ドルトン東京学園 中等部・高等部 安居 長敏

2019年11月15日公開分のTeacher's CLIPの番組サマリーをお届けします。

番組サマリー

詰め込み型教育から子どもたちを解放する「ドルトンプラン」とは

ドルトンプランは、100年ほど前にアメリカで始まった教育方法です。教育家ヘレン・パーカストが、画一的な詰め込み型教育から子どもたちを解放したいという思いで作り上げました。「自由」「協働」という二つの理念と、それを実現するための三つの柱として「アサインメント」「ハウス」「ラボラトリー」があります。

教育の現場で「学びの中心は自分たち自身なんだ」ということを子どもたちに伝えていくため、ドルトン東京学園は日本で初めて中高一貫教育としてドルトンプランを取り入れました。そして2019年、実際にそういった学びを子どもたちに提供する場として開校に至ったのです。

大学並みのICT環境で学習履歴をクラウド上に蓄積

子どもたちは入学する際に、自分の好きなパソコンを買い「BYOD(Bring Your Own Device)」で学校で利用します。また校内のWi-Fi環境は大学並みで、学校に来ればすぐにWi-Fiネットワークにつなげられる環境が整っています。

アサインメントに従って課題を進める生徒たち

「アサインメント」を実現する仕組みとして、学びの設計図(指令書)を教員が作成し、全てクラウド上にデータとして保存します。これを子どもたちが自分のパソコンを開くことで「今日はこんな勉強するんだ」という授業の内容が見える。内容が可視化された状態で学習を進めていきます。

また、宿題や課題も子どもたちが自分で調べてクラウド上に返します。すると学習の履歴がデータとして蓄積されていきます。中高の6年間を通じてそれらが「eポートフォリオ」のように形成されていくわけです。そのため、パソコンやネットワーク環境がないと、ドルトン東京学園では学びが成立しなくなってしまいます。

ルールや注意で抑えるのではなく、自分自身で判断する力を

ドルトン東京学園のインターネットは、当初、最低限のフィルタリングをかけてはいたものの、YouTubeやゲームについては一切制限していませんでした。入学後しばらくすると、子どもたちがそれに気付き「学校に来たらゲームができる」と休み時間や授業中にもゲームをするようになりました。

教員間でも目に余るなと感じていたところ、保護者からも「うちの子が学校でゲームばかりやっている」と心配する声が上がりました。しかし、ドルトンプランでは、ルールを作って子どもを縛ることは基本的にNG。子どもたちに自分で判断させるために、我々教員がどう関わるべきかを話し合いました。

そこで考えたのが、子どもたちへのアンケートです。「今の皆さんの様子を見て、先生たちはよくないと感じていることがある」と伝え、全員に思い当たることを三つ書いてもらいました。すると、その三つの中の一つに「僕たちがゲームばっかりやっているので……」という回答が返ってきたのです。

「そうか、分かっているんだったらいいよね。先生たちもそう思っているから、いったんゲームはやめよう」と、一斉にフィルタリングをかけることにしました。問題の解決を図ると同時に、ルールはみんなで作っていくものだということを教える機会にもなりました。

また、「学校帰りの子どもたちがスマホの動画を見て、バスの中で騒いでいた」と、バスの営業所を通じて、学校に注意を促す連絡が入ったことがありました。学校からも生徒に注意すると伝えたうえで、実際に迷惑を被ったお客さんからも、直接子どもたちに言ってほしいとお願いをしました。

その場にいる大人が注意することで、「みんなそう感じるんだ。じゃあ、やめなくちゃ」という判断を子ども自身ができるようになります。学校だけでなく、社会全体として子どもたちを自立に導けるよう関わっていく。それがドルトンの教育方針の大きな指針となっています。

“普通”ではない、新たな価値観を生み出せる学校づくり

これまでドルトンプランが日本で根付かなかったのは、非常に手間がかかる教育方法だからです。ドルトンプランは、画一化された社会の価値観を一方的に押し付けたり、教科書の内容を一生懸命に覚えさせ、それをテストで測ったりといった効率重視の学びとは正反対のものといえます。

新しいドルトンプランで始まった学校といえど、学校がだんだん大きくなり歴史を積み重ねていくと「どこの大学に何人合格した」を掲げる“普通”の学校になってしまう恐れもあります。それにいかにブレーキをかけ、ドルトンプランの価値観に立ち返ることができるか。

子どもたちが自分で考え、自分で情報を集め、自分で判断して、自分で決める。その結果、行動して、自分で責任を取る。そういう子どもを育てるためには、学校のマインドこそが大切です。卒業時、ドルトンで6年間学んだ子たちが「こうなりました」と胸を張れる。そんな、新しい価値観を生み出す学校を作っていきたいと考えています。

自分で計画した学びを実践する時間と場所(ラボラトリー)

番組視聴はこちらから

GUEST PROFILE

安居 長敏(やすい ながとし)

ドルトン東京学園 中等部・高等部

滋賀県の私学で20年間教員を務めた後に転身。コミュニティFMを2局設立し、パソコンサポート事業を起業。その後、再び学校現場に戻り、滋賀学園中学校・高等学校/校長、沖縄アミークスインターナショナル小学校・中学校/校長を歴任。2019年4月から、ドルトン東京学園中等部・高等部/参事(副校長補佐)として「学習者中心」の教育を推進。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

バックナンバー

過去のバックナンバー一覧
Teacher's CLIP バックナンバー

ナビゲーションメニュー