中萬学院 木暮 誠一

2018年9月14日公開分のTeacher's CLIPの番組サマリーをお届けします。

番組サマリー

生徒個々の学習を支援するシステムを作りたい。BYODからiPad無償貸与へ

学習塾では、学校に比べて授業に使える時間に制限があり、いかに効率的に学習を進めていくかが課題になります。また、授業の時間だけでなく家庭学習の時間を工夫することも必要です。そこで、生徒個々の学習を支援するシステムを作りたいと考えました。当初、パソコンで使うシステムとして開発を進めていたのですが、iPadの発表を見て「これだ」と感じたのです。iPadはほかのタブレットと異なり種類も少ないため、画面デザインの開発が楽であることもポイントでした。iPadを選択したことによって、結果的に開発コストも低く抑えることができました。

導入初年度はご家庭でお持ちのスマホやタブレットなどを使ってもらう、いわゆるBYOD方式を採用していました。ただ、兄弟で1台の端末を兼用していたり、お父さんの端末だと生徒が使うのに気が引けたりと、こちらの期待どおりに使ってもらえないと感じることが少なくありませんでした。また、Wi-Fiや機能制限など、ご家庭の方針によって設定にバラつきがあり、混乱の元となっていました。この状況を踏まえて、翌年からはiPadを無償で貸し出すことに決めました。

ご家庭の理解を得るための工夫と試行錯誤のセットアップ

この計画を最初に保護者に向けて説明をしたときは、「勉強に使うものらしいがよく分からない」といった反応をはじめ、「家庭の方針としてiPadは持たせたくない」「ネットは危険な感じがする」「高価な機械を持たせることが心配」といった意見をたくさん頂きました。そこで、塾から提供するアプリ(機能)以外は全て停止する形を採りました。例えば、アプリの追加は生徒本人にはできないようにし、インターネットも許可をしてあるサイトしか閲覧できないよう制限しました。また、iPad自体は全て中萬学院の所有物で、基本的な故障や破損は保険で対応するようにしました。こうすることで、安心して使用してもらうことができ、故障時にも修理を待たずにその場で交換できるようになりました。

iPad導入当初は、これだけの台数を配布している事例がほとんどありませんでした。アドバイスしてくれる業者さんも見つからず、設定作業は試行錯誤の連続。最初にセットアップした2,000台は、ゴールデンウィーク返上で設定したにもかかわらず、わずか1週間で方針が変わってしまい、制限項目の変更をやり直すことになりました。こういった事態に迅速に対応するためにも、設定は自分たちでできるようになった方がいいと思います。実際の作業は業者さんにお願いするにしても、その方法を知っているからこそ、工夫したりスムーズな説明をしたりすることができるのです。

学校と違い、学習塾への入塾は4月に1回だけではありません。セットアップ作業も、生徒の入塾や退塾に合わせて一年中行います。今はDEP(Device Enrollment Program)やMDM(Mobile Device Management)を導入しているので、オンラインで設定変更ができますが、始めたころはいちいち自分たちの手で行わなければならず大変でした。例えば、Appleの包装は、信じられないくらいキッチリしていますので、開封する手間だけでも尋常ではありません。エンタープライズ向けに、「iPadお徳用20枚パック」みたいなものを作ってもらえるとありがたいですね。

家庭での隙間時間を使って英語力を向上させる二つのアプリ

オリジナルで開発したアプリは二つあります。一つ目は「MyET」といって、英語の発音を評価するアプリです。最初に考えていたのは、生徒たちの英語力のうち、発音を客観的に評価できないかということでした。昔のLL(視聴覚教育機器を備えた語学練習室)のように、テープに自分の声を録音して比較するのは簡単ではありません。また自分の発音が良くなっていることを実感するのが難しいと考えました。かといって、英語の先生を長時間拘束して、発音を聞いてもらうのも現実的ではありません。

そこで、音声認識の技術を応用することで発音の評価ができるのではないかと考えました。機械が相手ですから時間や場所の制約がありません。照れや遠慮もないので気分が乗っているときに気の済むまで相手をしてもらえます。そのうえ、機械ですから評価にブレがなく、納得感が大きいのです。

自社開発した英語発音アプリ「MyET」の発音テスト中の画面

二つ目は「English Express」といって、長文を読み聞かせてくれるアプリです。通常速度だけでなく1.4倍速再生などもできますが、このアプリの最大の特徴は、「スラッシュリーディング」モードです。英文を読み上げる際に、意味の塊で区切って読んでくれる機能です。昔は、「関係代名詞は後ろから訳して前に戻って…」と教えていましたが、スラッシュリーディングは英文を頭から理解していこうという方法です。意味の塊ごとに頭に入っていくので、英文の構成のままに理解できるようになります。

英語の長文読み聞かせアプリ「English Express」の確認テスト

こうした学習を、週に数回の塾での授業時間内だけでなく、家庭での隙間時間に毎日15分行うよう指導しています。その方が短時間ではあっても全体として効果が大きいのです。実際、こうした手法を取り入れたことで、生徒たちの英語に対する姿勢が良くなってきています。苦手、嫌いと感じにくくなっているのです。苦手意識がなくなり英語に興味が持てるようになると、発音だけでなく英語力そのものが向上していきます。中学3年生の9割以上が、このアプリに対して好意的に評価をしてくれています。

私は個人的にもiPadが好きなので、もっと活用していきたいと考えています。現在は、英語力向上の手段として使っているだけのiPadですが、本来のポテンシャルはこんなものではありません。今後はiPadを授業内でも活用することで、本来の力を発揮していけたらと思います。

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GUEST PROFILE

木暮 誠一(こぐれ せいいち)

中萬学院 運営企画推進室

1985年、中萬学院に算数講師として入社。現場で教室長などを経験した後、1991年、同社本部教務部へ異動。授業を実践すると共に教務の要として教材の開発も担当する。1997年、システム開発課に異動。全社ネットワークの構築、情報システムの導入、基幹系のオープンシステム化等を次々行い、現在のIT体制を作り上げる。地元では太鼓保存会の会長を務めている。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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