Clip #346 マクルーハンは知っていた 後編

2018年10月12日公開分のアップルクリップの番組サマリーをお届けします。

番組サマリー

今週のAppleCLIPも前回に引き続き、ゲストにインターネットの生き字引「ホールアース桂」こと服部桂(はっとりかつら)さんをお迎えし、【マクルーハンは知っていた】と題してお話を伺ってまいります。

スティーブ・ジョブズがあのパロアルト研究所を視察し、天才アラン・ケイとパロアルト研究所の天才たちが生み出した画期的なグラフィカルユーザーインターフェイス(Graphical User Interface=GUI)を持つパーソナルコンピューターAlto(アルト)に出会うのです。その運命的な出会いから、マウスで画面のボタンやメニューを選んで簡単に操作できるMacintosh(マッキントッシュ)が生まれたわけです。iPhoneやiPad、Webブラウザー、各種アプリなどの操作もマウスが指に置き換わっただけで、基本的にはグラフィカルユーザーインターフェイスがメインインターフェイスですよね。

そのアラン・ケイが、巨大な計算機であったコンピューターを発展させてパーソナルコンピューターという概念を打ち立てた背景に、マクルーハンがあったといわれているのです。当時、アラン・ケイは仕事を全て止めてマクルーハンの著書を熟読したことで、ダイナブック構想を打ち立てて未来のコンピューターを創造したといわれています。アラン・ケイが考えたダイナブックとは、本をダイナミックに進化させた個人のためのコンピューターというわけです。アラン・ケイにはiPadの姿が見えていたのかもしれませんね。

そしてマクルーハンは、スティーブ・ジョブズにも大きなインパクトを与えた天才の一人ではないかと考えられます。少なくともマクルーハンに強い影響を受けて出版された「ホール・アース・カタログ」を愛したスティーブ・ジョブズのDNAには、マクルーハンの時代を読み取る目が備わったのではないかと容易に想像できます。

マクルーハンは、イギリス ケンブリッジ大学で学んだ後にアメリカ セントルイス大学で中世文学を教えた方なのですが、ある時アメリカの若者たちの前衛的なポップカルチャーの出現に戸惑い、自分が学んだグーテンベルクの印刷革命により文化が一変したり、ルターの宗教革命などの引き金になったりしたことから着想して、文明批評家として『グーテンベルクの銀河系――活字人間の形成(The Gutenberg Galaxy: the Making of Typographic Man)』という難解な本を出版します。
その後、『メディア論――人間の拡張の諸相(Understanding Media: the Extensions of Man)』などの著書を出版するのですが、まるでPOPスターのようにアメリカのテレビ番組で華々しく迎えられ、時代の寵児として注目を集めカウンター・カルチャーの中で教祖としてあがめられたのです。

マクルーハンがその難解なメッセージの中で語ろうとしていたことは、テレビ時代の盛り上がりをひもとく「鍵」でした。しかし、実はそれは俯瞰(ふかん)的なメディア論であり、現在のインターネット社会やいずれ来るAIの世界にも通じる「鍵」でもあったのです。
AppleCLIPを通じて、そんなマクルーハンの時代を読み取り見通すノウハウを感じていただければと思います。

そしてマクルーハンを通じて次の時代を読み取ろうとする本が、服部桂さんの書かれた『マクルーハンはメッセージ メディアとテクノロジーの未来はどこへ向かうのか?』です。
リスナーの皆さんにもマクルーハンを読んで挫折した方は多いのではないかと思いますが、この本はなるべく多くの方々にマクルーハンを理解していただくことを趣旨に書かれています。Amazonなどでも購入できますので、ぜひ読んでみてください。

  • *収録を終えて SatoRichman

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次回予告

Clip #347 GarageBand事始め 02

公開予定日:2018年10月19日

GUEST PROFILE

服部 桂(はっとり かつら)

著作家・翻訳家

1951年生まれ。1978年に早稲田大学理工学部で修士課程を修了。同年、朝日新聞社に入社。1984年から米AT&Tとのジョイントベンチャーに出向。1987年から1989年までは、MITメディアラボ研究員として米メディアの調査に当たる。1989年科学部記者、1991年『ASAHIパソコン』、1995年『DOORS』編集委員、1998年『ぱそ』編集長を務め、その後は科学医療部記者やデジタルメディア本部のプロデューサーを経て、2010年より朝日新聞社ジャーナリスト学校シニア研究員に。著書『人工現実感の世界』『人工生命の世界』『メディアの予言者―マクルーハン再発見』『「テクニウム」を超えて――ケヴィン・ケリーの語るカウンターカルチャーから人工知能の未来まで』など。訳書『チューリング 情報時代のパイオニア』『ヴィクトリア朝時代のインターネット』『謎のチェス指し人形「ターク」』など。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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