当は割増賃金の算定基礎に算入しなければなりません。従って割増賃金の算定基礎に関する規定もあわせて変更する必要があります。

情報通信機器の貸与

会社が貸与するパソコンを利用する場合、会社が認めていないソフトウェアなどを勝手にインストールすることはセキュリティ上の問題により、一般的に禁止されています。
またPC内に業務データを蓄積せずデータセンターのサーバーを利用するなどして、移動時にPCを紛失してしまった際などにデータが流出しないようにします。

個人所有のパソコンの利用を認める場合は、家族が共用する可能性もあり、業務上の秘密事項などの情報漏えいやウイルスなどインターネットを経由した攻撃を防御する対策が十分でないことも想定されます。そのため個人所有のパソコンを利用する際のセキュリティガイドラインを設けます。ガイドラインに沿った運用を行い、セキュリティの確保や業務用データの秘匿性などを高めてください。

就業規則の改定まとめ

テレワークなど新しい働き方のスタイルに基づいた就業規則の改定は、企業の在り方や方向性を大きく変える意味を持っています。経営者の意思を明確にし、従業員が納得する形で推進することが肝要です。新しい時代に適合した、業務効率が高く働きやすい環境の創出を目指しましょう。

参考

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著者紹介

マネジメントリーダーWEB編集部

企業を活性化する総合マネジメント情報サイト「マネジメントリーダーWEB(http://www.mng-ldr.com/)」を企画・運用。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。