茨城県立勝田特別支援学校 藤田 武士

2018年8月17日公開分のTeacher's CLIPの番組サマリーをお届けします。

番組サマリー

特別支援学校で着々と進むICT環境の整備

茨城県立勝田特別支援学校は、5月にはネモフィラが咲き誇り、8月には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL(ロック・イン・ジャパン・フェスティバル)」が開催される国営ひたち海浜公園で有名なひたちなか市にあります。小学部から高等部まで、知的障がいのある児童・生徒215名が通う特別支援学校です。校内のICT環境は、天吊型のプロジェクターとスクリーンが全教室に設置されており、各教室には教育用のノートパソコンも1台ずつ配備されています。また、iPadは全校で15台が配備されていて、無線LANは校内全てをカバーするまでには至っていないものの、今現在、整備を進めている状況です。

「張り子」の制作に物語を組み合わせて創造性を引き出す

平成29年度に担任した中学部3年生の美術の授業で、張り子を制作する実践を行いました。単元としては特別支援学校でよく取り扱われる題材ですが、この時も「ジャングル」というテーマで、動物の張り子を制作しました。通常であれば、張り子の作品を作って「完成したね」と廊下などに展示し、みんなで鑑賞する。そこまでの流れが主流かと思いますが、今回はさらに一歩進んだ表現を目指し、完成した作品を使って物語を作ってみました。「作品に命を吹き込む」というとかっこいいですが、作品に込められた生徒たちのさらなる創造性を引き出そうと考えたのです。

1人1台のiPadと完成した張り子の作品を手に持って、グラウンドや築山に出かけてロケを行いました。すべり台や築山の階段、花が咲く花壇、落ち葉の上…それぞれの生徒が思い思いの場所で写真を撮っていました。そして、プレゼンテーションアプリ「ロイロノート」を使って、ペンツールで飾りや吹き出しを付け加えたり、マイクツールで音声を入れたりして、物語を組み立てていきました。最後に、それらの物語を生徒自身が説明を付け加えながらプレゼンテーションしていきました。

主体的で協働的な学びへ。教室では見られない生徒の一面も

落ち葉が舞い落ちる様子をiPadで撮影する生徒

この実践を行ったのは秋の終わりでした。ある生徒は、動物の前を落ち葉がひらひら舞い落ちている写真を撮ろうと頑張っていました。しかし、その日は風が強く、落ち葉が思いどおりにフレームインしてくれないため悪戦苦闘していたのです。その姿を少し遠くから「どうするのかな」と見守っていたのですが、ちょっと離れたところにいたクラスメートを呼んで、落ち葉を風上からひらひらさせてくれるよう頼んでいました。普段から頑張り屋さんで、一人でやり遂げてしまうことが多い生徒なのですが、自分が困ったときに誰かに頼むことができる姿が見られた瞬間でした。

また、別のある生徒は、幾つかの動物を集めて餌を食べている風景を写真に撮りたいというイメージを抱いていました。こちらも離れて見守っていたのですが、普段はクラスの中でもやや控えめなその生徒が、周りの友達一人一人に言葉をかけて動物を置いてくれるようお願いしていました。普段の教室の中ではなかなか見られない、意外な一面を見ることができました。

友達に声をかけて張り子の動物を置いてくれるよう頼む一面も

ICTはコミュニケーションの架け橋。教員はコーディネーターに

特別支援学校におけるICTの活用は、児童生徒一人一人の学力保証や学力の定着を図ったり、学習を進めるうえでのハードルを低くしたりするというように、個人にフォーカスしがちな傾向があります。一方で、コミュニケーションの幅を広げるための架け橋となる道具(ツール)という捉え方もあると私は考えています。主役はあくまでも児童生徒です。その児童生徒が生活するうえで、ICT機器などの道具はその苦手なところを補い、人と人との関わりのハードルを下げる。そして、生活の質を向上させ、生活の幅を広げるという面もあると思っています。

そして、我々教員はその道具としてのICT機器を、一人一人の児童生徒の「困り」の部分に対して、いかに寄り添わせていくかというコーディネーターとしての役割が求められると思います。最後に、私自身としては、実践を積み重ねていく実践者としての役割はもちろんのこと、そうした取り組みをより多くの人に広めていくエバンジェリストとしての役割も担うことができればと考えています。

番組視聴はこちらから

GUEST PROFILE

藤田 武士(ふじた たけし)

茨城県立勝田特別支援学校

勤務先では情報教育係長として、校内でICTの利活用の推進を行っている。平成27年度から3年間、「魔法のプロジェクト」に参加し、iPadを活用したさまざまな実践研究に取り組んできた。現在はD-Project(デジタル表現研究会)の特別支援グループでの活動にも参加。平成30年度からは、NHK「ストレッチマン・ゴールド」の番組委員として番組制作に携わっている。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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