東京都立石神井特別支援学校 海老沢 穣

2017年4月21日公開分のTeacher's CLIPの番組サマリーをお届けします。

番組サマリー

特別支援教育におけるiPadの活用

特別支援教育では、障がいに基づく困難の改善・克服に向けてテクノロジーを活用する取り組みが早くから進められています。多様な子どもたちの実態に合わせ、iPadなどを活用した日常生活、学習、コミュニケーションへの支援が行われ、大きな効果を上げてきています。そこでは「障がいがあるから○○することが難しい」と捉えるのではなく、「iPadなどテクノロジーの活用を工夫すると○○ができる」という発想がとても大切であることが分かります。こうした取り組みが進められることで、まだまだいろいろな可能性があるのではないかと考えています。

子どもたちの創造性・アイデア・表現の力を引き出すアプローチ

東京都立石神井特別支援学校は東京都練馬区にある、知的障がいのある子どもたちが通う小学部・中学部の特別支援学校です。東京都の特別支援学校は、2014年にiPadが本格的に配備されました。知的障がいのある子どもたちは、言葉の理解に時間がかかったり記憶することが苦手だったりする傾向がありますが、文字・イラスト・シンボルなどの視覚的な情報があると、理解がしやすくなります。授業では、iPadのKeynoteなどを活用し、視覚支援を行いながら進めることで、内容への見通しや理解、イメージが広がり、学習内容への意欲も高まっている様子を見ることができます。

iPadを活用した物語作りの授業(東京都立石神井特別支援学校)

障がいのある子どもたちへのiPadの活用は、日常生活への支援、認知や言語などの学習支援、コミュニケーションへの支援、の三つのアプローチが代表的ですが、本校ではそれに加え、子どもたちの創造性・アイデア・表現の力を引き出すためのアプローチを試みています。例えば、レゴとロイロノートを活用したオリジナルの物語作りに取り組んでみると、子どもたちのユニークなアイデアや発想がたくさん生まれてきました。一見独特のコミュニケーションスタイルをとる自閉症の子どもたちが、物語の中ではとても豊かな世界を展開していて、子どもたちの内面の世界を理解する手がかりにもなりました。

また別の実践では、iPadで描いた絵を3Dプリンターで出力し、オリジナルクッキーの型作りを行いました。作った型で実際にクッキーを焼き、お母さんたちを招いてパーティーを行いました。自分たちのアイデアをリアルな形にでき、クッキーを作って食べることもできたことで、子どもたちはとても意欲的になり、また自分たちに自信を持つこともできました。
こうしたiPadを活用した三つの授業実践を日本教育情報化振興会主催「ICT夢コンテスト2016」に応募したところ、日本教育情報化振興会特別賞および奨励賞を受賞しました。これは私たちにとっても、大きな励みとなりました。

ワクワクできる特別支援教育に向けて

iPadをさまざまな形で活用してみると、子どもたちも私たち教員もワクワクするような授業が実現できるようになってきました。ユニークな発想や視点で制作した映像作品などを校外に発信することで、実際子どもたちもアイデア賞などの賞を受けることができています。また、アーティストの方とコラボレーションする授業の取り組みも大切にしていますが、子どもたちのアイデアや表現が魅力的でとてもインスピレーションを感じたとおっしゃってくださる方が多いです。こうしたアーティストやNPO、企業など外部の機関とも連携しながら、今後も子どもたちの新しい可能性を引き出せるような実践を進めていきたいと考えています。

番組視聴はこちらから

GUEST PROFILE

海老沢 穣(えびさわ ゆたか)

東京都立石神井特別支援学校

知的障がいのある子どもたちが通う特別支援学校で、美術・国語・数学・生活単元学習等を担当。iPadを積極的に活用し、子どもたちの創造性・アイデア・表現の力を引き出すアプローチを試みている。視覚支援、映像メディア表現、物語の共同制作などさまざまな授業実践の取り組みがある。ICT夢コンテスト2016「日本教育情報化振興会奨励賞」受賞。Apple Distinguished Educator。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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